第30話 駆除の特例要項
米を出した。いや、買った。
10キロで5340円、残金32508G
一回7.5キロとして朝晩で15キロ、このままだとあと4日しか持たない。
だが、朝から集まって炊き出しの準備をする村人。
「昨日はありがとうございました。おかげでこの子らも生き延びることが出来ました。
「ありがとうございました。夕べから乳もでるようになりました。ほんとうにありがとうございます。」
来る人来る人感謝の言葉が止まらない。
八尾は困惑していた。今までこんなに感謝されたことは無い。
いつも先回りして物事を解決してしまっていたのが災いし
便利と思われることがあっても、あまり感謝されることは無い。
へんなスイッチが入ってしまった。・・・
「なんとかしないと、俺がこの村を守るんだ」
八尾は決意してしまった。
炊き出しをしながらルイに駆除の話を持ち掛けた。
「まだ、去年の子猪は出るんですよね?
この村での駆除を町に申請してもらえませんか?
俺が駆除しますよ。」
「そうか、やってくれるか、何から何まですまんな。
だが、駆除の申請となると一つ問題がある。」
「問題・・・ですか?」
「そうだ、駆除は村の者がやらなければならない。
君の戸籍はこの村に無い。
なんとかしたいが、戸籍の管理は町で行っているからなぁ」
戸籍・・・この村の税金は各家々に対し課税される。
勿論、収穫と人数によって決まるのだが。
税収の関係上、町から土地の面積と戸数は厳しく定められている。
その為の戸籍なのだ。つまり新たな人が入り込む余地が少ない。
「それなら私の家ならどうかしらっ?
父も無くなってしまったし、跡取りと言うことなら大丈夫じゃないっ?」
横からアンがしゃしゃり出てきた。
なんか悪い事を考えている顔をしている。
「おぉアン、お前さんは今年15歳か、もう成人か、早いものだな・・・
うんそれは良い、良いな・・・だが、・・・それでいいのか?」
・・・この世界の成人は15だそうだ。
「良いも悪いも、タケルがこの村の住民になるには、それしか無いでしょっ
駆除をしてもらうならそれしか無いじゃないっ」
・・・・・・
あっさり結婚が決まった。 ・・・八尾一人、蚊帳の外で決まった。
八尾はおでこに手をあてて上を向いていた。 ・・・どうしてこうなった。
そこからも早かった。
ルイは炊き出しに集まってた村民に告げた。
「皆の者、聞いてくれ、昨年、猪と戦って不遇の死を遂げた村の盟友、
ハルトヴィッヒ フォン ヤークトガルデンが娘 アンジェラが今日ここに
この村を救った英雄 タキュル ヤオと伴侶の誓いを立てたことを宣言する。」
・・・やっぱり発音できない村長のルイであった。
「今からアンはアンジェラ ヤオ フォン ヤークトガルデンだ。
みんな宜しく頼む。」
本来この村では秋の収穫後に祭りの一環としてその年の祝言を上げる習いである。
しかしいきなり告げられた村長の言葉に、村の人々の祝いの言葉が響き渡った。
「アンの名前って、アンジェラ フォン ヤークトガルデンが本名だったの?」
小声でつぶやくアン。
呆然と突っ立てるだけの八尾。
「祝言の祝い事は秋になるがな、これでヤオも村の住人だ。これからも宜しく頼む」
とルイは言い残し、急ぎ足で家に戻った。
「おめでとう、ヤオ、アン、やぁ目出たいな、これでハル坊もあの世で一安心だなぁ」
目頭を押さえながら祝うダル。
依頼を出しに行っている間にハルトがやられてしまったのを、相当気に病んでいたみたいだ。
ルイが駆け足で戻ってきた。手に手紙を持って。
「ダル、丁度いいところに居た。この手紙をもって町に行ってくれ。
「合点承知の助、明日の朝直ぐ出発し・・・」
「いいや、今からだ、役場に行ってこの届をだしたあと、駆除申請を上げてくれ」
「えぇぇぇ もう日が傾きますぜ」
「いやいやまだ昼前では無いか。頼んだぞ。良いか急げよ。気が変わらんうちに届をだすのだ」
微妙な言い回しが聞こえたが、ダルは手紙を抱えると走った。
「うむ、一人に成ってしまったアンが片付いてハルトも草葉の陰で喜んでいるだろう。
ヤオ殿もこの村に居ついてくれるという。若い衆はありがたい。ましてヤオ殿だ。この村も安泰だ。
春の種まき前に猪も片付く。これで村の収穫も大丈夫だろう。
ミラは・・・ミラは・・・ミラはまだ誰にも渡さんっ」
・・・ルイなら10両も何とかなりそうな勢いではあった。
出し抜かれたミラが複雑な思いでふくれっ面していたのは・・・誰も見てなかった。
村の若い衆によりアンの家が綺麗に掃除された。
そして、夜、村長の家の布団が運び込まれると新居となった。
ついでに呆けていた八尾も運び込まれた。
「ふつかものでございますが・・・」
正座で両手をついてしゃべりだしたアン。
「それを言うなら|(ふ・つ・つ・か・もの)だ、このうつけものっ!」
「いや、この体になって二日目・・・」
「いひゃい・・いひゃい・・ほへんなはい、ほへんなはい」
・・・例のお仕置きらしい。
あ~痛たたた。
そろそろなんとかしなきゃ、お口が伸びちゃう。
「なんで結婚なんてしなければならないんだ?」
「どうせこのアンにはもう身寄りないし、あんただって完全無欠の独り身でしょっ?
前世だって全期間が彼女いない歴じゃないっ」
「余計なお世話だ、兄妹とかほかにも別な選択肢があっただろ」
「仕方ないでしょ、駆除するには戸籍に入れるしか無いんだからっ
養子縁組だと大変なのよ、後で何も知らない二人が加わる事考えたら面倒くさいでしょっ。
い~じゃないっ。このナイスバディのおねぇ様と結婚できるのよ。
駆除するんでしょっ?駆除したいんでしょっ?ハンター試験は先なんでしょ~
・・・それに退屈しなくて済みそうだし・・・」
・・・どちらかと言うとナイデスバディなのだが。
・・・最後の言葉は小さくて八尾は聞き取れなかった。
「なんでお前試験の事知ってるんだよ」
「うふふふふ、端末にはヒストリ機能ってものがあってねっ、
検索で引いたキーワードとかもちゃんとログに残ってるわよぉっ~ うふふ
こっちの端末とそっちの端末はわーるどドライブで接続されているのよね~っ
今、他の検索履歴をリ・ス・トで出しましょうかっ?ダ・ン・ナ」
にーっと悪い顔でほほ笑むアン。 いったい何を検索してたやら・・・
「この馬鹿、またくだらない機能だけ盛り込みやがって」
「いひゃい・・いひゃい・・ほへんなはい、ほへんなはい」
「いひゃい・・いひゃい・・ほへんなはい、ほへんなはい」
「いひゃい・・いひゃい・・ほへんなはい、ほへんなはい」・・・・
夜は更けていった。
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