第22話「覚醒」

 トウマがおそるおそる目を開けると


「え、あ?」

 トウマや他の者達は光のバリアーに包まれ、それが黒い気を防いでいた。


「こ、これはいったい?」


「大丈夫か、皆?」

 立ち上がって手を上にかざしているロボットが声をかけてきた。

「あ、あんたがこれを?」

「ああ。ところで勇者よ、今何か見えたのではないのか?」

「え、ああ。でもそれ、皆がいないと無理だった」

「そうか。ところで思ったのだが、先程言っていた『何処かで聞いた事がある』それについては調べてみたか?」

「それもやってみたけどダメだった」

 トウマは首を横に振るが

「いや、角度を変えてみたらどうだ? 例えば、等をな」

「え? ……そうか! うん、やってみる!」



- ぐ……やるな、聖守護トラックめ。だが -


 ケイオスの黒い気が大きくなっていく。


「ぬう!? く、くそ」

 ロボットが力を込めるが、バリアーが徐々にヒビ割れていく。


「え? あ、ああ!?」

 トウマが顔を上げて叫んだ時


- 今度こそ終わりだ、死ねえい! -


 バリアーが破られた。だが


「……させるかー!」

 トウマが黒い気目掛けて剣を振りかざした。


 するとその衝撃波が黒い気を切り裂き、消滅させた。


- な、何だと!? -


「……凄え程の力が湧き出てくる」


 トウマの全身から光の気が溢れている。


ー ……覚醒したか、勇者よ ー


「ああ。俺は勇者トウマ。……大魔王ケイオス、お前は俺達が倒してやる!」

 トウマが身構えて叫ぶ。


ー ぐ、ふふ、いくら貴様が覚醒したとはいえ、一人では余には -


「いいや、俺には八人の仲間がいる。だから覚醒できたんだよ……はあっ!」


 トウマが剣を掲げると


「え?」

「ふにゃ?」

「あ、あれー?」

 小次郎、ドンタ、レイカ、ニコ、マオリ、ミッチー、マウ、そしてイリアが光の中から現れた。


- なああ!? な、何故貴様等が生きている!? -


「いや、皆死んじゃいなかったんだよ。既の所で助けられてな」


- 誰が……まさか? -


「ああ、女神様だよ」

 トウマはもはや彼女を見習いだとは思っていなかった。


- ぐ、おのれ、だが貴様以外はまだ -


「そうだな、でもさ」

 トウマはマオリを見つめた。

「は、はい?」

「君なら皆を完全覚醒させる事が出来る。お願い」

「え、でもどうやって?」

「君の心の力、『心力』で強く望めばいいんだよ」

「え? ……はい、では」

 マオリは目を閉じ、手を組んで念じ始めた。

 そして


「皆さんの力を……えええーい!」

 彼女の体が光輝き、それが皆を照らした。


「え? わたしってそうだったんだ~」

「オ、オラって……」

 皆が自分の奥底から湧き上がる力に驚いていた。


「ふう、上手くいったようですね」

 マオリは安堵の表情を浮かべた。

「お疲れ様。じゃあ皆」

「ああ、ではまず私が」

 小次郎が前に出ようとすると

「いえ、わたしにやらせてくださ~い」

 レイカが自分を指さしながら言う。

「え? あ、ああ構わんが、その」

「心配しなくていいですよ~。っとその前に、とりゃあー!」

 レイカが手をかざすと光が放たれ、それが側にいたミッチー軍を照らし


「え、傷が!?」

「あ、体力が戻ってる! 魔法力もだ!」

 彼らの体が完全回復した。


「ええええ!? あれってもしかして、伝説の超回復秘法ー!?」

 イリアが驚き叫ぶと

「ああ。これを使えたのは伝説ではただ一人……それは」


「さ~て、皆さんも回復しましたし~、見せちゃいますね~」

 そう言ったレイカの体が宙に浮き、そして白く光輝き出した。


「え、あ、あれはまるで」

「レイカさん、何か天使様みたいだ」

 ミッチーとニコがレイカを見上げながら呟いた。


 やがて光が収まると、レイカは背に大きな白い翼を広げ、白いローブを身に纏い、右手には白銀に輝く聖杖を持っていた。


「あ、あれ? オラわかる。レイカは」

「ええ。わたしって実は大天使ラファエルだったんですよ~」

 レイカは夫を見下ろしながら言った。


「ええええー!? ちょ、マジー!?」

 イリアがまた驚き叫び

「ああ、彼女は癒しを司る、または病人や旅人の守護天使と言われるラファエルが転生した姿だったんだよ」

 トウマが説明した。


- ぐ……だがいかに相手が大天使といえど、余は負けぬぞ -


「そうですか~、じゃあ行きますよ~、えーい!」

 レイカが聖杖を振ると、そこから光が放たれ


- ぬおおおお!? こ、これは!? -


 それを浴びたケイオスの体がヒビ割れていく。


「大天使の聖なる光。あれでケイオスの力は落ちていくはず!」

 トウマがそう叫ぶと

「次は私ね。あ、小次郎さんも手伝って」

 既にバステトの姿になっていたマウが言った。

「あ、ああ。ところでマウ、ちょっと」

 小次郎がマウに何やら耳打ちした。

「……えと、わかったわ。後で教えるから」

 マウは何故か苦笑いしながらそう答えた。

「恩に着る。では」

「ええ。合図したら、ね」

 そう言ってマウはケイオスに向かって飛んで行った。


「ん? いったい何を教えるって?」

 トウマは首を傾げていた。



「行くわよ、はああっ!」

 マウはその全身から幾つもの気功弾を放つ。


ー グアアアァーー!? -

 その衝撃でケイオスは片膝をついた。


「よし、今よ!」

 マウが小次郎に向かって叫ぶと


「ああ。……もう一度お願いね」

 小次郎は自分の腹をさすりながらそう言った後、刀を上段に構え


「……火水波!」

 炎と水が渦を巻くように合わさった力をケイオス目掛けて放った。


- ぐ、そう何度も……  -


 ケイオスはその攻撃に耐えようとしたが


ー ぐ、グアアアアーーーー! ー


 堪え切れず、そのまま爆発した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る