第40話 罠は消耗品なのか?

べるでがアンを抱えて裏口から入って来た。


「お先にお風呂頂きました。。

オネェサマはのぼせてしまったようデス。」


しっかり着替えて頭にバスタオルを巻いた状態で抱えてきた。

流石べるで。 もし逆だったら大変である。

真っ裸で大変だ大変だと抱えてきて、土間から上がるところで盛大にコケるのが落ちである。

冷たい水でタオルを濡らすと首筋に付けて冷やしている。


単純にのぼせただけみたいだし、べるでが付いているいるし。

八尾が居ても役に立ちそうもない。風呂に入ることにした。



「後2つか。」       ・・・罠の事である。



市販の罠は高い。しかし、消耗品であるのはワイヤーとバネ部だ

本体が5千円から1万としても5年から10年は平気で持つよ、と昔からの罠師が言っていた。

まぁ法改正がちょこちょこあるから古いやつはもう猟でつかえねぇけどな。 と


ワイヤーは、、、猪が一発掛かれば大抵交換である。

捕れなきゃ3~5年持つ。きちんと水洗いして、乾いた所で保存すれば・・だが

逆にそれぐらい経った方が匂いが抜けて獲物が良くかかると言う話だ。


ワイヤーには安くて固い奴と、柔らかいけど高い奴がある。

柔らかい奴を括る方、木(固定用)から罠までが固い方と使い分ける。

ワイヤーを切ったりカシメたりする工具があれば、バネ、より戻し込みで2千円程度

補修ならもっと安い。


大事な事なのでもう一度言う。


本体は獲物が掛かったとしても、そんなに壊れない。

1~2ミリのアルミやステン板だ。

但し盗まれる事はあるので、大きく名前を刻む(書くのではない)事をお勧めする。


当初は5個もあれば十分と先輩猟師方は八尾に言っていた。

他に自作して色々試せば良い・・・と


ええと、そう。八尾手持ちの弁当箱は3つ。

それは既に設置した。


後の2個は自作である。

自作の方が罠の足が掛かるトコロの輪っかが小さい。

弁当箱は楕円形である。

これは日本の狩猟法の解釈で短径が12センチと決められているとの事だ。

熊を錯誤捕獲することを防止するためである。


くくり罠は踏まれれば良いわけではない。ワイヤーの内側に足が入らなければ空はじきとなる。


設置する場所を決める。これが罠師の一番重要な事である。


「残りはどこに掛けるかなぁ」


八尾は悩んだ。

悩んだ・・・

悩んだ・・・・・・

悩んだ・・・・・・・・・



「マイロード?」

あまりに遅いから声を掛けるべるで。


・・・・

・・・・


「マイロードっ!」


八尾はべるでに助け出された。

アンと違って重かったので、お姫様だっこで運ばれた。

べるではアンの時と違って慌てていた。

流石にコケることは無いが、他は忘れていた。

・・・

アンの隣に八尾が寝かされたとき、何故かべるでの顔が一番赤かった。

きっと運ぶのに力が要ったのだろう・・・



翌朝、起きると囲炉裏端だった。


蹴られて起きた。・・・蹴り返した。


「寝相悪いぞアンっ」

「タケルこそ寝相悪いわよっ」


布団を跳ねのけて、がばっと起きた。

にらみ合う二人。


べるでは、アンには寝間着を着せていた。


ふと、アンの視線が下がる。


「おはようございマス」

タケルの端末からにゅ~っと出てきた。

べるでは今日も元気だった。ちょっとばかり寝坊してしまったが・・・

べるでとタケルの目が合う。


べるでの視線も下がる。


「なにやってるのよっ ばかっ」


何が何だかわからないまま、蕎麦殻の枕が顔に中る八尾であった。


・・・

・・・

・・・


皆無口で食事を済ませた後、罠の見回りに行った。

罠にはなにもかかってなかった。

そうそう掛かるものでもない。

まして昨夜、罠を掛ける際に散々ライトで照らしたのだ。


午前中掛かってやっと残り二つの罠が設置された。

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