第6話 天空人

「はぁー…………やっぱどお見てもここって地球だよな……」


今俺はセルマさんから衝撃の事実を聞いて、頭を冷す為に、中庭に出て夜空を見上げている。

正直セルマさんの話はブッ飛び過ぎていて俺は頭の中が整理しきれない。

いや、そりゃこの世界の人からすれば普通の歴史かもしれないが、少なくとも未来らしき処から来た俺には……違うな、間違いなく俺はタイムスリップして来たんだ。

夜空がそう教えてくれている……

有るんだよな、あるべきものがちゃんと……そう、月が一つに星座が……


俺は天体観測が趣味で、代表的な星座は大体頭に入っている。


最近では蛇使い座を入れて13星座なんて占いが流行ってるようだが、基本この時代より後のシュメール文明とかは元々13星座だったんだよな‼

もしかしてこの時代も……

後で聞いてみるのも良いかも……なんて考えられるって事はまだ余裕有るのかもな?


星座は地球の緯度経度により見え方は異なる物の、逆にそれで大体の地球上での自分の位置を割り出す事が可能となる。

太陽の沈む方向と見える星座、そして気温を考えればここは北半球、季節は春から夏にかけて、恐らくアジア大陸の何処かか、もしかして日本と言う事もあり得るだろう。



ーーーーーーーーーーーー



話は少し遡る


俺はセルマさんにこの地の事を聞くため、私室へと呼ばれていた。



「この世界の大陸については解ったかな?」



「まぁ、、、解った様な解らない様な……」



「追々覚えて行けばいいさ、時間はたっぷりあるからね、多分来たばかりでわからないだろうけど、君が故郷に帰れるのは恐らく、300年はかかるだろうからね‼」




「ハァァァ?、、、何をご冗談を、普通に死んでますがな‼」



腕を組ながらセルマさんは感心する様に、更に笑みを浮かべながら

「やはり伝承は本当だったんだね~!天空人は寿命が100年足らずだって」



「笑いごとじゃねーすからお父さん‼」




コンコン‼ノックの音が聞こえる

「お父さん、大丈夫?ハサン先生がもう少し布地が欲しいって!」



「おぉレイラか、入りなさい」

扉が開き小学校高学年位の女の子が入って来た。



「紹介しよう、娘のレイラだ‼

そう言えば君の名前を聞いていなかったね、それに君、今私の事をお父さんと……

どうだね?レイラは、天空人の君になら喜んで嫁に出そうじゃないか、ハッハッハッハッ」



「天空人て……お父さん、此方こちらの方は天空人様なのですか?」




「おっと‼いかんいかん、つい」




「口軽いーなおっさん‼私は何も見てねーんじゃなかったのかよ?」




「この喋り方、、、やっぱり天空人様なんですね‼」




「そうだよレイラ、だけどこの事は誰にも話してはいけない、理由は解るね?」




「はい、でも天空人様にお会い出来るなんて、夢の様です」

なぜだかレイラと言う少女はうる目で感激したような眼差しで俺を見てくる。


俺は焦りすら感じてレイラに対し



「いやいやちと待てってば、喋り方で人種判断するなっつの」




「えっ?でも……」

何故そこで戸惑うのか本当に俺は理解不能だった、ここで助け船が入る。



「レイラ、この方はまだ此方こちらに来たばかりみたいなんだ、困らせてはいけないよ!取り敢えずこれをハサン先生の処に持っていってくれ」




「はい、天空人様、宜しければ後で天空の世界の事を教えてくださいね♪」

レイラははしゃぐ様子でそう答え部屋を出て言った。



「あっあぁ……」

虚しく俺の返事がこだまする



「さて、何処から話した物か……そうだね

まずレイラが君の話し方で天空人と解った理由だね」




「聞きたい事は沢山あるが、それっておかしいだろ、こっちの世界にだって口の悪い奴は居るだろ?」




「そうだね、だが先生もレイラも君の口の悪さで君を天空人と判断したのでは無いよ!まず名前を聞いても?」



「健たけるだ、松田 健、、んじゃさっき、その喋り方っ!てレイラは言ったよな?先生はテメーは……を指摘した、これってばやっぱ口のきき方を指摘してんじゃね?」




「ではまず、根本的な間違いを正そうか、健君は私達と健君が同じ言語を喋っている!と理解していないかな?」




「いや、だって言葉が通じているって事は……」




「口の動きをよく見てみなさい、本当に君と私は同じ言語で喋っているかい?

私の口の動きは君の聞こえている言葉と一致しているのかな?」



俺はセルマさんの口の動きと聞こえている言葉を復唱してみた。

「……違う……ハッキリと解る……でも何故‼」




「伝承にはこうある、天空人はその科学があまりにも発達しすぎて本来ある筈のマナを操る能力が衰退してしまった、そしてそのマナの枯渇により寿命さえも短くしてしまった。

だがこの世界の溢れるマナを体内に取り入れる事により、天空人は脳の種が羽化してアーカーシャの扉が開かれる、その時天空人は恐るべき力を持つ事になる。

脳が何だかも、種が何だかも、アーカーシャが何だかも解らないが、私に一つ解るのはマナとは根元、つまりこの世界の、この星の生命力の事だよ‼マナと人とは一体、マナが無ければ私達は意思の疏通すらも出来なければ、魔法も使えない、マナはこの星の至るところに存在し、人の意識力であらゆる物に変化するんだ、まぁその意識力の強さが魔力の強さ、、何だけどね、

だけどマナも万能では無いんだ、この世界で存在しない物は置き替える事が出来ないんだよ、つまり、テメーは!……と言う言葉はこの世界には存在しないんだ、だから置き換わらずにそのまま私たちの耳に入ってくる」




なるほど……これ以上無い、と言うくらい納得だ……


「まあ確かに、俺を天空人と判断するにはそれなりには十分だ、そして俺もマナの種が羽化しはじめているからこそセルマさんやレイラの言葉が理解出来る、と、、」




「そういう事だね」




「でも一つ解らないんだけどさ……」



「何かな?」



「セルマさんやハサン先生は何故テメーは……の一言で俺が天空人だと判断したんだ?

着てる服も材質の違いを指摘した、、けどろれつが回らない人もこの世界にはいるでしょ?

服だって他国の人間であれば変わった物を着ている奴だって居るかもしれない、ただそれだけで判断するのはちと早計じゃない?」





「ああ、そういう事か、実は私とハサン先生は天空人の研究者でも有るんだよ、天空人の壁画や言語録なんかもあってね、過去に訪れた天空人が発した言葉にその言葉があってね‼

他にもそうだねー、セッシャとかチョベリバとかティーケージー、ミックミク、後ア○ルバイブなんて物も有ったかな?、それから~、マヨネ……」




「…………もういいっす……頭が痛くなってきた……」

俺はセルマさんの言葉を途中で遮さえぎり、左手で両こめかみお押さえながら思わず唸ってしまっていた、それ以上聞くと先代の天空人を殴りたくなる。




「おぉぉ!やはり健君はこの言葉の意味を知っているんだね‼、、出来たら教えてくれないかな~」





「……いや、、知らない方がいいっす、特に一番最後の言葉はその物をレイラには黙っていた方がいい、、」



「そうかー、余程重要な意味が込められているんだね‼でも知りたいな~……」




『今日程日本人である事が嫌になった日はねぇよ、糞天空人どもが……』




「そうだ、健君‼、、君にもう一つ解りやすく教えておくよ、私達が君の事を天空人と言ってはいるけど、君にはどう翻訳されているかは私達には解らない、だが伝承にはこうある、多くの天空人にはこうやるとこの世界の事を理解したと……」



そしてセルマさんは木板に象形文字を書きはじめこう言った……

「私達は天空人をこう発音している」



その文字を読み取った俺は脳天を痛打された様な激しい脱力感を伴い目眩がした


「うっ、嘘、、だろ……」

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