第3話「俺が勇者?」

「俺が勇者だって?」

「うん、そうだよー」

 イリアは自信満々な表情で言うが

「ちょっと待て、そんな特典は聞いてないぞ?」

「えっと、そういう後付けのものじゃなくてねー、トウマには元々勇者の素質があるのよー」

「そ、そうなのか? でも俺なんて何も取り柄がない平凡な奴だぞ」

「んー、きっと元の世界じゃ勇者なんて必要なかったんでしょー? だから力が発揮できなかった、ってとこじゃないかなー?」

「まあ、たしかに大魔王とか破壊神なんていなかったけどな。でもなあ」

「心配ないって。そのうち開花するよー」

「そうか?」

 うーん、もしかして最初からわかってたのか、あの女神見習い様?


「で、これからどうするのー?」

 イリアが尋ねてきた。

「そうだなあ。大魔王を倒すならもう二、三人仲間が欲しいところだな」

 俺は別にいいが、イリアは元の世界に帰さないといけないもんな。


「うん。あたし肉弾戦は出来ないから、戦士か武闘家がいればいいよねー」

「それに回復系の呪文か特技を使える奴もな」

「なら僧侶だねー。あ、賢者か聖騎士なんかがいれば回復と戦闘両方で役に立つねー」

「そうだな。よし、仲間になってくれそうな人がどこにいるか調べてみるわ」

「お願いねー」


 俺は目を瞑り、神の目を使ってみた。

 すると

「ここから1時間ほど歩いた所に村があるみたいだ。そこに僧侶系の仲間がいるよ」

「じゃあ行ってみようよー」

「ああ」


 そして俺達は大草原の中を歩いて行き、たどり着いた場所はさほど人が多くない村だった。


「さて……あった。あの家にいるはずだ」

 着いた所は掘っ立て小屋みたいな家だった。


「ん、誰?」

 出てきたのはどー見ても子供が作ったような小さなガラクタロボットだった。

 あれ、こんなのは見えなかったが?

 ってか動いて喋ってるって凄え高性能だなおい。


「あの、ここに十七、八歳位の女の子いない?」

「……お兄さん達、マオリお姉さんの知り合い?」

 ロボットは訝しげに(だと思う)俺達を見ていた。

「あ、知り合いじゃないけど、少し頼みがあって来たんだ。いるなら取り次いで欲しいんだけど」

 するといきなりロボットが泣きだした。


「ど、どうした? もしかして聞いちゃいけなかった?」

「ねーあんた。何かあったのー? あたし達怪しい者じゃないからさー、もしよかったら話してみてよー」

「……うん、あのね」


 このロボットの名前はニコというらしいが、彼が言うには俺達が探していた仲間、マオリは彼が迷子になって倒れていた時に助けてくれたが、その後病気になって寝込んでしまったそうだ。

 医者に診せようにも金がないらしく、薬も買えず途方に暮れていたそうだ。

 

「そうだったのか。そこまで見えなかったな」

「ねえトウマ、お金持ってないの?」

「俺は転生したばかりだぞ。持ってるわけ」


- 道具袋の中にある巾着に入ってますよ -


「え? あ、女神見習い様?」

 返事はなかった。

 でも空耳ではないと思ったので、肩に下げていた道具袋を覗くと、両手に収まるくらいの巾着袋があった。

 そしてそれを開けると……。


「うぇ!? こ、これって!」

 袋いっぱいに砂金が詰まってた。

「なんだ持ってるじゃーん。これだけあればいくらでも薬買えるし、お医者さんに診てもらう事だって」

「いや待て。この世界の金相場がわからん。ちょっと調べる」


「どう?」

「フムフム、ここじゃ金1グラムがだいたい百ゴールドなのか。えーと、今持ってる砂金は1キログラム。だとすると……十万ゴールド!?」

 ここの1ゴールドは日本円でだいたい百円。

 だから十万ゴールドは一千万円……えらく奮発してくれたやんかあの女神様!


「やったじゃん! さ、早く行こー!」

「そ、そうだな。あ、俺一人で行ってくるからイリアは残っててくれ」

「何でよー?」

「彼女はずっと寝込んでたんだ。たぶん寝汗でベトベトだろうから着替えとかさせてあげてくれ」

「あ、うんわかったー。あたしがやっとくねー」

 イリアはそのでかい胸をドンと叩く。

 うわ、すっげー揺れてるー!


「お姉さんお願いします。お兄さんも気をつけて」

 ニコが小さな頭を下げて言った。

「ああ。じゃあ行ってくる」




 その後俺は村人に病院や薬屋の場所を聞いたが、どうやら最近村に住み着いた獣人が診療所兼薬局を開いたそうなので、そこへ向かう事にした。


 この世界は元々人間、魔族、竜族、獣人族、エルフやその他の種族が仲良く暮らしていたらしい。

 でも大魔王が現れた時に各種族の一部がその配下になったそうだ。

 だから獣人族だからといって敵とは限らない。

 逆に魔王軍には人間もいるって。




「あれ? 聞いた限りここだよな?」

 そこは壁も屋根もピンク色で、診療所ってよりキレーなおねーさんとお酒飲む場所っぽかった。

「ま、まあ見た目で判断しちゃいかんな。よし」

 俺は意を決して中に入った。

 すると

「ふにゃ? 今日はどうしましたかにゃ~?」


 ……そこにいたのは何かピンクの際どいナース服を着た猫耳黒髪の美少女だった。

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