第4話

 木曜日



仕事から帰ってニュースの時間になると、今まで以上に真剣に興味深くニュースを見るようになった。


理由はもちろん、例の大量殺人だ。


警察の発表は前回とほぼ、と言うよりも全く同じだった。


殺された人の数は修正されることなく十五人のまま。


それだけの数の人間を、犯人は三十分足らずで殺している。


この三十分という時間は最大値のもので、実際はそれよりも短い可能性が高いのだ。


死因も全て撲殺だった。


「あいつよ」


「だろうね」


そこで前からの疑問が再び頭をもたげてきた。


「ところで、なんでろくに抵抗もせず、一人も逃げ出せずに、みんなおとなしく殺されているんだろうか?」


「簡単よ。あいつが強いからよ」


「強い?」


「そう。みんな逃げる暇も抵抗する暇も叫ぶ暇すらなくて、あっと言う間に殺されているわ」


「まるで見てきたような言い方だな」


「見てないわよ。そこにいなかったし。でも私にはわかるの」


「そうか……」


突込みどころは満載だったが、俺は何も言わずに戦略的撤退をすることにした。


でも美里の話の中に、気になる単語が出てきた。


それは強いという単語だった。


――強いか……。いったいどれだけ強いんだ。

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