第5話 運命の出逢い -2-
「おばあちゃん、いる?」
目的の場所へ着くと、私は扉をノックする。
「その声……ルージュかい?」
音に反応して、おばあちゃんが私の名前を呼びながら、出迎えてくれた。
「久しぶりね、いらっしゃい。大きくなったわね」
「やっと15歳! 来年からは高等部に通うの!」
話しを聞いてくれるおばあちゃんは、いつでも温かい。だから、胸がほっこりとする。
そんなおばあちゃんは、この村の獣医だ。やっぱりこの温かさに、動物たちも癒されてるんじゃないかな。
「もう高等部なのね、早いわねぇ」
しみじみとそう言ったかと思ったら、おばあちゃんは数回咳き込んだ。
「風邪?」
「そうかしらね、少し前から体調が良くなくって。……あら? この香り、アップルパイ?」
「そうだけど、調子良くないなら、今日は休んで?」
「でも折角来てくれたんだもの、おもてなしくらいしたいわ」
「それは風邪が治ったらお願い。また来るからさ」
私はベッドへ行くように促す。
「アップルパイ、置いてくね。また明日、来るね」
「そう? なら、甘えちゃおうかしら。気を付けて帰るのよ」
「うん! お大事にね」
おばあちゃんがベッドに入るのを見届け、私は家を出る。
外へ出ると、西日はオレンジ色に輝いていた。
――――狼族が狩りを始めるから。
お母さんの言葉を思い出し、私は急いで帰り始めた。
帰り道で王子様に会えるかな、なんて思っていたけれど、花畑には人影はなかった。
*****
「ただいま」
「おかえりなさい」
家に着いたのは夕方5時過ぎ。
私は一直線にリビングへ行く。
「ルージュ、おかえりなさい」
「うん、ただいま」
ソファではお父さんが雑誌、"今月の狩人"を読んでいた。
お父さんは腕の立つ狩人だ。仕事は日が暮れるまでだから、自然と帰りも早くなる。
「さて、ご飯ができたから」
その一声で、私たちはダイニングのテーブルへ向かった。
いつもの所に座り、今夜も家族団欒で食事をする。
「あのねお母さん、おばあちゃん風邪気味だったから、明日お見舞い行くね」
「そう、分かったわ」
「隣町へ行っていたのか?」
お父さんは私の方を向いて聞いてきた。
「そうだよ」
「ルージュ、この時期は狼族が夜、狩りを始める。早く帰って来るようにな」
「分かってるって」
両親とも同じことを言うもんだから、耳にタコができそうだ。
……そうだ、お見舞いといえば。
「お母さん、明日何かパイを焼きたいんだけど――――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます