第5話

 暗い一本道を獄卒に押されるように男は進む。

 その足取りは重い、先程の大王の言葉が頭から離れない。

 だが、そんな男の思いに関係なく出口が近づいてきた。

 男は覚悟を決めた。

 覚悟を決めて、出口に踏み出す。


 圧倒的な光が男を襲う。

 目を開けていられない程に。


 再び男が目を開けた時、そこには晴れ渡る青空と、一面に広がる

美しい花々があった。

 驚く男の視界に、その花々の中心で泣く一人の少女が映った。

 男は反射的に少女に向かって歩き出す。

 一歩、一歩。

 歩きながら男は思った、『ありえない』と。

 男は少女のすぐ傍で足を止めた。

 このまま少女に近づくと消えてしまいそうだったから。


 『居る訳がないのだ』、男はそう思った。


 その時、誰かに思いっきり背中を突き飛ばされた。

 後ろに居るのはここまで案内してくれた獄卒のみ。

 男は肩越しに後ろを見た。

 そこには獄卒は居なかった。ただ男の良く知る顔があった。

 ――悪戯っぽく微笑んだ。小さい頃よく見せてくれた将軍の顔、

将軍は微笑みながら消えた。


 男は涙が溢れた。そのまま前を見ると、そこには少女の顔があった。

 泣いていた少女はやはり女騎士だった。

 その顔には涙と様々な感情があった。

 男も同じ顔をしていただろう。

 二人はお互いの瞳を見つめ合う。


 お互い言いたい事はあった。

 お互い聞きたい事はあった。


 だが、お互いにそれは言葉にならなかった。

 ただ、涙だけが溢れて二人の頬を伝う。

 どちらともなく、二人は体を寄せる。

 数千の言葉の代わりとでも言うように。


 ――澄み渡る空と、花々の間で、二人は強く想った。


『もし、この罪が許されるならば』と……

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