第24話 アンの家には電気がねぇ
「炊き出だ、長んちの前で炊き出しがあるだよ~っ」
八尾とミラは家々を回った。
赤子を抱えた者がミラに
「ホントだかが?食いもんあるだだかか?
ゆんべからもう乳もでねえだ、ややこ、ややこがよぉ・・・」
泣きながら半狂乱である。
村人は半信半疑ながら手を手に取って長の家に向かった。
・・・
その・・・小一時間ほど前・・・
「ここは・・・どこっ?
どこに落とされたのよっ!」
いいもんねっ、第九方面は散々覗いてたから知ってるもん。
前に誰かが落とされたときは・・・
たしか恐竜とか言うのになっちゃったのよねっ。あれは話が通じなさそうで大変そうだったぁ
その点ここは話が通じそうだしっ、しばらく楽しみましょっ♪
先ずはニューヨークとかトーキョーとか行ってみたいわねっ。
まずは情報収集ねっ。
「本」とか「テレビ」とか「コンピューター」とか参考になる物は無いかしら・・・
辺りを見回しても何も無い。しかも薄暗い。
あるのはかぶっていた布団、薄い布団だが三枚重ねで使っていた。
電気・・電気つけましょっ、スイッチは・・・・
「なにも・・・なにも無いわねっ・・・ここは物置部屋という物かしら・・・」
「それとも山小屋ってやつかしら・・・」
「なんか見ていた わーるど と趣が違わなくなくないっ?」
・・・どっちなのだ?
ん・・・、なんか落ち着かないわねっ。
転生時に生体チェックして異常があれば直しているはずなんだけど。
なんかこうモジモジするというか・・・
だんだん酷くなるわね・・・
<<<かわや・・かわやさいくだ・・・>>>
「なに?なにっ?誰よっ?」
<<<か・・かわや・・・>>>
かわや?かわや・・せっちん・・・てあらい・・・トイ・
あ、生理現象ね。排泄・・・液体のほう・・・これが尿意って奴ねっ!
<<<か・かわや・・は・・・はやく>>>
すっくと立ち上がると厠に向かった。
ガラリ・・・ ・・・残念そこは押し入れだ。
大概にしてこの様式の家屋にはトイレが無い。
外なのだ。少し大きめの家なら縁側の奥か?
部屋中探して無いと判り、慌てて裸足で飛び出す。
ふぅ・・・びっくりしたっ。人間の体って不便なのねっ・・・
ぐぅぅぅぅ?
こ・今度はなに? 人の体はお腹もしゃべるの?
ぐぅぅぅぅ?
なんか力が入らない くらくらするわ~ ・・・これが目眩って奴ねっ!
治療法はたしか・・・
<<<はら・・はらへっただぁ・・・>>>
「だ・誰なのっ?何者なのっ?」
え?はら・・なるほどカロリーの摂取が必要なのね。
たしか・・・
そう、食料は冷蔵庫という物に入っているはず。
・・・そんな物は無い。
部屋中探しまくって座り込む少女・・・
少女・・・
この少女の体は飢え死にしたアンの体である。
余りに長い飢餓状態の中、生に執着し過ぎて体に残留思念が残ってしまっているのだ。
飢え死にする直前に魂は転生してしまったのだが、思念が体にこびりついてしまっている・・・のである。
元第九方面管理官の魂が入る前にある程度、アンの体は整備されたとはいえ、腹の中にカロリー源は無い。
飢餓状態で失われた、脳の基質、筋肉、内臓機能などが修復されただけで、脂肪や肝臓内のグリコーゲンなどは補充されていないのだ。
さらに、魂が入れ替わった体は、徐々に魂に合わせるように自身を作り替えようとしていた。
修復された筋肉や内臓がカロリーを求める。
身体を再構築しようと食料を求める。
強烈な空腹状態が少女を襲う。
部屋を探し回っても種籾しか見つからず、途方に暮れる。
種籾は、体が「これは絶対守る物」と認識しているようだ。
「お腹が空いたっ・・・このまま死ぬのかなっ・・・」 ・・・いやまだ二日は大丈夫。
静かな部屋にへたり込む少女
ぐぅぅぅぅ? きゅるきゅるきゅる ぐぅぅぅぅぅぅ?
・・・割と賑やかであった。
「アンねーちゃ!、アンねーちゃ。
炊き出しだで!、飯喰えるだでぇ?」
ミラが声高らかに引き戸を引いて中に入る。
「アンねーちゃ、しっかりすっだ、炊き出しだ、飯喰えるだ。」
誰っ?この子誰っ?、知り合い?
アンってこの体の持ち主だった子?
「ヤオにぃちゃ、大変だ、アンが死んでるだ!」
・・・大丈夫、未だ死んでない
意外と慌て者のミラ・・・
「大丈夫だミラ、未だ息をしている。このまま運ぼう」
八尾はアンを抱きかかえて運んだ。
この子はミラね・・・こっちはヤオ・・・
ヤオ、ヤオ? 八尾 猛かっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます