第31話 最強の敵現る

時は少し遡り帝都


「帝、考え直そうよ!今行ってどうなるのよ、ナーナの事もあるし」



「解っております、でもナーナが私の身代わりになってくれたのは、私が無事に天空人様とお逢いできる様に取り計らってくれた為、それなのに……」


「だからこそよ、今……」



「帝、急ぎご報告が」

女官が慌てた様に叫ぶ



「お入りなさい」



「は!失礼致します!帝、ナーナ様救出成功、ですが追ってがかかっているご様子、セレスティア様より至急援軍のご要請が」


「本当ですか?して敵の数は?」


「およそ騎馬兵500」


「では久美、大至急部隊編成を!私自ら迎えに行きます。

デルよりの街道であれば途中天空人様とお逢いできる可能性も有りますから」


「わかったわ、30分頂戴、そろそろだろうと思って待機させてあったから」



「数は?」



「300よ、途中エルドワーグ侯爵軍と合流して500」



「流石です、十分ですね」


ーーーーーー



皇邸中庭には久美大将軍率いる300もの兵が詰めかけていた。陣営は帝を旗頭に久美大将軍、ラムダ将軍、そして速度を重視する為に騎馬隊300のみの陣営だ。


「ラムダ将軍、帝のご登壇よ!御幡を」



「御意!、錦の御旗を起てよ!帝のご登壇!」


オォォォォォォォ!御幡だーーー!


錦の御幡は天皇の軍である事を象徴する為に、日本ではつい最近まで、〈明治維新〉使われていた象徴旗だ、詰りこれに弓を引くものは国賊となり、この旗の本に闘う者は正義の軍となる。




「我が精鋭達よ、よくお集まりくださいました。

敵は今デル街道を南下、我が帝都へ進軍中です。

ですがこの者達は、皆さま方精鋭と戦おうとする者達ではございません。

皆さま方もご存知の通り、約10年前、我と間違え妹のナーナを誘拐した、卑劣なる裏切り者ベスティアです!

何度も奪還を試みましたが、ついに奪還に成功。

かの者よりナーナを救い出した近衛師団が、今あの不埒者に追ってを差し向けられております。

何としてもナーナと近衛師団を救わねばなりません!

精鋭達よ、恐れることはありません‼

天より与えられしラ.ムーの精鋭たる皆の者よ!その御幡が正義の軍勢たる証‼いざ出陣です!」


オォォォォォォ‼


「久美大将軍、号令を」


久美は剣を抜き高く振り上げる、左右に別れた兵達の間を通り



「御意、開門!帝の出陣だ、前へーーーーー!」





ーーーーーーー


健達



「何か事故でも合ったのでしょうか?」


「なんか手ちがいで意思を伝えられなかったとかじゃない?」


「その様な失敗をするような姉上ではございません。

まして私に出来た事が、姉上が出来ないわけございません。」


「ナーナも誰かの元へ魂飛ばしを?」



「はい、私の運命の御方は久美と言う天空人様です!今は帝都にいるはずですわ」


馬車にセレスティアが来た


「ナーナ様、追っ手が来てしまいます、おいそぎを」



「追って?誰かに追われてんのか?」



「健殿、助けて頂き未だお礼も出来ていない状態で、このようなお願いをするのは、虫がいいお話しだと解っております。

ですが、敢えてお頼み申し上げます!ナーナ様をお助け頂きたい」



「とりあえず俺達も帝都へ行く途中だ、ついてくから話してみろよ」



健はこの後直ぐに思い出した……


待てよ?俺が帝の運命の人?そして帝はあの時いた超絶美人、そしてナーナと双子。

ナーナは16才位、最高のスタイル、そして……そして……そして……

俺は……帝の、、トイレ盗撮の、の、脅しを……か、け、て、い、る、、、、、


ヤベーじゃねーかー!マジイじゃねーか

こうなったら久美が暗号を解かない事を祈るしかねー


そして俺達はナーナと共に帝都へ向かった。

俺はナーナの馬車に乗り、ナーナとセレスティアから話を聞いていた


「ちょっと待てよ……んじゃ何か?ナーナは陛下の身代わりで誘拐されたってのか?」


「はい、誘拐の情報は掴んでおりましたから……」


「防ぐ事は出来なかったのか……でも何でそいつらは陛下を誘拐なんて大それた事を?」


「レムリアと通じていたんです、そしてレムリアは、私が久美を召喚したと思い込んでいるんです。

又お姉様が幼少より、早く健様と会いたいと、何度も申されていた事も、彼らは知っていました」


「つまり俺を召喚されたら困るから、陛下を誘拐したって事か」



「はい、お姉様の夢見が健様転移の日が近いと……だから私は御姉様と内密にすり代わり、帝として過ごしました。

お姉様は危険だからと何度も反対されたのですが……でもあんなに健様と早く会いたいと何度も申しておられたんです。

何としても成功させてあげたかった」


「そんな陛下の想いをナーナの想いを……それを知っててそのベスティアって奴は、レムリアでの厚遇欲しさに陛下誘拐を実行したのか……

そして間違いに気ずいて尚、ナーナを返さず、更にナーナを人質にして陛下に召喚を辞める様に……」



「何度も召喚では無い事をお話ししたのですが、聞く耳を持っていただけまでんでした」



「どちらでも良かったのでしょう、召喚でなくても魂飛ばしを失敗させてしまえば、健殿は何も解らずにこの世界へと転移する、あわよくばレムリアに招待出来る……その実績さえ有ればレムリアへの恩を売る事が出来ます」



「ムカつくぜ……セコい手使いやがって……幼い子供の純水な想いを、テメーの出世欲で汚しやがって」


その時セフィリアが飛び込んで来た


「追ってです!追ってが追い付いて来ました‼」




セフィリアは馬車から飛び降りようと立ちあがり

「ここは我らが何としても抑えます、ナーナ様と健様はお逃げ下さい!」


「もう良いでしょう、健様が姉上の所にさえたどり着ければ、、、

私を差し出して下さい、皆の命も懇願致します!」



「何を申されます、諦めてはなりません」



「子供は黙って中にいろ!セレスティアもここにいろ!……直ぐに馬車を停めろ‼」



「健様何を……え⁉」


ナーナは怯えた、ヒュドラと戦った時でさえひょうきんな態度を屑さなかった健が、今は修羅の様な形相をしていたからだ。


健は本気で怒っていた、だが何に対してかと問われればそれは自分に対してだった。

これは完全に八つ当たりだ。

何故帝の気持ちを少しでも解ってあげられなかったのか?

峠で見た帝はとても美しい笑顔だった、神々しかった。

あれほど美しい物がこの世に、いや、元の世界にも存在しただろうか?否だ!

あれは健に向けられた笑顔だったのだ。

幼少の頃より自分に会いたいと常に言っていた、幼少の頃ならこの世界で何年自分の事を想い続けてくれたのか……

自分が帝に対してした事は何だった!

そう思うと健は暴れたくて仕方なかった。

つまり……敵は健の鬱憤晴らしの材料にされるのだった……


健は馬車から降りて


「お前達はここで待ってろ、奴等は俺がぶっ殺す」


「健殿!お待ちを我らも一緒に、ひぃ……」


「待っていろと言ったぞ?」


「はっ、、、はい……」


セフィリアもセレスティアも健の気迫に逆らえない


「まさかお一人で行かれるおつもりではありませんよね?」


「駄目だ!ラフィーネ」


リーアとアンナも健の前に来る、そして……


「聞けません」


「同じく」


「駄目だと言っている」


「聞けませんと言いました」



「勝手にしろ!」



「かしこまりました、ラフィーネ リーア、参りましょう」


走りだす健達


追いすがりにルチルから有り難い情報が入った

「敵は多分騎馬です、500人位います、必ず帰って来てください」



「当たり前だ」


健はサムズアップして答える、歯は光らなかったが、ニコチンで真っ黒になった汚い前歯が剥き出しになる……

マナよ、どうせなら歯も綺麗に置き換えてくれ



「いいか、もし前にジャーリア達がいたら全力で無視しろ!数が多い、敵の大勝のみぶっ殺す。

騎馬隊で向かって来る奴は殺しても構わねーが、時間がかかりそうなら動けねー程度で後は無視だ!いいな?」



「解りました、最善です」

走りながらアンナが答えた


そして見つけた

「あれだな」

小高い山から敵の左横面にて敵を見下ろす


リーアがその遠目を生かして

「同族は居ない様です、騎馬隊のみ、中心に大将とおぼしき敵将、紫の鎧です、左右に子供?女の子?1人、若い女将が1人付いています」



「おあつらえ向きだ、半分程度は吹っ飛ばす」



モンスーン、、、アトリ、ビュート、ルドラ!


急激な暴風が吹き荒れ、巨大な咆哮が轟音の様に鳴り響く、巨大な矢が表れ敵部隊の全面に突き刺さり

ドガーン‼

敵の半分は文字通り吹っ飛んだ、敵は混乱していた。


「行くぞ!」


健達が一斉に駆け出す



「体制を立て直せー、敵は少数とは言え近衛師団何だぞ、敵はもう近いんだー」



「これは久美の攻撃だー!こんな化けものじみた魔法、天空人以外居るものかー。殺されるよりマシダ!俺は逃げるぞー」


「落ち着け!これは久美ではない、久美は帝都だ!」



「残念だったな、久美じゃねーけど天空人だ!テメーは死ね‼」


健の剣が将軍の首を飛ばす……寸前に何処からか剣を防がれる


「死にてーのか?テメー」


「死にたくはないなー、でもナーナは捕まえたいからー、邪魔はさせてほしーなー」



「なんだテメー?」


それはリーアが先程言った…………子供……男の子だった


「やっぱり天空人は面白いしゃべり方するんだねー」


閉まりのないしゃべり方でケタケタ笑っている


「でもさー普通、人に名前聞く前に自分が名乗らな~い?」


「俺か?俺は……タキ○ード仮面様だ」


「タキ○ード仮面様?」


「そうだ!名字がタキ○ード名前が仮面様だ」


「そうなんだー代わった名前だね~」


「次はおまえの番だろ」



「そうだね~じゃぁ名乗るよ~!

僕はねー、アスラの1人リグって言うんだよー」



「足臭の一人ピグ?なんぞそれ?」

健には本当にそう聞こえた、耳くそホジレ



「アハハハハ、面白いねー君、殺すのはちょっとおしーなー」


「出来ると思ってんのか?」


「出来るよ~、これでねー」



「嘘?マジかよ!あれって宝貝?」


「よく知ってるねー仮面様君ーじゃぁこれの名前も知ってるかなー」



「乾坤圏だろ?んなヤバイもんどうしたんだよ!てかそれ本物か?」



「どうしたって言われてもーこれ最初から僕んだしー、本物かよって言われてもーこれに偽物あるなんてきいた事ないよー」


と言って投げるリグ、乾坤圏は伝承どうり立て回転しながら上下にぶれる


「もひとつ行くよーじゃぁさよならー仮面君ー」


「なめんなよ!何がさよならーだよこの男女!」


健は乾坤圏を飛び越えリグに向かって走りだす、若干腕が切れたが後でアンナに治して貰えばいい。

当然乾坤圏は健に向かって追いかけてくる、健はリグの股下をスライディング


「面白い避けかただけどー、舐めてるのは君かなー、そんな避けかた僕知ってるよ~」


「だろうな、定番だし……でもこんなのは知らないだろ?」



ザク‼

「うぉわ!……ぐふっ!!」



「…………知らなかったねー、でも僕怒っちゃったよー」



健は敵将軍を楯にして乾坤圏を避けていた、、、と言うか、乾坤圏に将軍を突き刺した、そして乾坤圏は今健の手にある


「ほう!間抜け面のお前でもそんな顔出来んのか、来いよ、殺してやるから、男女」



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る