第2話




お待たせしましたー、生でーす


「あれ?そういやあんたビール飲めたっけ?」

「うん、ちょっと前にね」


あんまり得意ではないけど、勤め先の飲み会で飲んでるうちに少し耐性がついてきた。


「美味しさはイマイチわかんないけどね」

「彩乃!ビールはのど越しを楽しむもんなんやで!」


若干出来上がっているうちの1人が話しかけてくる。


「あぁ、残念ながら新沼くんは来おへんでぇ~」


この酔っ払いは角田陽介つのだようすけ。小学校のころ転校してきてから高校まで一緒の腐れ縁の幼馴染である。

大学を出て大阪に本社がある会社に就職したので、今は連休を利用して実家のあるこちらに帰ってきている。ちなみに出身は兵庫なのでエセ関西弁ではない。


「さっきサヤカに聞きました。それよりなんでいんの?」

「えぇ冷た!なんで俺にだけあたり強いん?!まぁええわ。それはもちろん、彩乃に会いたなったから」


当時私が彼と付き合い始めた時、一番口うるさく言ってきたのはこいつだった。







『彩乃、俺にしとき?』


『俺、大事にすんで、彩乃のこと』


また調子のいいこと言ってる。

陽介は明るい性格だしそこそこ顔もいいので、モテないわけではなかったが当時は誰とも付き合っていなかった。

今思えばバカな私を心配して、少しは本気で言ってくれていたのかもしれない。


『はいはいありがとう、私はこれでも幸せなんです。』


『そう。ま、気が向いたらいつでも来てくれてええで!』


『どこに?』


『俺の胸に!』







彼らは私が彼と付き合っていた 、と言うことだけしか知らない。



彼のが妊娠して、その堕胎費用を私が出したことや、その後いくら連絡しても返事が来なかったことは、死んでも知られたくない。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る