第4話 土下座スピリット

 昨日の件があったので今朝、学校へ行く俺の足取りは重かった。いや、花凛が俺の腰ににしがみついているからだろう。


「圭、本当にごめんっ」


「いいよ、それは本当に気にしなくて」


「圭は、優しいな、あたしが男なら掘れてるよ」

 BL発言やめてくれ、ほれてるの漢字違うだろう!


「とにかく今日は、川嶋に謝ろう、俺達の気持ちは、伝わるはずだよ」


「圭、あたしの土下座をみていてよ!」

 そんな活躍みたいな言い方をされても……


 だいいち、そんな状況なら間違いなく横で土下座してるよ、俺っ!


 教室に入るとすでに川嶋は、席に座っていた。俺達は、爆弾処理班のように慎重に近づいた。


「おはよう、川嶋、昨日は……」


「おいっ、お前達のおかげだ。特に花凛ちゃんのおかげだ」


「何があったか知らないが、今日は、特にキモいぞ川嶋、花凛ちゃんと気安く呼んだこと謝ろうか」お前は川嶋呼び捨てだけどな


 花凛は、変わり身が早い奴だった……

 お前、さっきの土下座スピリットは、どうした!


「川嶋、あの後、一体どうなったんだ」


「良かったな、川嶋」

 まだ川嶋、何にも説明してないから!


「ありがとう、花凛さま」

 お前もだ、川嶋!

 あと花凛さまは、やめろ別の意味で……


 花凛が、やらかした後、その子は、川嶋に謝ってきたそうだ。

 そしてお詫びの意味も兼ねて合コンをする約束をしてきたらしい。


「ことわる!」

 花凛が言った、まるですべてを見通すかのように……

 まあ、確かにこの流れってあるよね。


「待てよ、花凛っ、俺がメンツに入っているって決まってない……」


「いや、お前はレギュラーだ」

 マジですか、川嶋監督!


「ほーら、やっぱり、わたしの思った通りだ、圭は、出さないよ」


「まあ、そうだな、俺もこんな可愛い彼女がいて合コンなんて立場じゃ無いよな」

 川嶋が言った。なんでお前が言うんだよ!


「け、圭っ!大好きっ」

 花凛は、抱きついてきた。

 いや、今の川嶋だから……


 ぱーーーん!

 突然、乾いた炸裂音がした。


「お取り込み中、悪いけど、とっくに授業は、始まってるわよ」


 平野女教師だった。属性は、堅物だ。

 どうやら炸裂音は、名簿を叩きつけた音らしい。これは、相手が、悪い……


 俺達三人は、その後、教室の後ろに立たされたのだった。


 まるで父兄参観のように……


 結局、俺は、合コンを断った。

 強行しても花凛が黙っているとは思えなかったからだ。


 ここは、静かに週末を過ごすに限るのだ。

 最近、花凛に振り回されて疲れ気味だ、ちょうど良かったなと呑気に考えていた。


 しかし、女の子と付き合うのってこんなに疲れるものなのだろうか?それとも花凛が特別なのか?


 そんな事を考えていた俺に花凛が言った。


「週末に、デートしようよ、圭っ!」

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