第9話 遺伝子

『妻が8人?あの外道ジジイが、つまりあれか?あの外道ジジイは毎日違う女と……』


俺は込み上げる怒りと戸惑いを何とか押さえつけ、大きく深呼吸を5回程繰り返し平常心を取り戻した。

いや、俺が怒るべき要素は微塵もないのだが、あのウスラ親父が女を取っ替え引っ替えやっている処がつい頭をよぎってしまい、俺の中で嫉妬の修羅が目覚めてしまうのだ。




「よし……」離れの部屋の前で修羅を消し去る俺

コンコン

「ハサン先生、入りますよ」



「健君か?入りなさい」




「失礼します、んで容態は?命に別状は無いとセルマさんには聞いて来たんですが」




「大丈夫だ、先ずそこに掛けなさい、峠は越した。

ただ出血の大さと傷口があまりにも大き過ぎてね、そこで薬を調合した。この薬は回復魔法と同じ効果があってね、こんな事言うと君はまた怒るかもしれないが、いつまでもこの子をここに置いている訳には行かないんだ。

だから君にこの薬を渡しておく」




「何故ですか?理由を……」





「そうだな、順を追って話そう、まず健君は天空人、それは間違いないな?」




「セルマさんに天空人の事を色々聞きました、この世界の呼び方に習うならば……俺はその天空人で間違いありません」




「では次の質問だ、天空人は男女がほぼ同人数いる、それでいいか?」




正直それとこの子をここに置いて置けない事がどう繋がるのか……戸惑いながらも俺は素直に質問に答えた

「死亡率や寿命の関係で若干女の方が多いみたいですけど、ほぼその認識で問題ありません」




「やはりそうなのか……驚くべき事だ‼」





「この世界は違うんですか?」





「当然だ!天空人はなんと言う体組織をしているんだ‼いや、それもマナが関係しているのかもしれん」




「どういう事なんですか?俺にも解る様に教えてください」





「あぁすまない、ではまず、天空人と私達では体構造は殆ど同じで変わりない、この認識をまず持って貰おう」




「いや、それは無いでしょう‼そもそも寿命からして違う訳だし……」

多分そうなんだろう……解ってはいたが何とか否定したいおれがここにいる。

椅子から立ちあがり大声で俺は答えてしまっていた




「まぁ落ち着きたまえ、これは天空人自信が過去に導きだした結論だ、間違いない」



取り合えず俺は落着きを取り戻し、椅子に座り直した。

だが、この世界の医療機器でそこまで解るのか?いや、パンストがある位だ、今見ている物だけで判断するのは危険だ




「まず、健君は人間は男女問わず、全て体構造が女性主体である事は知っているかな?」





「はい、そう言えば……俺は医者ではありませんが、基本的に男は女性が作られる上で、突然変異的に作られるとちょっとした文献で見た事が『グーグル先生って言っても解らないよな』……」




「天空人はその突然変異がそんな確率で起こるのかね?」




『あっ!……今まで考えた事もなかった、そうだ、おかしい』


そう、おかしいのだ、子供は胎児の段階で女性がベースとして作られる、だが雄の個体は狙った様にホルモンを分泌して強引に男の体に作り変えて行く、それはまるで意識がありそうする事を予め予定していたかの様に、俺はハサン先生に言われて初めてこの段階で疑問を持つ事になる。




「そうなるとこう考えた方がしっくり来ないかね?意図的にその突然変異が起こる確率を上げてある、とね、、、

私は天空人の医学力ならそれすらも可能だと思っているんだがどうかな?

正直私も半信半疑だったが、、君と話していると本当に男女が同じ確率で生まれて来ると思えるよ、天空人とは本当に凄いんだな」




もう俺の警鐘は最高段階にまでハネ上がっていた

「実際この世界での男女の出生比率はどのくらいなんですか?」




「男は女100人に対し1人だ‼」




『何て素晴らしい世界なんだ‼……過去の糞アヌンナキども、余計な事しやがって……』




「一つ私から質問しても良いかね?」




だがハサン先生の質問内容は既に俺には解っていた

「俺は医学に関しては詳しくありませんが、俺の答えられる範囲でなら」




「では、君が今さっき自分で言った男女の出生比率と言う話し、この世界にはそんな言葉など浮かべる人はいないんだよ。男が産まれるのは神のお導き、つまり男は神童、と言う事だ‼

要約すると私の質問はその出生比率を天空人達はどにの様にして変えたのか?」




当然そう来るだろう、だが、これは未来から来た俺には完全なNGワードだ。

「そんな事をした、と言う記録事態何処にもありませんが、可能な技術に思い当たる節が一つ……」




「「あるんだね?」」




「はい、あります……ですがこれはお教えする事は出来ません、解らないと言う事ではなく、人道に反する行いだからです」




「そうか……天罰をくらってもおかしく無い行いなんだね?」




「はい、天罰すら生ぬるい位かと……」




「だがもし、過去の天空人がそれをこの世界で行っていたとしたら……君はどう思うのかね?」




脳天を痛打された様な衝撃が俺に走る……

「今何て言いました?」




「そこに寝ている少女、その子がそのおこないによって生み出された物だと言った」



ちょっと待てよ……一体何なんだよ、、、、、

俺をこの世界に連れて来て何を……一体何をさせたいんだよ‼

糞が、聞いてんのかよ!神様って奴なんだろ?俺をここに連れて来たのはよー‼

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