最終話「そして伝説へ、ではなく新たな物語へ」
俺はその後、日本だけじゃなく世界中を観光していった。
今は無職だが、女神様のおかげで金には困らなかったので以前から行ってみたいと思っていた場所を見て回れた。
イリアと二人で。
うーん。俺、本当に転生できてよかったわ。
こんないい嫁さんと出会えたし。
「ってまだ結婚してなかったな。なあイリア」
「結婚式ならあの世界でしようよー」
イリアが先に言ってきた。
「あの世界? ああ、あそこか」
「そうだよー。あそこならまた皆集まれるし、あたしの友達も全員呼べるしねー」
「そっか、ならそうするか」
「うん!」
それから数ヶ月が過ぎ、俺達は日本へ戻って来た。
あの世界へ旅立つには俺の生まれ故郷が最も座標が近いからという事で。
その夜、宿泊先のホテルで寝ていた時だった。
- ねえ、聞こえる? -
「え? だ、誰だ!?」
俺はベッドから起き上がって辺りを見たが、隣にいるイリア以外誰もいなかった。
「ん~? どうしたの?」
イリアが寝ぼけ眼で起き上がって尋ねてくる。
「いや、今誰かの声が聞こえた気がして」
「空耳じゃないのー?」
「そうかな?」
ー 違うよ~。二人共聞こえる~? ー
「え? イリア?」
俺はイリアの方を向いた。
「うん聞こえた。てかさ、この声って」
ー そうだよ~。僕だよ~ ー
「あ、やっぱりそうなんだー。久しぶりー」
イリアは目線を天井に向けて話した。
「イリア? この声の主を知ってるのか?」
「知ってるよー。ほら、前に言ってた友達の転生者だよー」
「え? それってあの物語のラスボスでもある」
- その通りだよトウマ。君もある程度は僕の事を知ってるよね? -
「え、ええ。てかどうしてあなたが俺の事を知ってるんですか?」
- それはちょいとした情報網があるからね~。と、それより二人にお願いがあるんだよ -
「え、お願いって?」
- 君達がこれから行こうとしている世界、全ての中心世界が大ピンチなんだよ -
「へ!? いったい何が!?」
- 実はね、世界中ほとんどの人が石像にされちゃったんだよ -
「そ、そんな!? じゃあドシータさん達も!?」
- そうだよ。無事なのは数人だけ。僕も敵に封印されちゃってね、力が出せないんだよ -
え、この人って超チートキャラだろ?
それを封印するって、その敵ってどんな奴だよ?
- やっぱ君の「神の目」でも敵の正体が見えない? -
「え、ええ」
いや、まさかケイオスみたいな奴か?
- そうか。でも他の事は見えるだろうし、勇者の力もある。だからそれで彼らを手助けしてあげてよ -
「ねえヒトシさーん、その彼らって誰ー?」
イリアが声の主、ヒトシさんに尋ねる。
- もう一人の「僕」やその仲間達、そして神剣士だよ -
「あ、あの人達だったんだー。神剣士とは会った事ないけど」
「そうか、あの人なのか。こんな時になんだけど、一度会ってみたかったんだよな」
俺がそう言うと
- 実はね~、トウマは何度も会ってるんだよ~ -
「え? い、いつ何処で!?」
- 君が以前住んでたマンションの隣人。それが彼だったんだよ~ ー
「え? あ、あの人だったの!?」
- そうだよ~。君は彼女達が来る前に転生したから気付かなかったよね~ -
「そうだったんだ。もし時期がズレていたら……いや、『よく似てるな』くらいだったろな」
- まあ、普通はそうだよ~。っといけない。もう話せる時間がないや。じゃあ明日の朝に来てね。道は開けとくから -
その後ヒトシさんの声は聞こえなかった。
そして翌朝。
「さて、行くか」
「そうだねー。ちゃちゃっと片付けてさっさと結婚式しようねー」
「ああ。それじゃイリア、頼む」
「うん……時空転移呪文!」
こうして二人は異世界、全ての中心世界へと旅立って行った。
その後の事は、新たな物語で。
終
ありがちに異世界転生したが・・・・・・あれ? 仁志隆生 @ryuseienbu
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