第15話 親の心配

 窓の向こうでは雪が降り積もってるけど、今は止んでる。

「王子様……大丈夫かな……」

 2階から外を見下ろし呟いた。

 彼と会わなくなって、もうすぐ2ヶ月。

 不思議なことに会わなくなってから、前よりも彼のことを考えている時間が増えた。

今の私は気にしていなかった。

「早く逢いたいよ……」

 じっとしていられなくなった私は、部屋を出る。

そして階段を駆け下り、

「お母さん、おばあちゃんとこ行ってくる!」

「え!!? 今から!!?」

 私は急いでコートを羽織り、マフラーと耳当てを着けると、家を飛び出した。



                *****



「……ねぇ、あなた。秋からルージュの様子おかしくない?」

「ん? 言われてみればそんな気もするが……。何か気になるのか?」

「だって頻繁にお母さんの家へ行くし……。こんなによく外へ行ってたことある?」

「あいつだって遊びたいんだろ」

「でも! 狼族だって……」

「心配なのは分かる。あんまり心配ばかりしてると身が持たないぞ?」

「それは……」

「……さて、久しぶりに俺も夕飯の支度を手伝おう。何すればいい?」

「え……じゃあ……」



                *****



 コンコンとノックをする。

「はぁい」

 おばあちゃんの声と共に扉が開く。

「こんにちは!」

「まぁ、ルージュ! 寒かったでしょう?」

「大丈夫だよ、お邪魔します」

 促されるまま家へ入る。

「紅茶でいいかしら?」

「あ、うん、ありがと」

 久しぶりに来るおばあちゃんの家。

何故かソワソワしてしまう。

「はい、どうぞ」

 温かい紅茶を飲むと、良い香りがパッと口の中に広がる。

甘さの中にある爽やかさが、モヤモヤした気分を晴らしていく感じがした。

「さてルージュ、今日はどうしたのかしら」

 おばあちゃんが優しく問いかける。

 ……あれ、私、どうして来たんだっけ?

確かじっとしていられなくなって、それで――――

「……春が待ち遠しいの」

「あら、まだまだ先ね」

「春になったら会える人がいるの」

「……それは楽しみね。待っていると長いけど、何かに集中すると次の季節なんてあっという間よ」

「ならパイの練習でもしていようかな……」

「そんなに気になるなんて、一体どんな人なのかしら」

「えっとね……口が悪いんだけど、いつも私を守ってくれるの! パイを作ると、美味しいって食べてくれてね! あと、瞳が緑色で、髪が銀色で、それで……」

 ここで私の言葉は勢いを失った。

「それで……お、狼族……で、暮らしているの……」

 自分の言葉でハッとする。

 ————彼を好きになっても、一緒にいられるの?

 湧き出る疑問に戸惑いを隠せなくなる。

 そんな私におばあちゃんは優しく言った。

「ルージュ、本当に好きならその気持ちを大切にして……堂々としてなさい」

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