03
キミと出会って一年が
「モモをいつか僕のお
と、
「ねえ、ミチ。お嫁さんって、どういうこと?」
「言葉の通りだよ。僕はモモといつも一緒にいたいんだ。ほんとは指輪とかプレゼントするみたいなんだけど……ごめんね、持ってなくて」
「いや、そうじゃなくて……なんで私?」
「そんなの好きだからだよ。それ以外に何かある?」
「えっと……うん。そうだね」
いつもは見た目以上にしっかりして落ち着いているキミが顔を真っ赤にして照れていて、その姿がなんだか珍しかった。
そんなとき、ポツッ……ポツッと晴れた空から雨が落ちだし、それは次第に強くなっていった。僕とキミは雨から逃げるように社の屋根の下に逃げ込んだ。そして、僕は
「晴れてるのに、雨が降るなんて不思議だねー」
僕は空を見上げながらキミに声を掛ける。返事のないキミのことが気になりこっそり
晴れていた空はその後
しばらくすると、「――て、ミチ。ねえ――」と、キミの声が聞こえてきた。僕は体をゆっくり起こしながら眠たい目をこする。
「ねえ、起きて。ミチ」
「なに? モモ。何かあった?」
「よかった、やっと起きた」
僕は寝ていたんだと気付き、体を起こして辺りを見回すと太陽は遠く山の向こうに沈んだのか、空は
そして、山を下りても、ろくに
「ごめん、モモ。起こしてくれてありがとう。でも、もう帰らなくちゃ……」
「そう……あっ! ちょっと待って、ミチ」
僕はキミに呼び止められて立ち止まる。キミは社の
「山を出るところあたりまでは送っていってあげるよ。夜の山は危ないし」
キミは提灯の灯をたよりに僕の前を歩く。僕はキミについていき山を下りていく。そして、あとわずかで開けた場所というところでキミは立ち止まり、
「ここまでくれば大丈夫よね。それに――」
キミは僕の帰るべき方向を指差す。指差す方に顔を向けると
「ありがとう、モモ。それじゃあ、またね」
僕は歩き出し、振り返ってキミに手を振る。キミは小さく手を振り返していた。そして、目の前が開け道路に出たところで、もう一度振り返るが提灯の赤い光はもう見えなかった。
僕は懐中電灯の方に向かって歩き出した。その日、帰りが遅くなったことを両親に
そして、僕は帰りが遅くなった罰として、しばらく山に行くのを禁止された。
キミに会えない間、僕はキミに渡すための指輪作りをすることにした。さすがに金属を加工してとかできるわけもないので、母に教えてもらいイージーリングを作ることにした。
ゴム製のてぐすに色とりどりのビーズを通していく。なんだかビーズだけでは味気なく感じ、僕は今は亡き祖母から
そして、完成した可愛らしい指輪――母は「上手に出来たわね。これを貰う子がうらやましいなー」と言ってくれた。僕は「いつか母さんにも作ってあげるよ」と思ってもないことを言い、もう一つ自分用に同じようにビーズと鈴でストラップを作った。
数日後、禁を
キミは境内の掃除をしていて、その背中に「モモー!」と、声を掛ける。キミは僕の方に手を振って答えてくれる。僕はキミのいるところまで走っていき、
「これ前に言ってたお嫁さんになるための指輪。モモにあげる」
と、指輪を差し出す。
「私なんかが貰っていいの?」
「当たり前じゃん。モモのために作ったんだから」
僕はキミの左手をとり薬指に指輪をはめる――。キミは指輪をはめた左手を空にかざしながら、指輪の感触を確かめる。
リンッ――
小さく鈴が鳴り――キミは笑顔になった。キミは嬉しそうに胸の前で左手に右手を重ね、
「ありがとう、ミチ。大事にするね」
と、感謝の言葉を口にする。僕はキミの幸せそうな笑顔を
そして、それが僕がキミを見た最後の日になった――。
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