02裏:為替の動き 2日目
やばい。
株がいなくなった(´・ω・`; )
ついこの間会ったばかりだってのに……。
事が判明したのは翌々日のことだった。
なかなか帰ってこない株に怒り心頭の探偵会社から連絡がきた。株が帰ってこない。そちらの依頼は終了してるよな?って……。
ここら辺で、私とあいつの関係について明らかにしといた方が良いかもしれない。私とあいつは俗に言う幼馴染みというやつだ。その腐れ縁のせいか、たびたび会ったりなんかもしてるのだけれど。そもそも、私はあいつのことがだいっっきらいだ!…………いや、7%くらいは好きかもしれない。同じマンホールを愛するマホラー(?)として、少なからず親近感を感じるのはさすがに否定できない。
それに対してヤツは、私のことを好いているらしいのだ。まるで意味がわからない。なんなの?毎日マンホールの蓋作ってるような女のどこが良いわけよ!?マンホールって、「man」「hole」つまり男の穴って意味なのよ!?(※違います)……というか、もし私がマンホールの蓋職人じゃなけりゃあ、絶対にあいつにとって私なんてどうでもいい存在だったんでしょうに……。なんか複雑な気持ち。べ、別にどう思われてたっていいんだけどね!
……そうは言っても、やっぱり責任を感じるのも事実。なんといっても、あいつの会社の人が警察に捜索願を出した瞬間、私が一番の容疑者になってしまう。それだけは避けたい。なにより、あいつのせいで捕まりたくなんかない。
だ、だから、なんとしてでもあいつを見つけなくてはいけない。べ、別にあいつが心配だからってわけじゃない。あくまでも、私は自分の安全安心な生活を守るために立ち上がるの。
断じてあいつのためではない!!
とりあえず、私の工場内をくまなく探すことにした。どこかに隠れてるかもしれないし、ストーカーのような存在と化している可能性だって大きい。
そう考えると、凄まじい寒気と吐き気がする。
****************
やはり、というべきか。あいつは工場内のどこにもいなかった。と、なれば、ここから逃げ帰る途中で事故にでも遭ったのだろうか。さすがにあいつのことだから死んでないとは思うのだけれど……。
そんな折、私はひとつ思い付いたことがあった。
すなわち、マンホールの蓋づくりである。
**************
~side FX~
……我が主はまたマンホールを作り始めたらしい。そんなにあの男が消えたことが寂しいのだろうか。だとしたら、その渦中にマンホールの蓋など作ってる場合ではないだろうに。なにをやっているのだ我が主は……。罪悪感が微塵もないと言えば、嘘になってしまう。あの男に悪いとは1nmも思わないが、我が主を悲しませるようなことをしてしまったという事実は少々くるものがある。
まあ過ぎたことだ、仕方ない。
なにより、亜空間から生還できる可能性は0に等しい。
我が主には本当に申し訳ないが、あの男のことは諦めていただくしかなさそうだ。
私が過去にこの能力を使ったのは、たったの三回だ。
一回目は、侵入してきた泥棒に対して。
二回目は、*****に対して。
そして三回目は、あの男――株、と言ったか。
どうやら私の能力は、マンホールを亜空間へ繋げる力のようなのだ。いや、本当にまったくもって使えない能力だ。
……今まで考えたことはなかったが、もし、仮に精神生命体が向こうへ行くとどうなるのだろうか。元々精神生命体というものは向こうの世界で誕生してこちらへと来るするはず……と、いうことは、やはりその逆も可能なのではなかろうか。
まあハイリスクすぎるか、さすがに。
******************
ふぅーやっと今日のノルマ達成!いやー疲れた疲れた。
そして。
ひとつ思い当たる節があった私は、私の別人格に手紙を書くことにした。いや、今までも書いたことはあったんだけれど、ぜんぶ返信なしで……。でも、もしかしたら、わんちゃん、私の別人格があいつの居場所を知ってるかもしれない。
というわけで、ノルマは終わってしまったのだけれど、シャーペンと手紙を持って作業場へとやってきた。
さて、と。
頼みますよ、もう一人の私!
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~side FX~
……と、いうわけで本日二度目の登場というわけなのですが。
無心でマンホールの蓋をこしらえつつ、手紙が置いてあるほうを見る。……今までの手紙は、すべて目を通していない。というより、読むことができなかった。私の発現条件は、『宿主がマンホールの蓋を作っているとき』のみだ。手紙を読む、ということは、封を開けるために一度マンホールの蓋を作る手を止めなければならない。そしてその瞬間、我が主の意識に戻ってしまうというわけだ。
しかしながら。
However.
今回は、手紙は封に入っていなかった。というか、なぜ今まで入れていたのだろうか……。お陰さまで、作業をしつつ、その手紙を読むことができたのだ。
『はいけい もうひとりのわたしへ
いま、とってもこまってます。
かぶ、というばかがきえうせました。
なにかしりませんか?
おへんじください。
かわせより』
……すべて平仮名とは恐れ入った。
どうやら、我が主は、漢字も書けない相当のおバカさんらしい。
私は、片手でマンホールの蓋を作りつつもう片方の手で手紙を書くという暴挙に打ってでた。
もちろん、我が主に読めるようにすべて平仮名で。
たったひとこと。
真実を伝えることにしたのだ。
『あのおとこは、もうこのせかいにはいません』
と。
to be continue.....?
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