07
翌日。
仁は朝から、休み時間の度に『カオル』とのメールを続けていた。
昨夜、素っ気ない返信を受けた後もせめてどこかで関わりを持てないかと再度メールを送ったものの、それからの返信も変わらず素っ気ないものばかり。
昼休みになっても、それは変わらなかった。
「うーん……いきなり勧誘したのが引かれたんかな……」
「だから、僕が頼んどくっつったじゃん」
頭をガシガシと乱暴に掻きながら呟いた独り言に思わぬ返事が届き、仁は振り返る。
空き教室であるその部屋の入口に、一人の男性を連れた麗が立っていた。制服から見るに、リンと同じ専攻クラスの生徒のようだ。
この郷桜高校では、いくつかのクラス分けがされている。
A組とB組は進学科。多くは大学受験を目指している。
C組はスポーツ科。プロになる者が多いわけではないが、運動能力に
D組は看護科。まずはここで三年間学習し、准看護師を目指す。
そして准看護師免許を持った人々が受験し入学する、看護専攻科。
看護科からは、専攻科に上がる者と就職する者に別れ、専攻科には外部から受験し入学する者も居るので、ひとクラスに居る生徒達の年齢層は様々だ。
明らかに高校上がりという年齢には見えないこの男性も、恐らくは外部から受験し入学した生徒なのだろう。
「初めまして、専攻科一年の
「三年A組の成宮仁です。休み時間にメールが来てるので、少なくとも学生だとは思うんス」
握手を交わし、パソコンに向かう瀬野に言う。
ひとつ頷いて、瀬野はすぐにパソコンに向かって何かを始めた。
「あとは任せときゃいんじゃない? 何年か事務系の仕事やっててパソコンは得意らしいから」
仁の隣まで歩み寄った麗が瀬野の背を見ながら言う。
「まじで?」と笑った仁も瀬野に目を向け直した。
「何で看護師になろうと思ったんだろ」
「さあ」
純粋な疑問に、麗は素っ気なく短い返事だけ返す。
実は人付き合いに関しては悪評が立ちやすい麗からと考えると、返事があるだけ、まだ仁は彼と仲が良いのが伺える。
「わざわざ中国から来たリンといい、ほんと専攻科って謎なんだし」
「俺は麗の交友関係も謎だけどな」
仁の目が少し遠くを見る。
重ねて言うが、麗は人付き合いに悪評が立ちやすい。それは誰に対しても基本的に変わることのない横柄とも言える態度が原因ではあるが、本人に改める気はどうも無さそうだ。
そんな麗が、どこで知り合ったのかと思うような瀬野を連れて来たことも仁としては突っ込んで聞きたかったが、どうせ答えてはくれないだろうと聞くのをやめる。
会話の無くなった教室でパソコンを操作する音だけが響く中、二人は結果が出るのを待った。
「ここの校内のLANを使っているようですね。一年B組からです」
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