第16話 最悪な再会 -1-

「そろそろ動物たちが目を覚ますな」

「あなたも仕事が忙しくなるし、無理しないでね」

「あぁ」

 2人の会話を聞き、私も"春"を意識し始める。

気が付けば雪はとっくに止み、風も温かくなった。

木々には小さな蕾がつき始める。


――――疑問が浮かんでから約2ヶ月。

 私はずっと考えてた。私の王子様への気持ちは、誰に何を言われても貫けるのか。

答えはもちろん決まっている。


「ちょっと出かけてくる!」

 春がくるまで散々練習したストロベリーパイを持って家を出た。


――――お母さんとお父さんが目を合わせて苦い顔をしていることに気付かずに。



                *****



 歩く。ひたすら歩く。目的地は、花畑。

 彼に会える保証なんて、どこにもないけど。

それでも私は――――


「……やっと来たな、花畑」


 そこに立っていたのは紛れもなく、愛しい愛しい王子様だった。

溢れそうになった涙をこらえ、彼の所へ駆け寄る。

「会いたかったの!」

 トンッと彼の胸に自分のおでこを当てる。

「……今日もいい匂いがするな」

「ストロベリーパイ。一緒に食べよう」

 私は見上げて笑いかけた。



                *****



 2人で花畑の中心に座り、パイを頬張る。

食べながら横目で王子様をチラチラ見る。だって、反応がどうしても気になるから。

「……味も形も上手くなったか?」

 その言葉で有頂天になる。練習した甲斐があった……!

「頑張って作ました」

 得意気に笑うと、彼は私の頭をくしゃっと撫でた。

「オレさ……もうお前に会えないかと思ってた」

 遠くを見つめながら、小さく言った。

「え? どうして?」

「だって、オレが狼族の血が流れてること、知ったわけだし」

「それについては、少しびっくりしたけど……初めて会った時、実は狼族かなって気になってたからすっきりしたかも」

私が笑いかけると、彼はホッとしたような表情をする。

「王子様が狼族でも、あなたはあなただから」

「え、今なんて……?」

 聞き慣れた声が聞こえた。

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