第13話「最後の一人」

「……あ、あれ?」


 俺がおそるおそる目を開けると、ドンタさん達がいる場所の上に誰かが浮かんでいた。


「ど、どうやら彼が稲妻を防いでくれたようだな」

 小次郎さんもそこを見ながら言う。


「あ、あれは最後の一人だにゃあ!」

「え!?」

 

 マウがそう叫んだ時、その彼はドンタさん達の側に降り立って話しかけた。


「皆さん、お怪我はありませんでしたか?」

「オ、オラ達は大丈夫だけど、あんたが」

「僕なら平気ですよ。防御壁を張ってから突っ込んだし」

「で、でも、その」

 ドンタさんは言い辛そうにしている。

「ああ。この顔なら以前からですので」


 彼の顔は左半分が焼け爛れていた。


「そ、そうなの?」

「あ、それって呪いじゃないですか~。一体誰に?」

 レイカさんがそれに気づいて尋ねる。

「大魔王にですよ。僕は以前奴と戦いましたが、敗れてこのザマです」


 俺達も彼らの側に駆け寄った。

 そしてマウが言った。

「ミッチーはさっき言ったとおり大魔王の部下になったフリをして、陰ながら人々を守っていたんだにゃ」

「ええ。しかしもうその必要はありませんね。これで全員が揃ったんですから」

 彼、ミッチーがそう言うが、ん?

「あれ、君は自分がそうだと知ってたの?」

「はい、とある方に教えてもらったので。まさか僕もだったなんて」

 ミッチーは自分の両手を見つめながら言う。

「とある方って?」

「えーと、言っていいよな? 女神見習いの女性ですよ」

 あ、そうだったんだ。

 あの女神みな、いや女神様、結構手助けしてくれてるな。


「っと、話は後にしてまずはアレを片付けましょう」

 ミッチーが前方の大魔王軍を指差して言う。

 どうやら聖なる光の効果は切れ始めてるようで、敵は次々と立ち上がっている。


「ああ、もう光は効かないから苦戦しそうだが、俺達九人なら」

 その時


「いや、もっと大勢ですぞ」


 ん、この声は誰だ? って、あ!?


 ミッチーの後ろには揃いの白い軍服を来た魔族、竜人族、獣人族、人間もいた。

「み、皆? どうして?」

 え、彼らはミッチーの知り合いか?


「我々は魔王ミッチー様に忠誠を誓った者。大魔王などの部下になった覚えはありません」

「そうですよ。我々は何処までも貴方様と共に。たとえ地獄の果てまででもお供しますよ」

 彼らが口々に言う。

 どうやらミッチーの部下だったようだって、あいつって魔王だったのかよ!


「皆……いいんだね?」

「はい。まあ否と言われても着いて行きますがね」

「……ありがとう」

 ミッチーは涙ぐみながら礼を言った。




「では我々ミッチー軍一万があれらを押さえますから、皆様は」

 参謀格の男性がある場所を指差す。

「うん。じゃあトラックで一気に大魔王の城まで行こう!」

「おお!」 

 俺達は手を挙げて答えた。


「よし、皆乗ったな。ミッチー、頼むぞ!」

「ええ、では」

 ミッチーはトラックの上にいた。

 彼は腰に差していた剣を抜き、気を集中して構えを取る。


 そして


「……鳳凰一文字斬!」

 ミッチーが剣を振り下ろすと、そこから凄まじい衝撃波が放たれ


「ウギャアアアーーー!」


 大勢の敵が吹き飛び、その後には城までの一本道ができていた。


「よし! 全速力で行くぞ!」

 ミッチーが素早く運転席の後ろに潜り込んだ後、俺はトラックを発車させた。


「では行くぞ! あの方達に敵を近づけるな!」

 おおー!


 ミッチー軍は敵を引きつけるべく突撃していった。

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