第10話 天空人の償い

俺はまた中庭に出ていた

今回ばかりはかなり堪こたえた……


ハサン先生からあの子の事を色々と聞いたんだが……

その内容が俺の想像を遥かに越えていた……

ぶっちゃけ俺は彼女達の祖先の遺伝子改造した奴をタイムスリップしてまで行ってこの手で殺してやりたい気分だ……


俺達は今日この宿にお世話になり、明日は出発しなければならない、ハサン先生やセルマさんはあの子を棄てればいつまでもここに居て良いと言ってくれたが、俺にはそんな真似出来るはずも無い。ハサン先生は俺が気に病む事では無い、と言うがこれは俺達天空人、いや、現代人が背負うべき罪だ。


あの子の事は概ねこうだ。

今から約10万年程前、この世界は一つの国に纏まっていた。そう、このラ.ムーが全ての国を統治していたらしい。

その統治していた者の名は代々の帝、ハイハイ竹内文書よ、あんたは正しかったよ……


だがそこに天空人、所謂現代人が転位か転生かは記録はないがやって来た。

これが記録上初めての天空人来訪だと言う……


そしてこの世界の乱世がはじまる、その天空人はとてつもない技術力と化学力を持って帝軍を全滅に追い込んだらしい。


そしてその後様々な天空人達が来訪、その天空人達は時にはアトランティス軍、時にはレムリア軍、そして時には帝軍に協力したらしい、また今現在帝軍には天空人がいるそうだ。

この天空人は現在強力な魔力を使い、反乱軍を次々と撃退しているとの事、まぁもの好きな奴も居たもんだ。

話が逸れたがこの天空人達の中に、どの軍にも属さず医学発展に勤めた者がいた、約5万年程前に来訪した天空人だ。


この天空人、名前をマイ○ルジャクソンと言うらしい……あぁ勿論嘘だろう、だが、マイ○ルジャクソンは現代人だ、つまり天空人達が転位する時代はランダムと言う事がこれで解る。

さて、この糞ジャクソン、来た当初はこの世界の医学発展にかなり貢献したとの事、ハサン先生に貰った回復魔法の塗り薬もこいつが発明した。

だがこいつは時と共に、化けの皮が剥がれてくる、とんだマッドサイエンティストだった様だ。

この世界には元から奴隷事態存在はしていた。

ぞれでも一定の自由は持っていたとの事、だが事もあろうかそのマッド野郎は自らの欲望の為に、所有していた奴隷に幾度となく人体実験を課していく、それもとんでもない人体実験だ。

自分の分身しか産めない女、つまりこのサイコパス野郎は永遠の命を欲した訳だ。

当然そんなもん成功する筈もない、出来上がったのは男を必要としない、自分自身の分身を産み落とす女、そう、その末裔が彼女達だ。

そのサイコパス野郎、実験に約1000人近い女性を使用したらしい。

その全てが失敗、つまり彼女と同じ境遇の女が1000人、そして彼女達は自分の分身を生涯に3人産む。

つまり一人が不慮の事故か病気で死亡しない限り、必ず3人産むって事だ。

約5万年前、寿命が人と同じ1200年だから彼女達はとてつもない数に増えてしまった事になる。

だがそれだけでは終わらない、もっととんでもない悲惨な運命が彼女達を待ち受けていた……


さて、このサイコパス野郎、自分の分身を産ませる為に彼女達にとんでもない人体実験を行ったのだが、その中には当然自らの快楽の為の改造も行った、当然だよな、自おのが分身を産ませるなら自分の遺伝子が必要だ、勿論性行為もその中には含まれるだろう。


所謂いわゆる局部の絞まりが人の倍近く、とか、口にも出せないピーな、ありとあらゆる、考えうる色んな性癖に対して、最高の満足を得られる様な改造を施した。

増え過ぎる彼女達は、当然権力者達の玩具に成り果てる。

当然妊娠もする、そしてその他に必ず3人産む訳だ……

そして自らの分身しか産めない体、産まれて来るのは他人の遺伝子を得ようと得まいと女そっくりの子供だ……

当然化け物認定だよな……


そう、彼女達はその後化け物として多くの人々から忌むべき存在と成り果てていく……

俺みたいに遺伝子操作と言うのが解っていれば、まだ多少は違っていたのかもしれないが、そんな物知らない、と言うか遺伝子って何?ってレベルの世界だ……

その後の彼女達の扱いは、今現在解る通り、非人、つまり人にあらず、魔物と同じ扱いだ。

だが魔物と違うのは、彼女達は人を襲わないと言う事、簡単に言うと誰かの所有物、つまり奴隷以下の物と言う事か……


今の彼女達の扱いは汚物、そう言う扱いだ。

そして他国との戦争があると肉壁として駆り出される。

彼女達は人を傷つけない、だから刃を削ったナマクラ剣を使う、其を知っていながらこの世界の人間は彼女達を前線に出す。

当然だよな、肉壁なんだから……

この肉壁、一応増えすぎる彼女達の間引き!と言う理論の元行われているらしいが……

もう何が正しいのやら……



俺はこの話しをハサン先生から聞いた時には泣いていた、彼女達に同情したからでは無い、悔しくて堪らなかったからだ。

何に?

そんなもん、彼女達を作った存在をぶち殺せないからだ……


俺には一つ、この世界で目標が出来た。

俺はあの子を連れて行く、彼女達全員を救う事なんて、出来ない事位はハナから解っている。

だけど今俺があの子を見捨てたら俺は俺で居られなくなると思う。

こんな物は俺の自己満以外の何物でもない、天空人と言う彼女達への負い目を、彼女を救う事で逃れようとしているだけ……

それを解った上で、敢えて彼女を救う。

あの子とあの子の家族を救う。

俺はこの世界に来ても日本人だ、いや、大和民族なんだから……

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