第25話 罠

「そろそろヴェルダの町よー‼今日はここで一泊ね!」


セリナからそんな声がかかった時



「気おつけて下さい!大きな魔力を感じます‼」


「方向を言いなさいルチル、それだけでは解りません‼」


「ごめんなさいアンナさん、右前方!」



「リーアはここで牽制、ラフィーネは私と迎え撃ちます。健様は皆の側で護衛を」


てきぱきと指示を出すアンナ


「あれね、大きいわ!」


ラフィーネが指差す方向を見た俺は

「モスラ、なんじゃありゃ!蛾じゃねーか!キモイはー」



「モス、アトラスです、近接戦闘は避けましょう、あの羽の粉を吸い込むと全ての感覚が麻痺します、リーア、こちらを襲って来たら即仕掛けます、あの頭の先に突いている触覚を狙いなさい!」


「解りました」


「健様は私と火魔法をただ、あまり強すぎると粉を周辺に撒き散らしてしまいますので」



「焼き加減はレアってとこか」



「来ます!放ちますよ」


リーアの弓が風切り音をたてながら飛翔した、正確に右触覚を貫く


「もう一発‼」



シュルルル!



今度は完全に触覚を吹き飛ばす


「おかーさんスゴーイ」



セナが歓喜の声を上げる、モスアトラスはその場で傾きながらバタバタと羽を動かすだけで前進できなくなったらしい


「健様!今です」


俺はアンナと供に飛び出す



「さーて、制御の完ぺきになった俺のフォルムを食らいやがれ!バジュラ」


両サイドから俺とアンナの火魔法を食らったモスアトラスは黒焦げになって堕ちてきた

ドーン!


「通常は焼き払うのですが、このモスアトラスは有毒ですので街に連絡をすれば処理に人を派遣してくれます、とりあえずは放置です」







エルドワーグ侯爵領ヴェルダ。

ラ.ムーの中心都市で、帝都に次ぐ大きな町だ。

ここは各町に行くための、言わばハブ都市となっている為、自然と栄えて来た。

当然商業で繁栄していて、この町で手に入らない物は無いとまで言われている。



門兵の身元確認も順調に終わり、町へと入って行く、ラフィーネより


「私たちが入れる宿はあるのですか?無さそうならジャーリアの部落を探しますが?」



「駄目に決まっているだろ!全員一緒に泊まるんだ!」

そんなもん俺のトマホークが許さない‼




「私の妹がやっている宿屋があるから、ちょっと掛け合ってくるわね!そこの広場で待っててね」


「頼んだぞ‼セリナ」



この町に入ってから俺は何となく視線を感じている、気のせいかもしれないが、、、

服はこの世界の物に変えたんが、まあこれだけジャーリアを連れてるんだ、目立って当然か……

広場にもそこかしこに露店が出ている、明日少し見てから出発するのも良いかもな



「ミーシャ!そんなとこに立ってたらお店の人の邪魔でしょ!」


セナに注意される叔母



「でもこれ美味しそう……」



「邪魔だ邪魔だ!汚ねージャーリアが近くにいたら売れなくなっちまうだろ!」



ジャキーン!「ペガ○ス!流○拳‼」

15発はヒットした



「俺の女があんだってぇぇ?聞こえねーなー!もう一度言ってみろやゴルァァァ!」


「びっ!びえ、お嬢ざんにおびどつざじ上げようがどぼもいやじて……」

鼻血を滴ながら片手で口を抑え、串団子を持つ店主


「そうかそうか、なら7つだ」



「え?」



「そこに後6人いる、みんな俺の可愛い女達だ‼差別はいけねーよな?オヤジ……そう思わねーか‼?」


肩を組ながら店主に人道を説く俺




「おじさんありがとう♪」

「ありがとうございます」


「ミーシャもルチルも礼儀正しくて宜しい!なあ親父?」


店主が鼻血を滴ながらお礼を受けていると、団子を持ちながらラフィーネ達が


「本当にすいません、すいません、すいません」



「はー……」

呆れるアンナとシエラ



俺がカツアゲを終えた直後セリナが戻って来た


「お待たせ、大丈夫ですよ!ジャーリア5人、全て泊まれるそうです」



「でかしたぞ!」



俺達は早速その宿に向かった



【セルマの宿3号店】


「おい……セリナ……何の冗談だ?」



「あれ?言ってませんでしたっけ?私セルマの姉なんですよ」



「聞いてねぇ、これっぽっちも聞いてねぇ!テメーラグルか?なんかたくらんでねーか?」



「嫌ですよ~そんな事あるわけ無いじゃないですか~」



「むっちゃくちゃ怪しいんですけど?特にその言いっプリが‼」



「そんな小姑みたいに細かい事言ってると、ハゲますよ?ハゲますよ?ハゲますよ?ハゲますよ?」



実際には1回しか言ってないのだろうが……俺にはそう聞こえた。



「殺す、ゼッテー殺す、4回は殺す」



「落ち着いて、健様、落ち着いて」



禁句だ、俺には言ってはいけない禁句をセリナは遂に言ってしまった、リーア達に押さえられながら俺がもがいてると、セリナは鼻歌まじりに奥の方へに行ってしまった……

『あの女、仕返しは必ずしてやんぞー!』

そう俺は誓いを立てた

そしてセリナは妹を連れて戻って来た


「紹介しますね!妹のセーラです」



「初めまして、この宿の女将をやっております、セーラです、本日は長旅ご苦労様でした、今日はゆっくり休んでくださいね!」



その女将は若女将で、歳の頃30手前位の美人だった、セルマさんの妹らしいが、似なくて良かったね!


「セーラはこの町の豪商と結婚を控えてるんですよ!」


「ちょっと姉さん、こんなとこで言わなくても……」




「そりゃおめでとー」(棒)



こんな美人が、だれぞのそれをくわえるのか……

勿体ない事だ……

と意味不明の嘆きを入れてしまった

俺達は部屋に案内されている途中でセーラに宿の案内を受けていた


「この宿の売りはお風呂なんですよ、特に露天風呂は景色もよく1日じゅう何時でも入れますのでお気軽に入ってくださいね」



『露店か~、24時間入れるなんて最高だな』



俺達はまず風呂に浸かった、勿論俺はあらゆる確認作業を怠らない、これも整備士と言う特殊な職業故の嵯峨さがだろう……


「よし!この岩場に登れば女風呂が丸見えだ!そしてこちらにはライトの魔法が無い、つまり向こうは明るくこちらは暗がり……覗けと指示が出ている様な物だな……」



とりあえず今は実行段階には早い、まだ若干明るいしな……



俺は風呂から上がり部屋に戻って来た


「随分長かったんですね?もうすぐ夕食見たいですよ?」

シエラは濡れた髪を布地で拭きながらいう、、、色っぽい……


「そりゃ入念なチェック……いや良い風呂だったからな」



飯を食う、一休みする、7人纏めてキャノンをふるう。

今は18時30分、全て終わるのは約11時頃だろう、その時間には恐らくこの世界の人間だと就寝時間だ、その時間は女中達が風呂に入る。

タイムスケジュールは完璧だ、俺の計画に隙は無い……



そして全員を足腰立たなくして俺は風呂に向かった、まず確認済みの岩場によじ登る、やはり思った通りだ‼ここは死角、さて誰がいるかな?

だが、残念ながら入っているのは1人しかいなかった。

こうなったらこの1人を舐める様に拝んでやるしかあるまい……


『あっ!あれは‼』


そこにいるのはセーラだった、これは素晴らしい、どうせどこぞの馬の骨にやられる体だ‼

俺に先に見られるのはセーラとしても僥倖だろう……

とやはり意味不明な理論を立てる


その時だった


「何をしているのかな?健君……」



「へっ?……」


俺はキグナス○河のダイヤモンドダストを食らった様にその場で凍りついた


「確かそっちは女風呂だった筈、今はセーラが入浴中だよ?」



俺はギー、と音を立てて後ろを振り返る……

そこにいたのはセルマさんだった。


はまった!これは確実に罠だ‼

俺はこんな原始的な罠にはまってしまったのか!


「いけないなー健君、嫁入り前の女性の裸を覗くなんて、まあとりあえず出て話しをしようか……」


「はい、、、」



ーーーーー


俺は現在万引き犯の様に、従業員控え室でポツンと1人椅子に座らせられている。

目の前には、セルマさんとセリナが仁王立、そしてセーラが俺の後ろに立っていた。



「これでは嫁に出すわけには行きませんね……」

いけしゃあしゃあと言うセリナ


『このバカ女がー!』

だが口には出せない、今は俺がワイセツ罪の容疑者だし……



「私お嫁入り出来なくなってしまったの?」


「健君に責任を取って貰わないといけないかな?」



何も言えない……俺は冷や汗を滝の様に流しながら下を向いている



「健君、この国の法律では嫁入り前の女性に卑猥な行為を働くと、男性と言えど罪になるんだよ」



「ど、、どんな罪に?」



「強制士官だね‼」



これかー!これが狙いかーーーーー‼



「まぁ安心したまえ健君‼天空人は士官すれば高司祭と同等の身分を貰えるし、セーラもレイラも君に嫁にだそうじゃないか、高司祭クラスのジャーリアともなれば、君のジャーリアもかなりの身分を貰えると思うよ?君に取っても良い事ずくめだよ‼ワッハッハ」



くそぅー!、ワッハッハジャネー!この詐欺オヤジがーー!

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