第4話「猫耳美少女とお医者さんごっこ」

「え~と、あの~?」

「何だにゃ?」

「ここって診療所ですよね?」

「そうだにゃ~」

「……あの、病人を診て欲しいんですけど、先生は?」

「あたしがそうだにゃ~♡」

 少女はニコニコ笑いながら答えた。


「えと、マジで?」

「疑うのかにゃ? なら証拠を見せてやるにゃ」

 そう言って少女は俺に近づいてきた。

「ふ~ん、あんた左脇腹に古傷があるにゃ」

「えええ!? そ、そうだけど触りもしないでわかるのかよ!?」

「わかるにゃ~。気の流れがそこだけ歪んでたからにゃ」

「な?」

 す、凄えこの子って、俺転生したのに古傷はそのままなのかよ!?

「じゃあそれ治すから、上着を脱ぐにゃ」

「え、いやあの俺より重病人がいるから、そっちを先に」

「すぐ終わるから心配ないにゃ。さ、早くしろにゃ」

「あ。はい」


 言われた通り上着を脱ぐと、たしかに左脇腹に傷がある。

 子供の頃に木から落っこちて怪我した痕が。

 あ、なるほど。この体も同じように怪我したって設定になってるのか。 


「にゃあ~、いいカラダしてんにゃ~ジュル」

「は?」

「診察料代わりに(ズキューン!)させろだにゃあああ!」

 いきなり覆いかぶさってきたー!?


 ドゴオオッ!


「痛いにゃ~、冗談なのににゃ~」

 少女は頭を押さえながら言った。

「い、いや冗談に見えなかったぞ」

 でもこの娘って結構可愛いし、ちょっと惜しかったかも。


「まあいいにゃ。じゃあ……はあっ!」

「え? おお!」

 何か体が軽くなったような? そして左脇腹の傷も消えてる!


「これで信じたかにゃ?」

「は、はい!」

「じゃあその病人のとこへ案内するにゃ。あ、それとあたしはマウっていうんだにゃ」


 そして俺はその少女、マウを連れてマオリの家に戻ったが


「ゴラー! 何で医者じゃなくコスプレバーのおねーさんを連れてくるのよー!」

 出迎えてくれたイリアが額に青筋を立て、掌に炎を出して怒鳴ってきた。


「ま、待て! この人は名医だぞ!」

「へえ~、大人のお医者さんごっこする気~?」

「……あ、それいいかも」

 うっかりそう言ったら燃やされた。


「ふにゃ~……仲いいのね、あの二人」

「あの、早くお姉さん治して」

 ニコはロボットのくせに大汗をかいていた。

「うん、わかったにゃ」

 

 そしてマウはマオリを治療し、ついでに丸焼けになった俺も治してくれた。

「あ、私は?」

 マオリが目を覚まし、起き上がって辺りを見渡した。

「お姉さ~ん! よかった~!」

 ニコがジャンプしてマオリに抱きつこうとしたが全然届かない。

 なので俺が抱き上げて彼女に渡したあと、経緯を話した。


「そうでしたか……あの、ありがとうございました」

「いやいや。ところで」

「私でお役に立てるなら、と言いたいですがまだ体がちょっと」

 マオリが自分の体をさすりながら言うと

「心配ないにゃ。明日の朝には完全に元に戻るにゃ」


 マウが言った通り、マオリは翌日には元気になっていた。

 でも準備があるし旅に出るのは次の日に、となった。


 そして夕方、準備が終わり皆で晩飯食べながら話していた時。

「そうか。マオリも別世界から来たんだね」

「はい。旅の途中でここに迷い込んで。ニコ君とはその時に会ったんです」

 マオリはテーブルの上でパンをかじってるニコを見つめた。

 てかこのロボット飯食えるんだな。


「ねー。マオリって何か目的あって旅してたのー?」

 イリアが興味津々に尋ねる。

「ええ。私、ある人を探してるんです」

「へー。それってご家族か友達?」

「いいえ、それは……ごめんなさい」

 マオリは暗い顔になって頭を下げる。

「あ! こ、こっちこそごめんね。もう聞かないから」

 イリアは慌てて謝った。


 実は俺、神の目で知ってたけど……それ、誤解なんだよ。

 いや、今はやめとこう。いずれ折を見てな。

 

 それとニコも着いて行くって。

 彼の事も調べたが、どうやら彼も他の世界から迷い込んだようだ。

 しかし凄えな、あのEXゼッ◯ンを倒せるって。

 ニコがいれば百人力だな。

 

 ってあれ、そんな話どっかで聞いた事あるような?




 そして翌朝

「さ、行こうか皆」

「ええ。皆さん、これからよろしくお願いします」

 マオリが丁寧に挨拶してきた。

 しかしこうやって改めて見ると、マオリは茶色の髪に顔立ちは年齢より大人びた感じで、白いローブに髪と同じ色のフードマントを着ている。



 そして村の入り口まで来た時だった。

「あ、待ってたにゃあ~」

 そこに赤いチャイナドレスを着たマウがいた。

 うわ、昨日も思ったけど体のラインがセクシー過ぎだぞ。

 っと。いかんいかん。

「あの。待ってたって、何か用でもあるの?」

「うん。あたしも大魔王退治に連れてけにゃ~。これでも強いんだにゃ」

 マウはニコニコ笑いながら言った。

「え? あの、診療所はいいの?」

「あたしより腕のいい弟がいるし、見習いが数人いるから大丈夫だにゃ」

「そうなんだ。うーん」

 俺はこっそりマウの事を調べようとした……。


 ってあれ? 彼女も別世界から来た、って事と戦闘力と特殊能力が相当凄い事しか見えない。

 ……え? 何か姿がダブって見える?


「……ねえ、人の秘密を覗こうとしないでよね」

「え!?」

 な、なんか口調が変わってるけど?

「ふふ、少し教えてあげる。『神の目』でも見えないものはあるのよ」

 な、神の目を知ってるって、マウって何者だ!?


「あたしは妖怪猫女マウよ。今はね」

 え、妖怪? てかこいつ俺の心読んでるよな、絶対。

「そんな事気にするにゃ。さ、大魔王退治に出発だにゃあ」

 マウの口調が戻ったが……あ。

「あの、待ってくれよ。せめてもう少し仲間がいた方が」

「そうかにゃ? ……うん、あと四人いるわ。私達と同じように別世界から来た人が。でも一人は最後まで別行動になるから、あと三人を探せばいいわ」

「え、何でそれがわかるの? ……あ」

「それ以上言ったらアレ握り潰してあげるわよ」

 マウが鋭い目つきで俺を睨んできた。

 てかそれだけは勘弁してー!


「ふふ……いつかちゃんと言うから、今は言わないで欲しいにゃ~♡」

 さっきの怖さは何処へやら、マウは可愛いしくウインクして言った。

 

 あ、ああ。わかった、いやわかりましたよ。


 ……様。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る