第三章 激闘編

第24話 強敵の気配


現在俺達はグレムからオオギュスタへ向かう街道を歩いている。

馬車を使う様ゲルタ子爵に言われたが、急ぐ旅でも無し、どうやら時間もたんまり在るらしい、それに俺自信がこの世界の事を知るために敢えて徒歩を選んだ。

ただシエラだけは歩けないので馬に乗せている。


子爵にはお礼のしようも無い程世話になった、アンナの希望もあり、もし戦争が始まったら士官する気は無いが、加勢すると話しておいた。


ゲルタのジャーリア達とも仲良くなったし、それに……色々息子の方も世話になったしな、彼女達には死んでほしくない、マイサンもまた世話になりたいと言っている……


しかし……「なぁ……お前ら本当にその服で旅なのか?その服着てないと駄目なのか?」

そうなんだ、セリナを除いて全員あの乳出しメイド服を着ているのだ。


「それは何度もご説明申し上げた筈です、奴隷以下は何か合った場合、その場でのお手伐ちが許されています。

その後はさしたるお取り調べもせずに、無礼伐ち執行……で終わりです。

ですが性奴隷や性玩具の様に、持ち主が確実にいると解っている場合はその限りではありません。ですが、おおやけに性奴隷や性玩具だと解る様にこちらがしていなければ、非はこちらにあり、無礼伐ちが正統とされてしまいます。

その為に必ず胸を露出した服を着るのが習慣になっているんです。

健様も何度も似たような服を着た、他の性奴隷をご覧になられましたでしょ?」


アンナ・・・そこまで言うこと・・・グスン


「そりゃ何度も奥技の世話になったけどさー、俺のを他の男に見せるのは嫌なんだよ……」


「そのお気持ちは大変嬉しいですが、わがままを言わないでくださいね」

ラフィーネに慰められる情けない俺・・


「健様ーミーシャのこれ好きなの~?」


と言って俺の顔に飛び付いて胸をパフパフしてくるミーシャ


「ぐふぉ!」

と言って俺は乳を揉みまくる、道中このやり取りが何度か続いた。


「はー……そろそろお昼の支度よ、ミーシャ」


そうなんだ、セナとミーシャでは、歳は差ほど変わらなくても、形的にはミーシャが叔母になるはずなんだが……

何故かミーシャの方が幼いのだ、育った環境も差ほど変わらなかったと思うんだが……





昼食を食っている俺は、一つの問題を考えていた。


目の前で幸せそうに飯を食っているこのフードファイター達を、どうやって食わして行くかだ。

会計を任されたシエラからも、現在の貯蓄では持って約3ヵ月、子爵からもかなりの路銀を貰っているが、現在のラ.ムーは戦により物価が高騰している。

シエラも頭を悩ませている状態で、どうした物かと相談されていた。



貯蓄と言ってもこの世界に貨幣制度は無い、基本的に指標となるのはやはり金だ。

つまり全ての物は、金これくらいの価値、で決まる。

取引は全て物々交換が基本となる。


俺達は帝都の発行、刻印の入った粒金や粒銀を路銀として渡されている。

一応銅貨みたいな物があり、使おうと思えば使えるが、普通の町での取引には使えない。

曖昧な流通で、換金が出来ない為に、商人が取引に応じてくれないからだ。

使えるのは換金所がある大きな町か、帝都のみだ。





俺は今若干アホな事を考えている。

いや、切実な問題だからまともな事か……

たいした事ではない、この世界の飯があまり美味くないんだ。

理由も簡単だ、この世界全体は解らないが、この国では少なくとも土壌改良の技術が無い。

俺は農業の知識はあまり無いが、その程度の事は解る。

この国で行われているのは混合農業だ。


つまり俺は土壌改良を行って、これから出来る我が家だけの収穫高を上げようと思っている。

土壌改良する為の材料は目の前に揃っている。


江戸時代だったか……人間の排泄物は高値で取引されていた。

もう解るだろう、大量に堆肥たいひを作る、大量に生産する、大量に食わす、大量に出さす、のループだ……


寄生虫や回虫の問題も既に解決済みだ。

確か肥溜めで発酵による殺菌では温度が低く、完全に死滅出来ない!だった筈。

だが以前俺は、メルトとヴァーユの混合フォルムで、魔物をチリ一つ残さず燃やし尽くした。

骨の主成分はリン酸カルシウムだ、融点は1700度位だと記憶している……つまりフォルムでの熱処理殺菌をすればいい。

温度もそこまで上げる必要もない。


勿論そんな事をすれば、付近にはかなりワイルドな臭いが漂う事になるが、おれ自身はヴァーユで臭いを拡散させれば無問題だ、他は知らん……


後はこいつらをどう説得するかだが……

最悪は一喝して言うことを聞かせるしかないな、食糧問題は生死に直結する問題だ、この後ルチルの家族も引きとらなきゃならないんだし……




「なぁルチルちょっと聞きたいんだけどさ?」



「なんですか?健様」



「お前の家族はカーヴァルって街に居るって言ってたけど、オオギュスタからは近いのか?」



「カーヴァル、港町ですね、遠いですよ、しかも革命軍に属しています」



「シエラの言う通り、こちらからでは入れませんね、亡命するしかありません」


「革命戦争が起きる前に私はこちら側に買い取られましたから、でも健様、前にも言いましたが、本当に無理してお救いくださらなくても……それに盾でもう死んでいる可能性もありますし……」




「何度も言わせるなよルチル、次は本気で怒ると俺は言った筈だぞ!」



「はっ!はい、ごめんなさい」



「いいか!みんなにも言っておく、俺はルチルの家族を絶対助け、俺の女にする。これは決定事項だ!変更は無い」




「解っていますよ、そもそも私達だってこうして家族全員で一緒に居られるのは、ルチルのお陰なんです。当然ルチルの家族は救います!」

ラフィーネが当たり前の如くそう言ってくれた



「だよね‼ルチルちゃんの家族はみんなで絶対さがしだそう」



「健様、みんな……ありがとうございます……」



「てっとり早いのは帝軍に一時だけでも属して、カーヴァル領内に潜入するのが一番ですね!あそこは今最大の激戦区です、真っ当な方法では何時までたっても領内に入るのは不可能です」



「成るほどいい案だアンナ、オオギュスタに着いたら、すぐさま向かう。

セリナ、本当にすまないが、その時は頼む。お前の安全は俺が必ず確保する」



「解ってますよ!ルチルちゃんの家族に怪我があれば私が治します」



「ああ、悪いな……」



そうなると益々自給率を高くしなければならないな、ルチルの家族を救いだす為にはカーヴァル迄の旅費も係る。それを考えれば2ヶ月程度しか食費も持たないだろう、シエラやミーシャ、セナはカーヴァル迄の旅に同行させる訳には行かない、その間の食費も置いて行かなきゃならん……


俺の退治やとしての稼ぎがどの程度になるかは解らないが、生産効率を上げた自給は絶対だ。



「所でさ、この中で農業の経験が有るのはいるか?」


「私は無いですねー」


セリナ・・・お前は当たり前だろ!



「私達は全員と言っておきましょうか」



「そりゃすげー」



「私達はジャーリアも奴隷も基本的には服務として農奴をやってます、マムールも普段から毎日戦闘を行う訳ではないですし」



「シエラも有るのか?」



「歩けなくなる前は農奴ですよ!」



「なるほど、その知識は使えるな、なら……俺はオオギュスタに着いたら自前の農作物を作ろうと思ってる、勿論それをやるのはルチル達非戦闘組だが、それでちょっと聞きたいんだが、ここでの農業の方法を教えて欲しいんだ」



そして確認すると、やはり混合農業だった。つまり土壌改良を行えば格段に今より生産効率は上げられる、そこで俺は土壌改良の方法を皆に話したが……



「そんな物健様に食べさせられる訳無いでしょ!!」

怒るリーア・・・



……猛烈に反発されるが、俺も皆の生命を預かる一家の主だ、ここで引くわけには行かない、俺は知る限りの全ての智識を総動員して、土壌改良の必要性を解いた、、、が……

皆の反発は思ったよりも強い、ところが……



「ちょっと待って下さい、健様がそこまで言うとゆう事は、健様の世界ではそれをやっている、又は近代史ではやっていた、のどちらかなんですよね?」


「ああ、近代史でもやっていたし、ここ最近それが見直されつつ有るんだよ、有機栽培と言って内容は少し違うが、似たような物だ。俺のいた世界では化学肥料って物を使ってて、実は毒素が酷かったんだよ」


「ならそれを先に言ってください」



「へ?」



「つまり健様の世界はこの先の未来、そこでやっていたので有れば、実績も有れば体に影響も無い事は立証されているのですよね?」



「そうだよ!だからさっきから問題ないって言ってるじゃないかアンナ!」



「ですから先にそれを言って下さいと言っています。皆が言うのは健様の体に万が一の事が有れば、取り返しのつかない事になるから反対しているのです。もっと天空人である利をお使い下さい。」



俺は皆を見回した、、、全員頷いている……


そして無垢なミーシャの止めが俺に突き刺さった


「天空人様の世界の智識をいくら言われてもー、ミーシャ達はちんぷんかんぷんですー」



俺はまたもや遠くを見つめる



「今日も暑いな……」



ーーーーーーーー


変わって、とある邸宅の牢獄


「ナーナ様、お助けに参上つかまつりました」



「あなたがは?」



「鴉からすでございます、お急ぎを、城の外ではセレスティア様の部隊が待機しております」



「では!お姉さまの?」



「お急ぎください」



「直ぐに!」



ーーーーーーーー


邸宅の1室


「ベスティア侯爵ー!」


「どうした?騒々しい」


「ナーナが、ナーナが脱走致しました‼」


「まことか!」


「は!鴉を見た者がおります、また近衛の者とナーナが合流したとの報告も、如何致しましょう」



「即刻追ってをだせ!数は500、近衛が相手ではレムリアよりの客人にも手伝って貰うとしよう、このベルガより1歩も外へ出してはならん!」


「は!」


ーーーーーーーー


邸宅の貴賓室


「アスラの皆様、お力添えを頼みたい、ナーナが奪還された、我が部隊と供に追撃を」



「僕達アスラ神軍が動く必用あるのかなーー?」



「相手は?」



「近衛の者達だ、腕はラ.ムーでもトップクラス」



「良いでしょう、リグ行きますよ」


「えー……めんどくさいよーミスラ~」



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