第124話 解体作業はグロいか?

「いヨィショっと」


ザバーっと桶の水をイノシシに掛ける

置いてある豚毛のブラシで汚れを掻きだす

浮いてきた汚れをを柄杓の水で流しながら丹念に洗っていく


・・・


「あっ、マリさーん、イノシシ捕獲したんで解体場借りますねー」


牧場の端に到着した八尾は従業員のマリさんを見つけて声を掛けた


「あら八尾さん、あらあら凄いですね獲れたんですね。いまジャンさん呼んで参りますね。そこの道具は好きに使って下さいな」



解体場は牧場の端にある。

脇に汚水を流す溝があり、その先は小さな沼に成っていていた。ビオトープなのだろか?

小屋ではなく東屋と成っていて解体台や道具置き場が置いてあった。


・・・

と言う事で八尾はまだひたすら洗い場でイノシシを洗っているのである。


「まぁこんな感じでいいかぁ、さくっと裁くか」


と裁き用ナイフを取り出して台に置くと使い捨てのゴム手袋を装着した。


肛門の脇を摘まみ細身のナイフで周りを切っていく。周囲に切れ目が入ったらそのまま刃を沈めて骨に沿って括約筋を切っていく

そのまま引っ張って、直腸を少し出すとタイラップで締め上げる

腹に薄く切れ目を入れて腹膜に小さく穴を開ける

指を入れて腸を避けながら刃を上にしたナイフで上に割く

横隔膜まで行ったら下も付け根まで刃を下ろす


再び横隔膜から上には刃を沈めては少し手前に引く感じで肋骨の継ぎ目を切り進んで行く

真ん中を狙えばモーラでもいける


肋骨の一番上は少し硬いのだが力業で切りきった。


洗濯機ホース(気道)を首の所で切り下に引っ張って行く肺の裏側にある神経と血管を切り、横隔膜をグルッと切り離すと胃の裏側にある神経と血管も切る

多少ほかにも繋がっているが、そこからは力業でメリメリと剥がして最後に直腸を腹側から引っ張るとズルっと内蔵が全て取り出せた。


吊して置いて後で切り分けるとの事で、腹の中を水で流して東屋の中に逆さ向きに吊した

蚊帳の様な物が有ったので広げてハエ等が集らないようにした


次は腑分けだ


肝臓の裏から丁寧に胆嚢を剥がす。

ペリペリと剥がれる訳でも無いので、ナイフの先端で際を舐めるようにして剥がす

取れたら胆管を結んで吊して置く


肺の奥側から心臓を引きずり出して大動脈、大静脈を切って取り出す

切り込みを入れたら水を張った桶に入れて揉む


お次は肝臓、横隔膜が付いているので多少残しつつざっくり切りとり、こちらも切り込みを入れて水の中で揉む


何回か水を入れ替えて揉むと血が出なくなるので、最後に水を入れ替えて置いておく


東屋のような解体場を見回すと長い竹の串が何本も置いてある。

つまりは内蔵も処理すると言うことだ


膀胱を破かないように取り外す

マメと呼ばれる腎臓も切り離しておく

胃袋を割いて中身を捨てる


チマチマと膜を切って腸を一本化する

50センチ位に切って中身を絞り出す


「うーん、臭い」


小腸も独特の臭いが漂うが、大腸は○○臭い

コロコロとした中身を溝に流しながら絞り出す


全部切ったら竹の串を使って裏返していく

全部裏返したら塩をまぶして石の上で揉む

それ用と思える塩のツボと平たい石が置いて有ったのだ

胃袋から先に処理していく


揉んで揉んで、洗って揉んで

水に汚れが出なく成ったところで完了


ザルに入れて水を切る

ザルは竹を編んだもので平たい形をしており、幾つも置いて有ったので小腸、大腸、胃袋とそれぞれ分けて置く


散らばった肉片や固まりの血をまとめてゴミ箱にいれて、台や足元の汚れを竹箒で掃きながら流して作業完了だ


終わった後で肋骨を切って刃が痛んだモーラナイフを備え付けの砥石で研ぎ直しているとジャンさんが歩いて来るのが見えた。


「おーい八尾君、獲れたんだって?」


ジャンさんは汚れ仕事が終わった所でやって来た。

いつの間にか雨も上がったらしい


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