焦燥
北地区の森林公園の中ほど、試験場に向かう馬車に揺られながらローブの男、アーロン・フレンザーはえもいわれぬ焦燥感に心を焦がしていた。
ただ気づかないフリをしていただけであって、イーニアス王国に入国してから……いや、数週間前から感じ続けていることである。その焦燥感ゆえに、アーロンはこの数日間ほとんど睡眠を取ることができていなかった。
アーロン・フレンザーという男は元来感情を表に出さない男である、そのため事情を知らぬ者から見れば、ただ目つきの悪く、無口なやつれた男に見えていることだろう。
(落ち着け……この目で確認するまでは真実とは限らん)
理性と焦燥感の狭間で苦悩するアーロンを乗せて、馬車は試験場へと向かって走り続けていた。
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