第41話 罠は買うもの?

昼からはくくり罠の予備を作る。

なるべく、今ある物だけを使って費用を抑えたい八尾である。


材料を出して考える。


「ねータケルっ、これって、上から踏んだ時に輪っかが締まれば良いのよねっ?」


「おぉ、そうそう、なんか良いアイデアある?」


「う~ん、このベントーバコ?って言うの?、よく出来ているわねぇ」


「そうなんだよな、楕円にするってアイデアも中々のもんだし」


「う~ん、でもここじゃ別にその規制は意味ないでしょっ?」

・・・もっともである。


「そうか!そうだよな じゃ輪っかのサイズはバネに合わせるとして・・・

やっぱ当面の問題は費用だなぁ バネ一本千円だからなぁ」


「なによっ、私が悪いって言うのっ!?」

・・・自覚は有るらしい。


「マイロード、そこはそのバネで無くては成らないのでショウか?」

・・・話をそらす優秀なべるで。


「べるで、ここが締まれば良いんだ。昔の罠や米軍のマニュアルだと木をバネ代わりにして

跳ね上げるっていうのもあるし」


「竹なんか如何でしょう?村はずれに竹藪がありマスから入手できマスよ」


「なるほど、試してみる価値はありそうだね」


物事は1人で考えるより3人位で考えるのが早い。

それ以上だと却ってまとまらないが・・・


竹藪の竹は真竹だった。それを切って割っていく。

1m位の長さで4,5センチ幅に割る。

何本か作った後、それをバネ代わりにし試してみる。


「う~ん、なんか見た目悪いわねっ。竹が丸見えなのが今一だわっ」


「う~ん、ちょっと動作させてみよう。」


ばし・・・


「う~ん、締まるのが遅いかなぁ?」


「う~ん、遅い・・わねぇ・・・」


そうこうしているうちに、冬の短い昼間が終わっていくのであった。


夜、タケルが風呂から上がると、べるでがちょっと興奮したような物腰で言った。


「マイロード、解決デス。バネが作れまシタ。鉄筋とレンチを一本使いマシタ」


「へ?」

八尾の部屋にあった、異形鉄筋(1m)

元々BBQ流行りの時に焼き鳥を焼くための置台として買った奴だ。

1mで100円程度だった。買ったは良いが、「網でいいじゃん」の一言でお蔵入りであった。

レンチは・・・レンチも安い片口スパナだ


頭のなかで、夜な夜な鉄筋をレンチで叩いている「べるで」を想像する。・・・怖い・・・


「違いマスっ」

ちょっと怒ったような口調で言われる。心を読んだ・・・のではなく、八尾は顔に出るタイプだ。


「鉄筋を取り出すときにレンチと混ぜます。そして出口を絞って、出口をちょっと曲げておくと・・・

ホラ、この通りデス」


実演するべるで。 べるでの手元からコイル状の金属がクルクルと伸びてくる。


「やれば出来るものデスね、マイロード!」


誇らしげである。

八尾も、ただひたすら感心するばかりである。


「はぁ、これと、コレを?出すときに混ぜて?出口細めてちょっと曲げて?

ほぉぉぉ、よく考えたもんだなぁ。偉い、べるで!」


「配合に苦労しましたデス、マイロードっ」


先日の生活魔法のマグライトよりよっぽど魔法である。


「なになにっ?どーしたのよっ?」


アンが風呂から出てきた。

服はちゃんと着ているが、髪から滴る水滴をまき散らしながらバスタオルで拭いている。

八尾と入れ替わりで入ったのだが、昨日の一件で懲りたのか、烏の行水である。


「べるでが、ばねの問題を解決したぞ」


「へえ、え~出すときに混ぜた?相変わらず荒業使うわねぇっ。それにしても凄いじゃないっ。べるでっ!

あぁそうそう、早くお風呂入りなさいよっ、ヌルくなっちゃうわよっ」


「はい、オネェサマ」


・・・風呂・・・ヌルくなる・・・沸かす・・・


「そうだ、べるで!、お風呂の釜はどうやって作ったんだ?アレ元々ガンロッカーだろ?」


「あれは、出口をあの形にしてソコだけ押し出したのデスよ、そして出口の形を変えながら出し入れしただけデス」

板金屋がプレスで押し出して、曲げ工具で曲げるようなものであるが・・・


「それだっ、ひょっとして弁当箱も作れるか?」


「もちろんデス、マイロード」


・・・


その夜、風呂から出たべるでが箱作りを実演したが、八尾もアンも呆然と眺めるだけであった。


一つ出来上がった弁当箱を前に・・


「なぁ、アン、これって魔法じゃないの?・・・」


「なに言ってるのよタケルっ、よく見なさいよっ、ただ空間への出口で加工しているだけじゃないのっ」


その夜、2個目のガンロッカーからは6個の弁当箱が作り出された。


八尾はふと思い立って、残りの鉄板で直径154ミリの皿を作ってもらった。

ちょうどフライロッドを立てていた塩ビのパイプの内径である。

パイプを15cm位の長さに切ればこれも立派なトリガとなるのである。


パイプに皿を浅くはめ、でっぱりにワイヤーを掛けるのである。

獲物が皿を踏めばワイヤーは塩ビパイプに押されて皿から外れる。

留め金をなくしたワイヤーはバネの力で一気にしまる。・・・のである。

このような罠も市販されている。


買うばかりでなく、弁当箱を自作したり板金屋に作ってもらったりと罠師は自分で色々やっている。

八尾も自分で作るのは好きなのだ。


これで都合12個の罠が追加出来た。

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