第31話 アンの里帰り
寝た・・わね?・・・
それにしても痛かったー。まさかあんなに怒るとはっ・・・
面白がってこんな機能つけなきゃよかったっ・・・
・・・もちろん例の預金残高機能である。履歴はしっかりバックアップが取られている。
ちょーっとばかり悪乗りしちゃったのよね、あんまりチート機能過ぎても面白味無いって・・・
なんとかならないかしらっ・・・
そうそう、タケルがこの文字読めるようになったんだから年令規制掛けておかないとっ・・・
取り合えず5億歳位で良いかしらっ。
この辺と?この辺、規制が必要ねっ。
うんよし。
さて、問題の残高機能よね? 盛り上がって徹夜で作ったから、記憶が曖昧なのよね?
そういえば、あの端末にマニュアル書かせていたっけっ。
取り出したのは一冊の本。
どこかで見たようなデザインに「八尾猛 HACKS」とタイトルがある。
なぜかハシビロコウが描かれている。
なかなか良い出来ねっ。
ええと、そうそう、この章。
ふむふむ。
設定初期値残高はコピー当初の銀行普通口座・・だったわねっ。
で、在庫以上の物を取り出すと、当時の取得価格で減算されると。
0になったら勿論、引き出しが出来なくなるのよねぇ・・・
ん?ん??
なに?定期預金残高があればそれを担保にしてマイナスまで借りられるのっ?。
ひゃっふぅ? ならなにも問題無いじゃないっ。
ふんふん、なによこいつ結構ため込んで・・・あれっ?
最後の引き落としって?残高これだけっ?
なによっ、何買ったのよ
えっ?なになに?はぁ・・・こんなものを・・・
仕方ないわねっ、これ、輸送途中は所有権が移ってるということで出せるようにしちゃいましょ。
次は・・・あぁもう、面倒くさいっ。
いいわ、この残高機能パージしちゃいましょう。
あれ?出来ない・・・
機能パージ出来ない!? なんでロックが掛かってるの? あれ?要るーと権限?なんでっ?
むぅ~なんかいい手無いかしら・・・
・・・
・・・
・・・
あぁ、もう、面倒くさいっ!
運用で何とかなるわよ、運用でっ
・・・
それにしてもこの本、良くまとまってるわね・・・
なになに。第一章・八尾猛とは・・・まぁこれは飛ばして
第三章・幼少期の性格形成における幼なじみ効果とトラウマの発現について?
第四章・トラウマのトリガとその効果的なキック方法
ふむふむ、ほうほう、え~っ まじっ?
明け方、遂にアンは力尽きた。
朝、囲炉裏端でグーグー寝るアンの横で八尾は震えていた。
寒かったのだ。・・・いや違う。
本をそのままにアンは寝てしまった。
そう、見つかったのだ。
どんなに眠くても、ヤバい物は片付けるべきナノだ。
さて、どう料理してくれよう・・・
八尾が思案しているときにイビキが止まった。 不穏な空気が流れる。
「お~き~た~な~」 ・・・返事は無い。
突っついてみた。 ・・・反応は無い。
鼻をつまんでみた。 ・・・反応が無い。
反応が無い? Oh!イキシテナーイ
揺さぶる ・・・脳溢血やらなんやらあるから揺さぶってはいけない。
首筋に手をあてる。 ・・・絞めてはいけない《当たり前である》。
脈が無い! し・し・し・シンデレラ? ちゃう 死んでる?
「おい、死ぬなこら」
八尾は必死であった。
Webで聞きかじった心臓マッサージを始める。
アンである。山場も谷場も無い。アンである。
そこに一切のお楽しみ等は無い。
心臓マッサージは30回行ったら2回の人工呼吸である。
「おい、死ぬな、帰ってこい」
数サイクル繰り返した所でアンがむくっと起きた。
「ただいまっ。」
言った瞬間青くなって気絶した。
「ええと・・・脈は・・ある。息も・・ある。
で、どうすりゃいいの?この場合・・・」
アンは呼吸が止まった時に上に登って行った。
いや、登ったような感覚があった。
辺りはぼんやり白くて何も見えない。自分だけがやけにくっきりと浮き立ってる。
知ったような声が聞こえた。
「あ~第九方面管理官、いや元第九方面管理官・・・今はアンだったか?」
「何か用かしらっ?」
戻されたにしちゃなんか含んだ言い方ねぇ?
端末は、今一人しか居ないわね・・・
見えないように後ろでで携帯端末を触った。
「ほかでもない、現状報告を聞きたくてね。
まぁそれは追々で構わないんだが、君は引き継ぎが未だだったね。」
端末が寄ると
「データテンソウスルネ」
「オネェサマデータテンソウスルネ」
ピリっと来た。ピリッと外に抜けていくような嫌な感じだ。
ちょっと構えるアン。
「これで良し、これで現第九方面管理官への引継ぎは完了だ。
それでは再び頑張ってくれたまえ。健闘を祈る」
やけに棒読みで健闘を祈られた。
「コマンドウケツケマシタ ジッコウシマス」
「オネェサマコマンドウケツケマシタ ジッコウシマス」
足元に穴が開いた。 ・・・仮想空間上だが。
アンは再び墜ちて行った。
今度は叫び声ではなく、一つの、いや一人の携帯でない端末と共に・・・
「おい、死ぬな、帰ってこい」
タケルの声が聞こえた。
「ただいまっ。」
「オネェサマ、ゲンチジントノノウミツセッショクガハッセイシマシタ。
モウモドルコトハデキマセン。カクテイジコウデス」
「えっ?なにっ?戻れないってどういう事よっ?まさかこんな所にずーっとっ?」
そのまま私は気を失ったらしい。
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