第15話


どうもよく状況が飲み込めないと、グッドナイトはカードを手に取った。



顔写真はユキとメロウだが、名前とID、そして少しの見た目も違っている。

通常、出入管理カードは住民として登録されている人物一人につき一枚、各大地や島で発行される。偽造するにはとてつもない時間を要する程にデータが政府によって厳重に管理され、カード自体も構造が複雑なチップを埋め込まれていた。



ロシュ・リンドバーグ 24歳

ラグラ・シン 16歳



「ユキと俺のカードは、この西の大地へ戻った際に港ですぐ燃やした。カード自体に政府が監視するためのGPSが埋め込んであるからな」




メロウは、その通り。と頷いた。



「わたしも人物を捜索するとき、少し・・・・政府のコンピューターをお借りすることがあるのですが、ユキさんとミスターグッドナイトの信号は途絶えていました。出来ることなら他の地へ置いていきたかったのだと思いますが、それだと西の大地へ入れないですからね」



その言葉に、グッドナイトは溜め息を深く吐く。


「なんでもお見通しって訳か」


メロウは頷き、グッドナイトからカードを取ると一枚をユキへ手渡した。



「ユキさん、これは貴女のカードです」



カードを受け取ると、ユキはまじまじと見つめた。


「ラグラ・シン・・・・この写真のわたしは、髪の色が黒いのですね。目の色も違う」



その問いには、待ってましたとばかりにラビが食いつく。



「そう!それはアタシとマムに任せて!ちゃちゃっと変えてあげるから。少しは見た目を変えないと、アビーは目立つからね」



そう言うと、ラビはポケットから太いペンのようなものを取り出した。

側面に何やら小さな画面とボタンのついているそれをカチカチ操作すると、画面には『カラー:ブラック』と表示された。


「ちょっと失礼!」


ユキの顎先を右手でクイと上げ、髪にそのペンの先を当てる。


ピピッと音がしたと思うと、ユキの髪色は白銀から艶やかな黒色へと変わっていった。


「すごい・・・・」



驚いていると、今度はエイミーの左手がユキの顎をクイと自分の方へ向けた。


「お次はわたしね」



エイミーが胸元から取り出したのは、小さなケースだった。

ケースの蓋を片手でカチンと開けると、中には人の網膜を精巧に模したコンタクトレンズが入っている。


「大きく見開いてもらえる?」


エイミーの声に、ユキは恐る恐る目を大きく開いた。

ふふ、とエイミーが微笑む。


「すごく素敵な色。吸い込まれそうな深い蒼ね。こんなに素敵な瞳を隠しちゃうのはもったいないけれど・・・・」



そう言いつつ、優しく目にレンズを入れていく。


「オーケー。ちょっとパチパチしてみてくれる?」



言われた通り、何度か目を開閉すると違和感がすっと消えていった。


「何も着けてないみたいです」



黒髪に、茶色の瞳。

先ほどまでのユキとは別人のようだった。








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