第14話「トラック」

 そして俺達は城門前までやって来た、が


「ふむ、そう簡単に中には入れぬようだな」

「ええ。あれを倒さない限り、ですね」

 小次郎さんとミッチーが話していた。


 門の前にいたのは全長20メートルはありそうな黒いゴーレムだった。


「よーし、あんなのあたしの魔法でぶっ飛ばしてやるわー」

「あ、待て!」


 イリアは俺が止めるのも気がずに特大の魔法をぶっ放した。

 だが


「ぜ、全然効いてない?」


 ゴーレムは何事も無かったかのようにそこに立っていた。


「あれには呪文が効かないようだぞ」

「それにミサイルや気の力も効かないようだにゃあ」

 俺とマウが続け様に言う。


「それなら早く言ってよー!」

「言う前にやったんだろが。さて、どうする?」

「肉弾戦しかないけど、あれは相当固そうだから苦戦するにゃあ」

「だがやるしかないだろ。よーし、俺とマウ、小次郎さんにミッチーがあいつを攻撃する。イリアとニコは後ろから敵が来ないように見張って」

「うん!」

「オ、オラ達は術で援護するよ」



 そして俺達とゴーレムの戦いが始まったが……、



「くそ、硬すぎて刃が通らねえ!」

「うう、ドンタさんの術で力が何倍にもなってるのににゃあ」

 俺達はゴーレムに傷一つつけられずにいた。


「く、こうしている間にも皆が」

 ミッチーがそう呟いた時、何処からともなく声が聞こえた。


- 勇者とその仲間達よ。あれは私に任せてくれ -


「え、誰だ!?」

 この声、頭の中に直接響いている?

 見ると皆にも聞こえているようだ。


- 私は君達とここまで来た者だ -


「え? 俺達とって……ま、まさか!?」

 俺達がある方向を向くと


ー そうだ。君達が今見ているもの、それが私だ ー


 そこにあったのは俺達が乗ってきたトラックだった。

 そしてトラックはうっすらと光っている。


- 私は勇者と八人の戦士が力を送りし時、真の姿となれるのだ -


「え、真の姿って?」


- それは見ればわかる。さあ -


「あ、ああ。よし皆、トラックに向かって念じるんだ!」


「うん!」

「にゃあ!」

 

 俺達が手をかざして念じると、そこから光が放たれ、トラックに吸い込まれていく。

 するとトラックが眩い光を放ち、その姿を変えていった。


 やがて光が収まり、そこに立っていたのは……ええええ!?


 そこに立っていたのは、運転席が胴体になり、荷台が腰と足と腕に変形したかのような全長十メートル程のロボットだった。



「ちょ!? 何アレ格好いいー!」

「え、ええ? アレってもしかして、トランs」

「マオリお姉さん、それ言っちゃダメ!」

 皆驚きながらロボットを見つめている。



「ようやくこの姿になれた。では、勇者達の道を妨げる者を倒すとするか」

 トラックのロボットがゴーレムに向かっていく。


「でりゃああ!」

 ロボットの重いパンチがゴーレムの腹を打つ。


「……!?」

 それを受けたゴーレムが腹を押さえながら後退る。


「まだまだ、とおおっ!」

 今度は飛び上がり、ゴーレムの顔に蹴りを放つ。


「ゴッ……」

 蹴りを喰らったゴーレムは一瞬怯んだものの、すぐに体勢を戻す。


「流石は大魔王に造られし者、そう簡単には行かぬな。ではこれはどうだ?」


 その後、俺達の攻撃が効かなかったゴーレムを相手にロボットが圧倒していた。


「あ、あのロボット滅茶苦茶強え」

 俺達はただ呆然とそれを眺めていた。




「ゴ……」

 そしてゴーレムが片膝をついた時

「よし、とどめだ」

 ロボットは何処からか取り出したライフルを構え、そこからレーザービームを放つと


「ゴオオーー!」

 それをまともに喰らったゴーレムは爆発した後、消滅した。




「よ、よっしゃあ!」

 俺達が歓声を上げていると


「喜ぶのはまだ早いぞ。さあ、先に進むのだ」

 ロボットが俺達の方を向いて言った。


「ああ。この先もあんたがいれば百人力だぜ!」

 だがロボットは首を横に振り

「いや、私はここで敵軍を防ぐ。大魔王は君達に任せた」


「え? ……ああ、わかったよ」

 そうだな、彼は俺達を先に進ませるのが使命だしな。


「では、武運を祈る」

「こっちも祈ってるよ。じゃあ皆、行くぞ!」


 俺達は門をくぐり、城へと入った。

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