悪夢

「なっ!? リーダー! 荷車の中にガキが紛れてます!」


(見つかったか‥‥‥)


 そのことに関して、アーロンは特に何も思わなかった。ただ流れるままに。もし、このまま激昂した商人たちに殺されたとあっても、今の彼は何も思わないのだろう。


「リーダー! こいつ、どうしちまいますか!?」


 荷車の中から引き出され、後ろ手を縛られたアーロンの前に、商隊のリーダーと思わしき男が立った。


「焼くか」


(‥‥‥?)


 何かがおかしい。


 リーダーのその言葉と共に、他の商人たちが何処からともなく、枯れた木の枝や、葉などをアーロンに放り捨てるようにくべ始める。


(‥‥‥なんなのだ? この違和感は?)


 気が付けば、火のついた松明を持った商人がアーロンの足元に積み重なるように散らばった枝や葉へと着火せんとしていた。


「我らの復讐の炎で焼かれろ‥‥‥」


(‥‥‥!?)


 その商人の顔が、渦を巻くように崩れ、それがまた巻き戻るかのように別の人間の顔を形作っていく。火をつけようとしている商人だけではない。アーロンを取り囲む、他の商人も同様である。


「お前たちは‥‥‥」


 ―――国王反発派。


 アーロンがそう口にするより早く、松明を持った商人がアーロンに火をくべた。その商人の顔は、アーロンが決起を持ち掛けた反発派の一人、サイモンのそれであった。

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