『下着裏取引』(課題:背信)2016/5/18
人 物
冴木司(20)大学生
南あずさ(19)冴木のサークルの後輩
恒川正善(20)冴木のゼミ仲間
〇公園(夜)
公園内の茂みにしゃがみこんでいる冴木司(20)、公園に隣接するアパートのベランダを双眼鏡で眺めている。
アパートの最上階の角部屋のベランダには女性の下着がバスタオルに隠して干してある。
冴木、足元のコンビニ袋から缶コーヒーを1本取りだし、封を切る。
プシッという音。
〇公園(早朝)
空が白み始めている。
茂みにしゃがみこんでいる冴木、うつらうつらとしている。
冴木の足元には缶コーヒーの空き缶が何本も転がっている。
冴木、ハッとする。
アパートの最上階のベランダに黒い服装の人物が、洗濯物に手をかけている。
顔を左右にふって、自分の頬を叩く冴木。
両目に目薬をさす。
アパートのベランダを見ると、男の姿が消えている。
茂みから立ち上がる冴木。
黒い服の男が壁を伝って、1階のベランダまで下りてきている。
1階のベランダから地上に着地する男。
冴木の声「おい、待てよ」
背後から男の肩に手をおく冴木。
冴木「捕まえたぞ、下着ドロ」
冴木の手をふり払って、逃げようとする男。
冴木が体当たりして、道端でもつれ合う二人。その際に男が財布を落とす。男が財布に手を伸ばすが、冴木が財布をつかみとる。
もつれあった拍子に冴木は顔にスリ傷。
両腕で顔を隠し、冴木と向き合う男。
冴木、財布から大学の学生証を抜きだし、目を丸くする。
冴木「……お前、恒川か?」
男、顔を隠している腕をどける。
恒川正善(20)。
恒川「なあ、冴木。見逃してくれないか? オレたち、同じゼミの仲間だろ?」
冴木「わるいが、後輩にたのまれて張ってたんだ」
一歩、恒川に近づく冴木。
恒川「(手で制止して)待てよ、オレを通報したら教授の過去問、手に入らなくなるぞ? 単位ギリギリだったよな?」
冴木の表情がひきつる。
〇ハンバーガーショップ
2人がけのテーブル席で、プリントを広げて勉強している冴木。
プリントは何度もコピーされたような荒い印刷で、物理学演習2008年、2009年とか書かれている。
トレーを持って南あずさ(19)がやってくる。
あずさ「先輩、お待たせしました」
テーブルにトレーを置く。
あずさ「過去問、でもうテスト勉強ですか? 気が早いんじゃないですか?」
あずさは慣れた手つきで、紙のマットにポテトをぶちまける。
ポテトは山盛り。
あずさ「さあ、今日は私のおごりですから、ジャンジャン食べてください」
冴木「(鼻で笑って)ポテトだけで?」
あずさ「私のバイト代でできる精一杯のお礼の気持ちです」
冴木「……1週間も見張りさせといて?」
あずさ「しょーがないじゃですか。下着泥はアマゾンの荷物とかちがって、時間帯指定できないんですから」
テーブルのポテトをつまむあずさ。
あずさ「それにしれも、犯人が50代くらいの浮浪者ってのは怖いですね。それってニュースでよくある住所不定無職ってヤツですよね」
冴木「……まあ、そうかな」
あずさ「犯人が武器持ってなくてよかったですね。スリ傷で済んで」
あずさ、絆創膏の貼ってある頬に手でふれる。
冴木「ポテト食った手でさわんな」
あずさ「(目を細めて)犯人、まだ捕まってないんですよね……」
冴木を上目遣いで見るあずさ。
あずさ「これからも私のこと、守ってくれませんか?」
冴木「それって……。いや、やっぱいいわ」
あずさは深くため息。
あずさ「先輩、私に気が合ったから下着泥捕まえるなんて面倒なこと協力してくれたんですよね? それなら私になにか言うことないですか?」
たじたじの冴木。
冴木「これからも守りたいから、おれと付き合わないか?」
あずさ「嫌そうに言わないでください。わたしが言わせたみたいじゃないですか」
ポテトを1本つまんで差しだすあずさ。
照れたようにそれをくわえる冴木。
スマフォの着信音。
スマフォの画面を観る冴木。
あずさ「さっそく浮気ですかあ?」
チャットアプリの画面に、差出人『恒川』、『今夜飲まない?』のメッセージ。
〇焼き鳥屋(夜)
狭くて小汚い居酒屋。
テーブル席に座る冴木と恒川。
テーブルにはビールのジョッキと焼き鳥の皿。
冴木は不満そうな表情。
冴木「オレはもうお前と関わりたくない」
恒川「ツレないこと言うなよ。共犯関係だろ?」
冴木「(にらみ)人聞きの悪いこと言うな」
恒川「どうだ、お前も1枚、安くしとくぞ?」
冴木「まだ懲りてないのか」
恒川「これがいい稼ぎになるんだって。バイト代だけじゃキツくてなあ」
冴木「(立ち上がり)帰る」
恒川「ちょっと待てよ」
恒川の手をふりはらう冴木。
冴木「お前がどうしようと知ったこっちゃないが、オレに関わんな。あと、彼女のとこは二度と狙うな」
店をでる冴木。
あくどい笑みを浮かべる恒川。
〇道(夜)
冴木が歩いていると、スマフォが着信。
恒川からのチャットアプリのメッセージ。
恒川N「さっきは悪かった。文化論の過去問、送るから許して」
冴木「ったくしょーがねえやつだな」
添付されている画像をタッチして開く。
画像は、女性の下着が大量に写っている写真。
ギョッとしてスマフォの画面を周囲から見えないようにガードする冴木。
額に脂汗。
恒川から『今日の戦利品』というメッセージ。
スマフォをポケットに突っこむ。
道端の電柱を拳でたたく冴木。
〇大学・ゼミ室(夕)
教授と話しているゼミ生たち。
冴木、バッグを持って、
冴木「教授、お先に失礼します」
ゼミ室から冴木が出ようとするときに入れ違いで恒川が入ってくる。
すれちがう冴木と恒川の視線、
恒川はニヤけ顔、冴木は敵意のこもった視線でにらみつける。
〇同内・ゼミ室前通路(夕)
部屋から冴木がでてくると、通路にあずさが待っている。
はにかむあずさ、冴木、笑顔。
〇居酒屋・個室(夜)
掘りゴタツ席で飲んでいる冴木とあずさ。
ジョッキのビールをゴクゴク飲んでいるあずさ。
上機嫌に、大ぶりなジェスチャーで話すあずさ。
ちびちびと控えめに飲みながら相槌をうつ冴木。
あずさの前には空のジョッキがたくさん。
〇同内・レジ(夜)
レジで会計している冴木。
〇同内・個室(夜)
冴木が戻ってくる。
あずさがテーブルにつっぷして寝ている。
冴木「こんなとこで寝ると風邪ひくぞ」
冴木があずさの体をゆすっても、あずさは起きない。
冴木、ため息。
冴木「酒よわいならあんなペースで飲むなよなあ」
〇公園(夜)
あずさのマンションに隣接している公園。
あずさを背負って歩いている冴木。
冴木「(背中に向かって)おい、ついたぞ」
あずさの反応がない。
何気なくマンションのあずさの部屋を見上げる冴木。
ベランダに黒服の男。
冴木「えっ……」
黒い服の男がベランダを飛び降り、地上に着地する。
冴木と黒い服の男の目が合う。
黒い服の男、恒川。
冴木「おまえ……!」
恒川、口元だけで笑い、逃走。
その場に立ち尽くす冴木。
あずさの声「どうして追わないんですか!」
あずさ、冴木の肩をゆらす。
冴木「おまえ、起きて……」
あずさ「1人で歩けるので降ろしてください」
冴木「肩を貸そうか?」
あずさ「酔ってません。わたしお酒つよいんです。寝たフリに決まってるじゃないですか! 私のことより、下着ドロを追ってください!」
走りだす冴木。
〇公園・公衆トイレ前(夜)
背後を気にしつつ、走りから早歩きに徐々に切り替えていく恒川。
走る音が近づいてくる。
冴木が息を切らしてやってくる。
恒川、逃げようとするが、追ってくる姿を見てホッとする。
恒川「よかった。おまえひとりか」
冴木「どうしてまた狙った?」
恒川「仕方ねーだろ。この辺はうわさが広まって、みんな下着ドロ警戒するようになったんだよ。前みたいに油断しきってるのはお前の女くらいだよ」
冴木「約束をやぶるのか」
恒川「過去問いらねえのか? 留年と女、どっちをとるんだ?」
冴木「……行けよ」
立ち去ろうとする恒川。
あずさの声「おまわりさんこっちです!」
あずさが警官をつれてやってくる。
恒川が逆方向に逃げようとする。
あずさ「先輩! つかまえて!」
冴木「……ッ!」
佐伯、恒川を取り押さえる。
恒川「おい! はなせよ。ふざけんな!」
警官とあずさが追いついてくる。
警官に恒川を引き渡す。
あずさ、冴木の腕に抱きついてきて
あずさ「先輩、お手柄ですね」
警官「(恒川に)じゃあちょっと君、署まで」
恒川「待てよ! こいつも共犯だ!」
冴木を指さす恒川。
あずさ「見苦しい言い訳はやめてください。この人はわたしの彼氏です」
恒川「冴木司。同じ学部のゼミ仲間だ」
冴木「お、おい!」
恒川「今も本当はおれを逃がそうとしてた」
あずさの表情が凍りつく。
冴木「ちがう! 誤解だ!」
冴木があずさに一歩近づくと、一歩後退するあずさ。
恒川「こいつとおれのやりとり見るか?」
スマフォをさしだす恒川。
冴木「っ! ふざけんな!」
恒川に殴りかかる冴木。
恒川の手からスマフォが落ちて、画面が割れる。
冴木を取り押さえる警官。
/了
目標:
・背信とは、"信頼"を裏切ること
・信頼をかいて→背信をかく?
先生の評価は高かった作品なんですが、
ぼくはあんまり好きじゃないという。
ラノベっぽいし…。
2016/5/18引導
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