第12話 森の奥へ -2-

 彼は来た道を戻っていく。その背中は大きくて何故か安心した。

……彼のこと、もっと知りたい。


「ねぇ王子様? どうして瞳の色は緑なの?」

「オレ、ハーフみたいなやつだから。母親の遺伝」

「どうして髪は銀色なの?」

「元々こうだから気にしたことねぇ」

「どうしていつもフードを被ってるの?」

「大きい耳を隠したいからな」

「だからいつも、私の小さな声が聞こえるの?」

「そうかもな。オレ、耳良いから」

「どうしていつも、花畑にいるの?」

「あそこにいねぇと、お前に会えねぇだろ?」

「なになに、そんなに私に会いたかったの?」

「そりゃ……10年前の笑顔が忘れられてないからな」

「……!! やっぱり覚えてたの?」

「当り前だろ? そんな簡単に忘れられるかよ」

「王子様はやっぱり王子様だったんだ!」

「バカ、苦しい」

 嬉しさのあまり、彼の首周りに回していた腕に力を入れてしまった。

「明日は何しよっか」

「花畑でゴロゴロしようぜ」

「明後日は? その次の日は? あ、もうすぐ冬になるね。そしたら雪が降るから、2人でそれを見て……。マフラー、2人で1つ着けたりして」

 想像を溢れさせて、にんまりする。

「楽しそうだな、1人で」

「うん、これからが楽しみ! 王子様は?」

「オレに話を振るなよ」

「照れてるの~?」

「バーカ」

 1人で浮かれて気付かなかった。

彼の寂しそうな表情に。

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