一章 簒奪鬼

イーニアス王国

 イーニアス王国。国王アーチボルドに統治されたこの国は、豊かな自然と巨大な鉱山、広大な湖を領地に有する大国家である。


 その広大な土地柄ゆえに農業が盛んに行われており、収穫期には各国の商人が訪れる商業国としての顔も持つ。


 かといって農業だけが盛んかと言えばそうでも無く、鉱山から採れる鋼鉄を使った高度な製鉄技術も確立している。その製鉄技術によって作られる武器や防具は商人に売られるのみならず、王城を守護する近衛騎士隊ひいてはその下部組織である兵士団にも支給されている。


 これら良質の武具で武装した近衛騎士隊は、軍事国家である隣国のベルンフリート帝国の兵士隊と同等の戦力を備えていると噂されているほどだ。


 しかし、これらの軍事戦力はあくまで自衛の際の備えとしてのものであり、他国との関係は至って良好である。


 強いて欠点を上げるのだとすれば、武術こそ至上とするその国柄から、魔法の研究が一切行われておらず、認知すらもされていないことであろう。


 だが、それを考慮しても聡明な王、豊富な資源、高度な技術、それらにより支えられる高い経済力によってイーニアス王国は近隣世界において盤石の存在であると言えた。


 これは、そんなイーニアス王国で起こる、とある男の復讐の物語である。

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