Episode2 逃亡
「はぁ……はぁ……」
「ちょっとあんた待ちなさい! なに逃げようとしてんの!」
赤く光り輝く赤いサイレン。ブーブーと鳴り響くうるさい音。
手首にまかれた何かを外しながら廊下をかけていく。
後ろから追いかけてくる、見るからに理系女子の研究員がうっとうしい。
やっと研究所から出られたものの、ここはある大学の研究所。
門までの道のりが長い。そもそも門がどこにあるのかわからない。
仕方なく知りもしない道を、とりあえずかけていった。
それでも後ろの女はずっと追いかけに来ている。
「いたっ!」
足首が変な方向に曲げられ、ようやく自分がハイヒールを履いていたことに気が付いた。
急いでヒールを脱いだが、
「捕まえたわよ……!」
女に手をつかまれた。
「はなして。実験は成功したじゃない!」
「いいえ、まだ副作用が調べられていないわ」
強引につかまっている手をほどこうとしても、見た目に合わず研究員の握力が強すぎて逃げられない。
「副作用なんてないわよ。あの子が作ったんだから」
「そ、そうだけど……彼にあなたをまだ自由にしてはいけないと言われているの」
あの子のたくらみは薄々気づいていた。私を自由から手放そうとしている。
「彼言ってたわよ。許さな――」
バコン!
無意識だった。つかまれていた腕は解放された。
だけど、手に持っていたハイヒールの先には、赤い液体が――。
「こ、これはあの子のせいよ……」
石ころが私の足を痛めるも、急いでその場から離れた。
👠
それは、あるチラシを見て始まった。
『この世で先に若返るのはあなた! 実験台になった方には100万円プレゼント!』
そうデカデカと書かれていた。
こんな怪しいもの、真に受ける訳ない、と思うが、年金生活だけでは生きていけなかった私には最高のチャンスだった。
大企業のHidakaが募集していることもあって、信頼性は少しだけあった。
そのチラシを見てから数週間、弱々しくなった足を運んで、Hidaka本社の目の前についた。
きれいなスーツを身にまとった若者たちが歩く中、浮き彫りにされた私は本能に場違いだった。
受付へ行った時も、幽霊を見たかのような目で出迎えられた。
その後、白衣を着た女性に呼ばれ、若返り薬を研究している建物まで案内された。
実験をするにあたっての説明や注意事故などを長々と話されたがそんなことどうでもいい。
私は早く若返って、人生をやり直したい。
「注意事項はこれで全部ですね。それでは早速始めましょう」
廊下を通り過ぎ、研究所の扉があく。
「リーダー、連れてきました」
やばい。
実験が終わるまで、私の頭の中はその言葉しか浮かばなかった。
実験中の記憶もあいまいで、ただ覚えているのはリーダーと呼ばれた男に「許さない」と言われたこと。
実験が終わった瞬間、私は研究所を出て行ったこと。
ただ、それだけ――――
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