第67話 書類手続

そして、試験の申し込みである。


書類を書き込んで提出し、しばらく待つ。

受付の用意が終わると、当日の混雑を避けるために身体的機能の確認テストだ。

先ずは視力の検査から、次は屈伸、最後に手を開いて終わりだった。

聴力は、受け答えが出来れば聞こえていると言うことで良いらしい。

試験内容の小冊子、ハンター読本を3冊貰い、料金を払って次に行く。


「よし、先は商工ギルドに行って届け出を出そう。」


北町の中央にある町役場から、大門の北側にあるギルド街まで歩く。

もちろん電車、バス、タクシーなど無い。


中に入るとロハスはさっさと用紙に書き込みをしていく。

そして受付に出して少し待つと


「タキュルさーん、タキュル・ヤオさーん」

受付の女性に呼ばれた。


「はい、こちらが鑑札と証書です。あとこちらが税金等の説明が書いてある小冊子です。」

さっと渡すと次の人を呼ぶ。

手際が良いというか、あっさりしているというか、微妙な感じで一式を受け取る。


「なんか随分とお手軽な手続きなんですね。もっと色々訊かれるかと思ってましたよ。」

と八尾がロハスに言う。


「ホントはもう少し時間が掛かるんだけどね。向こうにしてみれば、発行された鑑札で

税金と手数料が入れば良いだけの話だからねぇ・・・

あぁ、そうだ、べるでちゃん、君を会計にしたからね。あとで小冊子読んでおいて」

税金と手数料の計算である。ロハスも人をよく観ている。

普通一般的に時間が掛かるのは、公的書類になれない一般人が書類に書き込むからだったりする。

正式な住所表記が必要なのである。

ロハスは当然の事ながら熟知しているため、さっさと書類を書いてしまったのだ。


そしてハンターギルドへ向かう。

入り口には鹿のトロフィーが飾ってあるので、間違える要素が無い。


中に入ると・・・誰も居ない・・・あれ?建物間違えたのか?

「すみませーん」

大声で叫ぶと、中から若づ・・いや、妙齢なおば・・おねぇさんが出てきた。


「はい?なんでしょうか?」

怪訝そうな顔で問われる。


「次のハンター試験を受けるのですが、講習会の申し込みをお願いしたいのですが」


「あぁ、お客さんね ちょっとまってね 

お客さんよー」

急にころっと態度が変わる。まぁちょくちょく変な人が来るのであろう。


中から小太りのじい・・おじさんが出てきた。

「はいよ、講習会ね。じゃここに名前と住所書いて、

おぉ3人とも受けるの、感心だねぇ 

じゃ合わせて・・おーい幾らだっけ? あぁそうそう、はい。じゃ領収書

じゃこれ、講習会の教科書ね2冊づつで6冊ね

時間とかはメモに書いてあるからね。頑張ってね」


早々に追い出された感・・・・

効率が良いと言えば良い。

他に誰も居なかったが・・・

もちろん、ここ、異世界の話である。

八尾はデジャヴを覚えたが、疲れて居たのだろう。


お陰で3時を回った頃には手続きが終わってしまった。


夕方日が落ちた頃にロハスの店で落ち合うことにして、八尾たちは観光をすることにした。

ロハスからは、あまり南の奥に行くなと忠告が有った。


大門をくぐり抜けると南町である。

入るなり空気が違う事に驚く八尾。

雑多な感じが半端ない。

道には細かい出店が立ち並び、縁日のような賑わいである。


女性の買い物は長い・・・

最初の頃は、物珍しさもあって、二人といっしょに店を眺めていたのだったが、

土産、服、小物から食品にいたるまで、端から総なめで果敢にアタックするアンとべるで・・・

後半、八尾は只ひたすら、死にそうなゾンビ顔で後ろを付いていくだけであった。


日が暮れた。


「そう言えば、そろそろお腹がへったわねっ」


やっとアンが日が暮れたことに気がつく。買い物の魔力はアンの腹時計も狂わせる。

一行がロハスの店、『ら・えすぺらんさ』に到着したのは6時を回った頃だ。


店は間口が4間ほどある結構広い店だった。

ロバで運ばれてきた商品は既に店頭に並べられている。

店の広さと商品があっておらず、微妙に空いた空間が勿体なくもある。

中からぞろぞろと出てくると、アンが

「あら?今朝の受付の方?」

着飾って薄化粧しているので、八尾は気がつかなかった。


「やっぱり貴方達だったのね。父がお世話になりました。

私は長女のバレンティーナ ロドリゲスです。バレッタって呼んでちょうだい。

こちらが、弟のティノ。 よろしくね」


「ティノです。」

アンと顔を合わせて赤くなるティノ。

一目惚れであった。・・・米では無い。


「こちらこそっ、お世話になってます。

私はアンジェラ ヤオ。アンって呼んで

こっちが旦那のタケル。

それと第二夫人のべるで。 よろしくねっ」


「えぇ~、兄弟じゃ無くて? しかも第二夫人?

えぇぇ?じゃぁアンって、ひょっとして私と同い年ぐらいなのぉ?」


「? 私は15なんだけど?」

アン肉体年齢である。


「じゃぁ私と同い年なのね~」

てっきり年上とばかり思っていた・・・


「へぇ若いのにたいしたもんねー 私の若い頃みたいだわ。

あぁ、ロハスがお世話になりました 私が妻のカロリーナよ キャロって呼んでちょうだい」

ロハスの奥さんが割り込む。

二人の子持とは思えない腰のくびれと豊満だが、程よくシェイプアップされた肉体。

ロハスをとらえた美貌は健在である。


てっきりバレッタはべるでと同じ歳か、ちょっと上かと思ってた八尾は沈黙を守った。

・・・後が怖いから・・・

そして、ティノは呆然としていた。

あまりにも早い失恋である。


そして、店を閉めてレストランに向かう。

きゃいきゃいと黄色い声を張り上げながらロハスに付いていく女性陣

後ろに押し黙ってついてく二人・・・


一行はレストランに到着した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る