攻防


 剣士の男はシスに容赦なく剣を振り下ろすが、慌てることなく彼女は躱す。そのまま連続で剣を振り回すが、その斬撃はことごとく空を斬った。


 隙をみて、相手の腹に、強烈な蹴りを喰らわせる。


「ぐっ……小娘が」


 腹を抑えながら唸る剣士は、決して弱くはない。アシュは剣を持った男の動き、身のこなしから、実力としては中の上であると判断した。国の衛兵では部隊長レベルほどだろうか。


 しかし、シスは繰り出される斬撃をヒラヒラと躱し、華麗な打撃で反撃をしていく。


「これは……驚いた」


 素直にアシュの口から賞賛が漏れる。


 ミラに格闘の修練をつけられていることは知っていた。それでも、これほどの適性を見せるとは全くの予想外だ。


 今まで格闘経験がなかった者が、剣を持つ戦士と渡り合えるか。たとえ、この数カ月猛特訓を積んだとしてもーー否。それは、どう足掻いたとしてもやれるはずはない。実際に、それが可能となった者はいなかった。


 その者がシス=クローゼではなかったから。


 彼女が類まれな才能を持っていた。クローゼ騎士団初代団長シルヴィ=クローゼの血を、シスは色濃く継いでいる。天分の才能と尋常ならざる集中力が、熟練の戦士を圧倒するほどの実力まで引き上げていた。


 そして、もう1つ驚くべきこと。


 スカートのスリットがエロい。


 彼女が華麗に敵の攻撃を躱す時に、チラチラと垣間見える太もも。当初、彼女の服装からこれだけの幸運を得られることは、甚だ予想していない事態であった。


 彼女は非力であるが故に、蹴り技のヴァリエーションが多彩である。それは、さまざまな太ももが楽しめるということであり、変態ロリ魔法使いにとっては至福のひと時である。 


「こんの……調子に乗るな!」


 シスと剣士の攻防に、槍兵が介入しようと襲い掛かる。


「ネウちゃん!」


 彼女がそう叫ぶと、ネウロヴァロが襲い掛かり、槍兵を突進で吹き飛ばす。シスが一言指示するだけで、魔獣は命を懸けて彼女を守る。そんな恐るべき能力を身に着けている美少女だった。


 一方、ジスパ、ダン、ミランダは敵の魔法使いと激しい応酬を繰り広げる。ぎこちない攻撃魔法を繰り出す彼らは、熟練度の高い魔法使いの後手に回っていた。しかし、元々才能を買われて集められた特別クラスの生徒。徐々にその攻防においても3人が敵を上回り始める。


「ふむ……こちらも予想通りだね」


 アシュは大木にもたれかかり、腕組をしながら、戦況を眺める。 


 この闇魔法使いが敵の撃退を任せたのには2つの理由がある。1つ目は、生徒に経験値をつけさせること。戦闘の強さは実践でしか培うことができない。いかに、強力な魔法を扱うことができても、経験に勝る方が勝つ場合もある。


 2つ目。アシュが戦う場合への備えである。守りながら戦うことは、敵に弱点を晒すようなものだ。己の身は極力己で守らせる。戦闘において重要なことは、その敵にとらわれず、全体を見ることだと、長年の経験から理解していた。


「さて……このままであれば、心配せずに戦闘の観覧を楽しめるのだがね」


 ロリ変態魔法使いはそうつぶやく。


 『楽しむ』というのは、もちろんスカートのスリットから垣間見える太もも。教師として、ジスパ、ダン、ミランダの頑張りも見てやらねばならない。頭では理解しているのだが、どうしてもシスの戦い(太もも)に目が行ってしまう。


 若干200歳。アシュ=ダール。若さゆえという言い訳が効かない彼はいろいろと飢えていた。


 


 



 

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