第14話 彼は一体? -2-

「人間なんかにオレらは興味ねぇよ。中途半端なお前にはぴったりだな」

「オレがこいつと居たいから居るだけ。お前らにバカにされる覚えはねぇよ」

「もうすぐ冬だぞ? 女に気を取られてていいのか?」

 嘲る声に対し、王子様は小さく溜息をついた。

「……お前らこそ、油売ってていいのか? 暇なんだな」

次は王子様が黒い笑みを浮かべる。

「……っち、純血じゃないくせに生意気な奴」

 捨てゼリフを残し、彼らは森へ消えて行った。

「……王子様?」

 今のやり取りが気になり、彼を見上げると、彼は私の頭に手をのせた。

「オレの父さん、狼族なんだ。母さんは人間」

 彼が言葉を紡ぐ。聞き逃すことがないよう、話しに集中する。

「オレは父さんと狼族の村で住んでる。母さんは狂犬病で……」

 声が震えてる。表情を見ようにも、手で上手く顔を上げることができない。

「村で純血じゃないのは、オレだけなんだ。でも、それを恥じたことは一度もない」

 彼は凛としてそう言った。

「……もうすぐ冬が来る。今以上に狩りが大変になる。狼になれないオレも手伝わなくちゃならない」

 のせられていた手が離れる。

 私は顔を上げた。

「だからルージュ、春まで会えない」

 そう言った彼は、切なく淡い笑みを浮かべていた。



――――――その日を境に、彼の姿をみることはなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る