召喚
リリーを囲みこむように。ミラ、デルタ、そしてレインズが兵士たちを蹂躙し始める。デルタが魔法使いが放つ魔法をことごとく防ぎ、ミラ、レインズが攻撃してくる兵士たちを一撃で沈めていく。
「ククク……クククハハハハハハ! ゴミだ……ゴミのようにくたばっていくね。ククククククククハハハハハハハハハッククククククククハハハハハハハハハッ! なにも出来ずに、ただくたばっていく。まるで、ゴミのようじゃないかい? ククククククククハハハハハハハハハッククククククククハハハハハハハハハッ!」
なにもしないゴミ魔法使いが、ミラにおぶられながら悦に浸っている。
「むぅ……」
ゼルフは苦渋の色を浮かべる。
「ハハハハハッ……逆にこの程度の戦力で、僕に挑もうとした君たちの無謀な振る舞いがわからないな。どうやって勝算を立ててこの場に来たのか。全くわからない。どうか、僕にもわかるように教えてくれないかな?」
「……」
なにもしていないアシュが、なんでそんなに偉そうでいられるの方がわからないと言うのは、有能執事の感想である。
「ククク……調子に乗ってられるのも、今のうちだ」
ゼルフは、後方にいる魔法使いたちの方を見る。
「アレは……」
デルタがつぶやく。
「知っているのかい?」
「……私の研究員です」
苦々し気に、答える。
デルタは、莫大な研究費に加えて、優秀な人材を募ってあらゆる研究を行っていた。彼ほどの才能はないが、各部門でトップクラスの秀才を集い、魔法における研究を行っている。もちろん、その研究は飛躍的に進んだが、研究員同士の情報共有も性質上しなくてはいけなかった。
「金を出しているだけかと思ったのか? 私は貴様がなにを研究していたのかを知っている。その全てをな。さあ、準備をしろ」
勝ち誇ったようにゼルフは、魔法使いたちに師事をする。
「まさか……お前たち、やめろ!」
デルタの声が響くが、彼らの詠唱は止まらない。
「なんの研究をしていた?」
その並々ならぬ様子に、アシュは真面目な顔をして尋ねる。
「……通常、一人でしか行えない召喚魔法を集団で行う研究を。複数の魔法使いで行うことによって、高位の魔法使い……例えば、ヘーゼンハイムでしか行えない高位体を召喚できるようにするためです」
「くっ……バカ弟子が! ミラ、ここはいいからあの魔法使いたちを止めろ!」
「レインズ、お前も行け!」
アシュ、デルタの指示に弾けるように飛び出す2人。闇魔法使いはもちろん、廃棄されるようにブン投げられたが、そんな様子を気にするでもなく、焦燥感をむき出しにして事態を見守る。
レインズが剣檄で道を作り、ミラが疾風の如く走る。一瞬にして、魔法使いたちの前まで来たが、一呼吸遅かった。
<邪悪なる魔よ 真なる恐怖と共に 亡者を 奈落に つかせ>
5人の魔法使いたちの揃った言葉は、深く響き、指先で精製した五芒星の魔方陣は、美しい線を描いた。
黒い光が地面から放たれ、巨大かつ不気味な道化が。漆黒の身体ながら、白塗りの顔に派手な服装。一見可愛らしい化粧を施した姿。それは、酷く禍々しく映る。
「……ロキエル」
闇魔法使いは冷たい汗を一筋流した。
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