第7話 悪魔のお誘い

 花凛にメールアドレスを教えたのだが……

 というか無理やり聞かれたのだ。


 恐ろしい頻度でメールが届くことになった。

 まあ、電話で長時間話すよりは、マシだと思うのだが内容が痛々しいのだ。


 #わたしは今、圭のことを考えてカレーを食べてます。彼とカレーは、にているね


 #圭は、どんな鉛筆が好きかな、わたしは、もちろんHが好きかな、深い意味はないけど


 #電子レンジに圭と名前をつけました。圭は、いつでも温めてくれるね、ちんっ!


 #今日の晩御飯は、鮭のムニエルでしたよ。

 鮭は、圭という字が入ってて好きです。

 私は魚になりたいよ、だったら人魚がいいかも


 というような返答に困るものばかりだ。

 それともこれって普通なのだろうか?


 次の日に、返事がないと言われてもさらに困るので"よかったね"とか適当に返している。


 ブブーツ、またメールの着信音だ。

 ちなみに着信音は、ノーマルだ。

 俺は、またかと思いメールを開いた。


 #この前は、ごめんなさい。

 なんだか圭に悪いことをしました。

 実は、圭に相談したいことがあって

 迷惑かも知れないけどメールしました。

 週末に会いたいので時間を作って

 もらえると嬉しいです。


 由良三咲


 えっ、これってどうする。


 次の日、俺は花凛にメールのことを話した。


 バーーーーンッ、花凛は机を力のかぎり叩いた。

「圭は、悪く無いよ、私が話を付けるからそいつのメール教えて……」


 花凛は、その場でメールを打っていた。

 驚いたことにすぐにメールの返信があったようだ。

「どうだって?」

「私が一緒でもいいって返ってきたよ」

「花凛は、それでいいのか、俺は断る予定だったけど」

「いいよ、だって逃げたと思われたら嫌だからね」

 ちょっと意外だった、花凛は真っ先に却下するものだと思っていたから……


「行くんだったら今度の土曜日でいいかな、圭っ」

 土曜日だって……

 しょうがない、俺は、花凛に構わないと答えた。


 土曜日になり俺は、待ち合わせの場所の噴水の近くにいた。由良三咲と二人になることをなるべく避けたかったせいもありギリギリまで噴水には行かなかった。


「ごめん、待ったかなふたりとも」


「待ってないよ、今来た」

 花凛が、まるで気持ちを切り換えるような明るい声で言った。


 おそらく、ふたりともピリピリとした空気の中で俺を待っていたに違いない。


「圭っ、遅いよ、今日は、楽しみにしてたんだから」

 由良が、まず戦いの先陣を切った。


「由良っ、要件を早く言いなさい。そして話し終わったらすぐ帰りなさい。」


「はあっ?相談の部分がないんですけど、そこに時間をかけるためのデー、密会でしょう」


「あんた今、デートって言おうとしたわね、相談が口実なら今すぐ呪いをかけるわよ」

 まあ、デートでもなければ密会でもないが……

 しかし、相変わらず俺を無視して話が進んでいくな。


「そ、相談は、ちゃんとあるのよ、実は、最近ストーカー付きまとわれてて……」


 "川嶋だ!"

 俺と花凛は、最悪の事態を想定した。


「いえ、川嶋じゃ無いわ、この前カフェであった時にいたでしょう、あいつなんだけど」

 ミスターATMの事らしい。


 少し、興味が、湧いたのか花凛は、どこか店に入って話そうと言い出した。


「由良っ、その話もっと詳しく」


 いや、どうやらかなり興味が湧いたらしかった。

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