第4話




午前0時すぎ、私と陽介は先程までいた居酒屋から徒歩5分の所にあるラーメン屋に居た。


地元には何軒もあるチェーン店である。



「いやぁ2時までやってるなんて知らんかったなぁ」



私は拒否したが、結局ついてきたこの男。



「あ、すいませーん、餃子一枚くださーい」


「豚骨醤油らーめん一つお願いします」


「お、ええな!僕も豚骨醤油らーめんください」



ダイエット中なんやけどな、という割にすげぇ食うじゃんこいつ。



「…彩乃、尾張と仲ええよな」


「え、なに急に」


「いや、なんとなく。」



居酒屋での発言といい、なんか引っかかるものがある。

…もしかして



「陽介、サヤカのこと好きなの?」


「なっ…アホ!そんなんちゃうわ!」



ただ、と前置きをして



「彩乃のことが心配なんです」


「なんでよ」


「あいつ…尾張、きみが思てるようなええ子ちゃうで」


「何言ってんの、あんた今日ちょっと変だよ」



陽介は難しそうな顔をした。



「う~ん、なんて言えばええんかなぁ」



腕を組みながら言葉を選んでいる。



「俺、言いたいこといっぱいあんねんけど。でも、言うたら言うたで」



彩乃が嫌な気持ちになるかもわからん、という。



「大切な友達、なんやもんな。彩乃にとっては。」


「私にとっては、って、あんたにもそうでしょ」


「う~ん…」



本当にどうしたんだろう。


前に飲んだとき、といっても1年近く前のことだけど、陽介はお酒に強いイメージがあった。


でも今日は、私が居酒屋についた時にはもう酔っぱらっていたし…


わけのわからないことを次々口に出すし…



「なんかあったの?」


「へ?」



驚いた顔をする。



「今日の陽介、らしくないよ。いつもふざけたことばっか抜かしてんのに。」


「おいおい言い方きつないか」


「うん、決めた。メアド交換しよう」


「え、ええの!?なんかディスられたけど結果オーライやわぁ」



変な考えでも起こされたら怖いしね、というと



「ホンマに優しいねんなぁ彩乃は。でも大丈夫やで、そんな思い詰めるタイプじゃないのは、きみもよく知ってるやろ?」


「ならいいけど。じゃ、赤外線で…」


「あ、ごめん、俺の赤外線対応してへんねん。」



結局Cメールでアドレスを送った。あまり教えたくない電話番号も知られてしまった。



「変えよっかなぁスマホに。みんなスマホだと、こういう時だけ不便。」


「機種変更すんの?なら俺もついてくわ~明日も休みやろ?」


「別に今すぐしなくても…それにあんたはそろそろ大阪の家社宅帰ったほうがいいんじゃない?もうちょっとで連休終わるし、少し休んだら?」



あれ、言ってなかったっけ?と



「俺、東北支社に転勤になってん!」



まじか。



「この連休中になぁ、引っ越しすんねん。もう部屋決めたし荷物もおおかた送ってん。ま、今日は実家に帰んねんけど。」








いつも美味しくいただいていた豚骨醤油らーめんが、今日はまったく味がしなかった。





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