第84話 土鳩と土鳩と土鳩に土鳩
八尾は思案を重ねてた。
ルイに如何言ったらよいものか・・・
「まぁ・・・当たって砕けろ・・・かな?」
「何処から話すおつもりデスか?」
「それなんだよなぁ・・・べるでが・・・気が付いたことってなんかある?」
「わ・私は特に・・・」
べるでにしては珍しく目を泳がせてとぼける・・・
「な・に・を・見たんだ? べ・る・で・」
「わ・私は特に・・・寝具のルミノール反応なんて見てないデスよ
ちゃんと洗って干してありましたデスし・・・」
あいつら・・・と八尾は左手でこめかみを押さえた。
「・・・それで、帰って早々新しい寝具を出すってアンと騒いでたのか・・・」
べるでとアンは帰って早々にシヤルスクで買った新しい寝具を出すって張り切っていた。
酔っぱらっていたにしてもテンションが高すぎる気がしていたのだ。
八尾は考えた・・・・
「まぁ・・・外堀から埋めるか・・・なぁ?」
「べるでさぁ、あの銃床にシールみたいなので名前貼り付けられないかな?」
「そうデスねぇ・・・それぞれの
「負環かぁ・・・それでいいかな、それって作ると何時頃でき・・」
「もう作ってありマス。今の散弾用ですが」
と取り出した物は、赤地にTakeru.Y、白地にAnne.Y、緑地にVerde.Y
の刺繍が施されていた。
「おぉっ、かっこいいねぇコレ、おーいアーン、今日はさ、エアライフルじゃなくて410で鳩を撃ってよ。
それで、昼過ぎ頃にルイんとこ行こう」
「オーケーっ、じゃ弾は9号使って良いのねっ」
アンは何故か朝風呂に入っていた。
バスタオルで頭を拭きながら囲炉裏端に上がって来た。
「あぁ、オネェサマ、滴が・・・」
と言って、べるではバスタオルを奪うとガシガシと拭いた。
「じゃぁ行ってくるね」
「いってらっしゃいマセ」
「いってらーぁぁぁあぁぁ ちょっとべるでっ、もうちょっと優しくぅぅぅ拭いてぇぇえぇぇ」
アンの悲鳴にも似た声を後にして、八尾は見回りに出かける。
昨日の鳩に釣られたのか、与作との待ち合わせにミラの姿があった。
「ヤオにぃちゃー おっはっよー」
「おはようございます。ヤオにぃーちゃ」
「おはようっ お、なんだ今日はミラ付きか」
「おらは、おまけじゃねぇだど」
「わはは、そうだそうだ、頑張れ助手っ」
八尾の照れ隠しのテンションは高い・・・
が、与作の助手と言われて顔を赤らめるミラであった。
そして、畑近くの森の中の足跡を探っていく
取れそうな足跡は数個、全て鹿だ。
熊の痕跡は幸いなことに無かった。
罠を掛けられそうな所を幾つか検討しているうちに畑仕事の時間となった。
「じゃぁ後でアンとミラの家に行くからな、ルイさんに宜しくね」
「判っただ、お茶の準備さしておくだで」
畑で二人と別れると、アンを探した。
すると、アンは畑の脇からのそのそと出てきた。
「タケルっ、散弾ダメだわっ、畑仕事の人が多すぎて危なくって撃てないわよっ」
見ると朝早くから畑で作業をしている人たちが、まばらではあるが居る。
鳩は畑の中なので飛び上がった所を撃つとなかなかチャンスが無い。
と言うか、確かに危なくて撃てない。
「仕方ない。エースハンターで行くか」
八尾はエースハンター(サイドレバ)とエースハンター(旧ノーマル)を取り出した。
両方とも弾は4.5ミリである。大きな違いはポンプのレバーが横か下かの違い。
撃つときの大きな違いは、旧だとノーマルトリガの為、ポンプ回数分だけトリガが重くなると言う事である。
だが、5回ポンプで狙う20-40メートル範囲であればさほど変わりは・・・少ない。
八尾はアンダーレバーのエースを5回ポンプした。
そして弾を込めると、30m程先の葉っぱを狙った。
ポシッッッッ
弾は葉っぱより左下に着弾した。
八尾はスコープの調節ネジを保護しているカバーを外し、チキチキチキっとネジを計算より2クリック回し
チキチキっと2クリック程戻した。
横だけでなく、縦方向も調節した。
これで当たるはずである。
ポシッッッッ
何回か調整を重ね、弾は狙ったところに穴をあけた。
準備万端である。
そして、アンと一緒にこそこそと畑の際から獲物を探していく。
昨日のアンの活躍もあって、鳩の警戒心は強い。
畦から近づくと遠い位置からでも気が付くのか飛んで逃げてしまう。
ゴンの家の庭から畑を覗くと生け垣越しに数羽ほど畑を穿る姿が見えた。
アンはさっと座射で射撃体勢に入り、弾を装填している。
八尾もその隣に伏せて弾を装填した。
「端から行くわよっ ごー、よん、さん、にー」
『いち』は発声しなかった。 手元がぶれるからである。
パシッッッッ
ポシッッッッ
畑の中で2羽の鳩が横たわった。
それを見て残りの鳩が何が起こったか判らず、ソワソワしだす。
1羽が我慢できず飛び立った、残りの数羽も釣られて飛び立って行く。
生け垣から二人が姿を現した時には、畑の中に居るのは横たわった鳩2羽のみであった。
「おぅ、ヤオどんじゃねぇだか。朝っぱらから何しとるだ?そじゃ、例のモン出来とるぞー」
と、一旦奥に入り、槍の穂先を出してきた。
「止め刺し用じゃ言うてたからの、横の刃は研ぎを甘くしちょるからな
あと余りで小刀さ作っといたで、なんかの役に立つじゃろう?」
ゴンは切っ先だけ鋭い全長30cm位の槍と、包丁の付け根部分を綺麗に加工した小刀を出した。
「ゴンさん、相変わらず凄いの作るねぇ、これは素晴らしいや。
あ、でもゴンさん、これ与作と一緒に来た時に直接渡してもらえませんか?」
ゴンは一瞬考えた後、
「そうじゃな・・・うん、その方がええじゃろ、わかった。
所でお前さん方は朝から何をしとるんじゃ?」
「駆除よ駆除っ。 ほらっ、ゴンさんっ。 畑の豆が育った結果よっ」
とアンは2羽の鳩をゴンに渡す。
「畑の豆ってアン、おめさ・・・おぉ、ほんに鱈腹喰ろうておるな。
豆は畑の肉って言葉があるが、鳩は畑の豆か、こりゃ良いわい ガハハハ・・・
旨そうな豆じゃな ガハハハハ」
ゴンは豪快に笑った。
「それじゃゴンさん、また後で」
「ゴンさんっ、朝から呑むんじゃないわよっ」
二人は手を振ってゴンの庭を後にし、駆除を続けた。
その後、畑を回り続けて昼までに十数羽の鳩を仕留めた。
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