第106話 ハンター試験講習と実射テスト

「じゃ始めますねぇ。まず初めに

1.銃口は人に向けない。

2.的や獲物を狙うまでは安全鉄に指を入れない。

3.火縄を取り付けるのは、撃つ準備が終わってから。

これだけはいつ何時でも守ってください。のちの考査や来週の試験でこれをやると落ちますから気をつけてくださいね。

では手順をいいます。みなさん講習会で取扱いは習いましたね?射撃台に入る前に銃を手に取ったら先ず確認をしてください。

そして、射撃台に入ったら号令で構えます。この時、まだ弾は入れないで置いてください。次に号令で空撃ちをします。

そして、不発時の取り扱いを行って下さい。

順番に入れ替わってこれを一人一回行います。

続いて実射です。弾は必ず順番になってから、射台の後ろにある場所で込めてください。そして一発撃ったら順番に交代していってくださいね。

途中で私がチェックしていきますので、順番にお願いいたします。では空撃ちからですね。」


最初の5人が射台に入る。


「はいっ、申し訳有りませんが自分には確認の声が聞こえませんでしたので、もう一度やり直して頂けますか?」


誰も確認動作などして居なかったのだが、角が立たない配慮何だろうか?5人は面倒臭そうに射台から出て確認を初めた。


「いちいち面倒臭ぇえなぁ」


「安全第一ですからね。宜しくお願いしますよ」


「・・・ほい、銃よし」


「はい、ありがとうございます。今度はばっちりです。では射台に入って構えて下さい。」


「はーい、大体良いですね。では、撃って下さい。」


撃鉄の音が響いた。3人程機関が傷まないように火がついていない火縄を付けて居るようである。


「では、不発と言って10数えて下さい。」


「不発、1、2、3・・・10」


「これはご存知だと思いますが、遅発対策です。稀に引き金を引いてから暫くして弾が発射されることが有ります。不発の時は必ず銃口を安全な方に向けて10数えて下さい。

そして、この状態ですと、まだ火薬も弾も入ってますから、十分注意して取り扱って下さい

はい、結構です。本番で不発が出たときはこの様にして下さいね。では次の組どうぞ」


次の組がバラバラと射台に入っていく。


「銃身よし。・・・銃よし。」


ちゃんとチェックしている人が居ると思えば、全く気にもせず射台に入る人も居る。


「はい、3番射台の人と5番射台の人、入る前に点検しましたか?私には確認の声が聞こえませんでしたので、もう一度やり直してください。」


「うるせぇなぁ、さっき点検したんだしいいじゃねぇか」


「安全第一です。講習と試験の決まりですから、よろしくお願いしますね」


「仕方ねぇなぁっ、面倒臭ぇ。 ほれ、銃身よし・・・銃よし。」


「はい、では次、構えてください。」


「はい、では撃ってください。」


「はい、では不発、と言って10数えてください。」


「不発なんて普通出ねぇよなぁ、おい。 ほれ、不発 いーち、にー・・・・じゅう」


・・・

「はい、では全員終わりましたね? ではここで講習終了です。続きましてテストを行います。

ハンター試験での実射はこのテストに受かれば免除となります。

本試験と同じ要領ですので、テスト開始の合図からは私からアドバイスを出すことが出来ません。

よく先ほどの講習を思い出して合格するように頑張ってください。

では一組目の方テスト開始です。射台に入ってください。」


「銃身よし、・・・銃異常なし。玉薬装填・・弾装填・・・口薬装填・・・射撃準備よし」


脇で係員はしきりにメモを取っている。


「はい、では射撃準備が出来た方から前方の的を撃ってください。」


「火縄装着よし、火蓋開けます・・・」


シュバっ・・ドーン・・コーン


どうやら的は鉄板で出来ているようで、中ると大きな音を立てて傾いたかと思ったら自動的に戻って来た。


シュバっ・・ドーン・・・・・


外れると的からの音が返って来ない。


「外した方は再度装填して中るまで頑張ってください」


外した人は射台から出て再度確認から行っている。

30mの距離で50cm位の的なので、2~3発撃っているうちに全員中ったようだ。


「はい、では次の組の方」


と順番に射撃は進み、八尾達の番になった。


「はい、では次の組の方・・最後は3人ですね ではどうぞ」


「脱包ヨシっ、銃身ヨシっ 銃床ヨシっ 引き金ヨシっ 装填します。

・・・火薬ヨシっ・・・弾装填ヨシっ・・・口薬ヨシっ・・・射撃準備ヨシっ」


「はい、では撃ってください。」


カチン、シュバっ・・ドーン・・カィーン


「脱包ヨシっ」


カチン・・・・


べるでは引き金を引いたが、口薬に火花が燃え移らなかった。


「いち、にー、さん・・・・じゅう。不発デス。撃ちなおします。」


慌てずに対処するべるで、銃が重いのか少し銃身が震えている。


カチン、シュバっ・・ドーン・・コーン


・・・


「はいっ、皆さんお疲れ様でした。 本日の合否に付きましては、試験当日に掲示されますので

朝、試験を受けられる前に確認してください。

残念ながら落ちた方が何名かいらっしゃいます。

その方は試験当日に実射試験を受けて頂きますが、射台に入る前の点検と持ち運んでいる間に引き金を触らないよう十分注意して受けてください。

この後、射場は貸し切りとなってますので、練習されるかたはご自由にどうぞ。

では解散。」


・・・


「みんな帰っちゃったわねっ、どうする?撃っていくっ?」


「そうだなぁ、射場代勿体ないからちょっと撃っていくか?」


3人は50メートルの所に的紙を張りに行く。


べるでが使っているブローニングの自動銃にハーフライフルの銃身を取り付けた。

これには1.5倍から6倍にズーム出来るスコープが付けてある。


「ねぇ、べるで。これはまだゼロインしてないんだけど、銃身から覗いた真ん中位には合ってると思うんだよね。調整しながら撃ってみて」


べるではサボットと呼ばれる弾を装填した。

これは弾頭がプラスチックの型にはめ込まれ、銃身に刻まれたライフリングで回転が与えられながら発射されるので命中精度が良い。

その代わりに弾代は非常に良い値段で一発あたりラーメン一杯程度である。


ドォーン


「べるで、そのまま同じねらい目であと2発撃ってみて」


八尾はエースハンターに付けられているスコープで弾痕を確認する。

手のひら大で纏まっているが、中心点から右下に15cmほどズレている。

カバーを外してエレベーションとヴィンテージを調整する。


「これでどう?また3発撃って。」


本来、高性能のスコープなら1/4MOAなら4クリック動かせば100m先で1インチ分レティクルが動くのだが、ある程度安いものは

1/4MOAと明記されていても意外と正しく無かったりする。

数回試すと的の中心より数センチほど上に纏まる様になってきた。


「これなら谷越しの鹿も狙えマスね。」


べるでは上気した顔で八尾を見上げて言った。


「150m位までは行けるって言う人も居るからね、十分行けると思うよ。

ただライフルに比べると弾速が遅いから動いている鹿だと厳しいかも知れないよ。」


べるでが微調整を終えて満足したようなので、スコープのカバーを取り付けて更に練習を重ねた。

アンと八尾も50mの的を撃った。


アンが使っている410番の散弾銃はアイアンサイトである。

50m位離れると的は相当小さい。的紙には入っているものの纏めるのは結構厳しそうだ。

・・と思っている八尾も結構ばらけている。

構えを試行錯誤しながら撃ちつつ、たまにダットサイトを調整しながら撃つ。


的が見にくいな・・・


と気が付けば日はかなり傾いていた。


・・・


「お腹空いたわねぇっ」


「門まで意外と遠いよなぁ・・・」


「あら?門・・・閉まってまセンか?」


もう表には誰も居なく、門は閉ざされていた。


「呼べば開けてくれるって話だったわよねっ」


「おーい、戻りましたよー」


八尾がドンドンと扉を叩く・・・が反応が無い。


「門番の人・・帰っちゃったのデスか?」


「門番のおにーさーん、あーけーてーっ、ちょっとぉっ?誰も居ないのっ?」


そして日は暮れた・・・

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