第6話 王子様は約束を守らない? -1-

「……こんにちは」

「ルージュ、待ってたよ。いらっしゃい」

 おばあちゃんの家に着きノックをすると、扉を開けてくれる。そこから私は、ヒョコっと顔を覗かせる。そして、温かい笑顔で迎え入れてくれる。

「調子はどう?」

「心配ありがとね。昨日一日休んだら、もうすっかり」

「それなら良かった」

「さて、おもてなしをさせておくれ」

 そう言うとおばあちゃんは、イスを引いてくれた。そこに座ると、今度は紅茶を淹れていれる。

「ありがとう。あ、今日はね、私が作ったの!」

 私は持って来たバスケットから、パンプキンパイを1つ取り出した。

「まぁ、ルージュが! きっと美味しいわね」

「……そうだといいなぁ」

 バスケットに残る、もう1つの不格好なパイを見て肩を落とす。

 ――――何でいなかったんだろう。

 約束の時間、約束の場所。そこに彼はいなかった。

昨日舞い上がってた分、落ち込みも激しい。

「どうしたの、元気がないようだけど……」

 おばあちゃんが心配そうに私を見る。

「あ、そんなことないよ!」

「嘘おっしゃい、昨日の笑顔はどこへいったのかしら? 何があったのかは分からないけど、私はいつでもあなたの味方よ? 辛いことがあったら、もちろん助けるわ」

「じゃあ、辛くてしかたがないとき、話し、聞いてもらっていいかな?」

「当り前よ。話したくなったら、いつでもいらっしゃい。大歓迎よ」

「ありがと……」

 おばあちゃんの言葉に、これ以上の言葉は見つからなかった。 

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