第五夜 夢の中ぐらい夢を見させてほしい


 私は丸テーブルの上に置かれた紙に両手をかざし踏ん張っていた。


「ふんぬっ! ふんぬっ! ふっ! 」


 トイレかな? という掛け声をかけながら力を込める。紙はA3ケント紙だ。


「ふーっ! ふっ! ぬっ!!」


 紙を囲んでいろんな方向に反復横飛びしながら力を掛け続ける。一切巫山戯ていない。至って真剣だ。


「ふんぬっ!!」


 じわじわっと紙がさざめき、ふわりと1センチ、いや2センチ浮かんだ!


「よ、よっしゃあああ!」


 ガッツポーズをとった瞬間紙はスン、と元に戻った。




 目が覚めた。


(夢の中ぐらいもっと楽に魔法が使いたかった……)

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