第13話 召喚の儀

実家から帰ってきて、色々なモノが溜まっておりまして、更新が遅くなりました。

奇跡的に読んで下さっている皆様、更新が遅れたこと、本当にすいませんでした。


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「んじゃ、【彼岸】への干渉を開始するッス! アキラさん拉致った女の人をココへ願いッス!」



ミミルに指示に従い、気絶してしまっている女の髪を乱雑につかみ取り、そのまま床の上を引きずるようにして指定の場所へと運ぶ。その様子を見ていたミミルは何が気に入らなかったのか、少し目を細める。



「なんです? 言いたいことがあるのならば仰って頂けますか? 不愉快極まりないんですが?」


「なんて言うんスかねぇ……、女性の運び方ではない気がするッス……。アキラさんて、口調は紳士的なんスけど、行動が外道過ぎると思うんッス。」


「これは心外なお言葉ですね。まさか外道中の外道を生きてらっしゃる巫女族の方に言われるとは。本当に遺憾な限りですね。」


「………僕は確かに巫女族ッスけど……。巫女族としては生きて来てないッスからね!!! だから同じ括りで話をされるのは不愉快ッス!」



些細な喧嘩を繰り返す二人にロウはわざとらしく大きな溜息を吐いて見せた。



「どうでもいいことで争うな……。ミミル、アキラはそういう生き物だ、諦めろ。んでアキラ、お前は大人げない。もう少し精神的に成長してくれ。」



ロウに怒られたミミルはアキラに対しての言葉を呑み込み、視線を拉致した女性へと移すと、帯を解き始める。アキラもミミル同様喧嘩を中断し、その様子を見守った。



「なに、裸体にすんの?!」



目を輝かせながらミミルに問うゼンだが、三人から一気に冷たい視線をぶつけられ、心なしか傷ついた表情を見せた。



「ゼンさん、キモイですね……。このような貧相な裸体に興奮出来るだなんて、凄いですね……」


「おっま!! こういうタイプの女は脱いだら凄いんです!! が、定番なんだよ!! 」


「おやおや、本当にキモイ方ですね。メス豚に食指が動くとは……。ああ、ゼンさん人間辞めて豚にでも転生されたんですか? これは気付かなくて申し訳ありません。」


「キィィィィイッ!! ムッカァァァァァ!」


「おや、豚ではなくお猿さんだったんですね。ついに【言葉】という概念すら失われてしまったのですね。お気の毒です。精々同じ猿と生殖活動に励まれてくださいね。」



ケラケラと薄ら笑いを浮かべながらゼンで遊ぶアキラを他所に、ロウとミミルは干渉儀式に取り掛かっていた。衣類をはだけさせた女性の腹部にミミルの指先が触れると、眩い光が掌を包み込むように発光し、次第に柔らかな灯りへとその姿を変化させる。


女性から精気、魔力を吸い取ったミミルの瞳は金色こんじきに輝き出し、彼岸とこの世界を繋ぐ媒体へと手を伸ばす。



「じゃ、干渉を始めるッス!」



ミミルは意識を集中させるために、瞼を閉じその神経を徐々に彼岸へと合わせていく。まるでハッキングでも開始するかのように、脳内で幾つもの英数字を並べ立て、同時に詠唱を重ね、複雑に絡み合う糸を解き解くように彼岸への入口を目指す。


何重にも折り重ねられてあるセキュリティーを突破すると、彼岸の世界がミミルの脳内を埋め尽くして行く。その中でサツキの存在を探りリンクを試みる。



「見つけたッス。」



ミミルの言葉に遊んでいたアキラはすぐに駆け寄り、様子を問う。



「あ、指を切断させられてるッス!!!!」


「あ゛? 今なんと仰れました? サツキ様の指が……切断されていると……、そう仰られました?」


「おお、綺麗な女の人が切断した指をどっかに持って行ってるッスね。」


「………殺。」



怒りを露わにし、一瞬にして殺伐とした雰囲気を全身から醸し出すアキラ。ふざけ合っていた時の余裕は一切消え、代わりに肌に突き刺さるような殺気を纏っていた。



「ミミル、拷問にあってるってことか?」


「んー、でも5本は切り落としてたッスよ。」



ハッキリとしないミミルの返答を受け、ロウは一つの解答へと結びつける。



「サツキに拷問はほぼ無意味だ。アイツは死にたくても死ねないからな。しかも痛みに慣れきってやがるから、おそらくやる意味はないと言える。で、あるならばサツキは自らの意思で指を切り落としたんじゃないか?」


「なんのために? 流石の頭イカレのサツキでも『暇だったから、つい。』で指は切り落とさないよね?」



悩む二人の言葉を聞き、アキラは沸騰した頭を一度冷却し、考えられるサツキの行動パターンを頭で展開し、こう結論付けた。



「儀式に必要だったのではないでしょうか? 異世界からコチラに戻るにはそれ相応の準備が必要になります。となると、なんらかの術式展開に生贄としての肉塊が必要だったと考えるのが妥当かと。人間だったらそこら辺のヤツを狩ってくれば済みますが、のモノとなるとそうもいきませんからね。」


「だとしても、悪魔の肉塊を要する術式なんて……。アイツ異世界破壊でもする気なのか?」


「だとするのならば、我々も参戦してお手伝い致さなければなりませんね。」



ミミルは更に集中し、干渉範囲を拡大していくと、なにやら一室で儀式たる準備が施されている事に気づく。



「まじッスね。なんか儀式の準備がされてるッス! 彼岸が破壊される恐れがあるッスよ!! ヤバいッス!!!」



彼岸を破壊すると、コチラの世界に何かしらの影響が生まれる危険性が強いため、ミミルは急ぎ干渉を取りやめ、召喚の儀式へと移行する。



「アキラさん、ちょっと力を貸して欲しいッス!!」



サツキと繋がる媒体にアキラも手を乗せ、二人で意識を集中させていく。次元空間を捻じ曲げるために生じる激しい揺れに耐えながら、サツキを呼び寄せる想いを乗せ、繋がったと思った瞬間、声を同時に張り上げ詠唱を唱えた。



「「サモンズ!!!!」」



*****


【セムナターン国】


大量の書類を優雅にお茶を飲みながら処理していくコロの元に準備が整ったという知らせが入る。すぐに儀式場へと向おうと椅子に掛けてあった羽織りを雑に肩に掛け、シニカルな笑みを浮かべながら部屋を後にする。


会場内には世話役として巫女都市から連れて来た数人の付き人が慌ただしく最終チェックを行っている最中だった。



「コロ様、お早いお付きですね!! 大方準備の方は整ってるんで、もう早速始めちゃいますか?」


「そうね、クラウス様の到着と同時に召喚儀式に取り掛かりましょう。」



すぐに始められるように、付き人達はそれぞれ指定された位置の魔法陣の中へと足を進める。準備が整ったことをリンに目線で伝えると、そのままコロへと伝わり、会場内は一気に凛とした空気に包まれる。


心が洗われていくような静寂の中、クラウスは遅れて登場し、深く頭を下げながら事の始まりを待った。



「では、儀式を始めましょう。」



コロは魔法陣の中心へと歩を進め、胸元から舞扇子を取り出すと、優艶ゆうえんに扇子を操り、踊り出す。目を奪われる美しい舞にクラウスが息を呑む。


大きな魔法陣を囲むように描かれた無数の小さな魔法陣の中には、付き人達が踊りに合わせ華麗に神楽鈴の音色で深い彩りを与えていた。


次第にやつはしの上に置かれた媒体が淡い光を醸し出す。

徐々に濃く発光していく媒体に合わせ、踊りも徐々にスピードを増し、始めの優雅な舞が嘘のように激しいものへと変貌を遂げていっていた。


目が開けていられない程の眩い光が会場を呑み込むと同時に、魔法陣の一部が強く光を帯びていく。すると、コロは突如舞を辞め、その場に崩れるように倒れ込んだ。


クラウスはコロに何かあったのかと駆け寄ろうとするが、付き人達は代わらず音色を奏で続けている。もしかすると儀式の一環なのかと前へと出した足を引っ込め、黙って観察を続けた。


それと同時に強く光を放っていた魔法陣から、大きな一本の光柱が天に向かい駆け上がっていくのが見えた。付き人達も光に向かい神楽鈴を掲げ、詠唱を唱える。



「サモン!!」



*****


【東京】


「では、儀式を始めるとしようぞぅ」



暦の活動限界の時間に合わせ、アルラが合図を出す。

仮死状態とされていた暦の肉体を魔法陣の中央へと運ぶと、壷窯で煮出した謎の液体を小皿によそい、サツキへと手渡す。


冷たくなった暦の肉体へと、謎の液体を使い術式を全身へ展開させていく。当然の事ながら一糸纏わぬ姿のため、龍は部屋への立ち入りを禁止されていた。


サツキは詠唱を行いながら身体の隅々まで術式を刻むと、前回の儀式同様、用意されていた短刀で勢いよく手首を切り裂き、血液をグラスへと注ぎ入れる。


聖水と混ざり合う血液が濃い紅に染まると、一口含み暦を抱き寄せ唇を近づけた。



「え? ちょ、ちょっと待って!! え?! だ、だめえええええええええええ」



何を行うのか予想がついたユキは慌ててサツキの元へ駆け寄るが、儀式の最中であるため、すんなりとアルラに確保され、黙って見守る以外の選択肢は存在しなかった。


好きな人が他の女性とするキスシーンを見て平然としていられる女子など要るわけもなく、ユキは部屋を走り去って行った。


暦が不敵な笑みを浮かべたのは、サツキに抱き寄せられる優越感なのではなく、その唇を先に頂くという宣戦布告的な意味合いだったことに気づき、唇を噛んだ。



(暦ちゃんのズルぅうううううううう)



サツキは暦の身体に自身の血液を含んだ水を流し込むと、そっと唇を離した。腕に抱えられた暦の肉体が徐々に赤みを帯び、血色がよくなると指先をピクリと動かし、大きく息を吸い上げた。



「おかえり。」



空気を体内へと取り込むと、暦はゆっくりと瞳を開け、ニコリと笑みを零す。



「ただいまです。」



後ろからはまるで手品ショーでも見ている気分だった恵美が盛大な拍手を二人に送っていた。



「本当に生き返った。すっごいわね。」



本当に冷たかった暦が動き出したのか、もっと間近で確認しようと歩を進めると、突如サツキの周りは蒼い光に包まれる。恵美は何かあったのかと急ぎ足でサツキに駆け寄り手を伸ばすが、光が消えた時にはもうその場にサツキの姿はなかった。



「え? 消えた?」


「もしや、還ったということかのぅ?」



突然の出来事に暦は呆然としていたが、目の前で確かに一瞬にしてサツキが消えたのをこの目でしかと見た暦は自信を持って告げた。



「向こう側に召喚されたのではないかと、思います。」


「まさか、向こうの人間が呼び戻すとはのぅ……。あやつにそんな事をしてくれる友人がおったとは、驚きじゃな。」



今度は金色こんじきの光が部屋を一気に包み込んだ。



「一体何が起きておるんじゃ……」


「アルラ様、大丈夫ですか?」


「ちょっとこの光何?!!」



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ご拝読頂きありがとうございましたm(__)m

今回更新が凄く遅くなり、ツイッターのメッセでご心配の声まで頂き、本当に有難い気持ちと、元気なのになんだか心配までしてもらって申し訳ないなと思う気持ちが入り混じっている今日この頃でございますm(__)m


まだ少し慌ただしくしておりますが、本人はとっても元気です!!!!

ただ歯医者という地獄の門を叩いてしまっているので、しばらく地獄通いの日々です。


次が書き終わり次第必ずUPしますので、お待ち頂けると幸いです!!!!












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