第3話 兄貴と長い友達

ジャングルの中の獣道、少し開けた場所に今俺はいる。

だがここで闘うのは良くない。

奴は身体がでかい分木々が生い茂った中では動き辛い筈だ、俺が逃げられてた理由も身体能力が上がっただけではなくそんな理由も恐らく在るのだろう。

ここには武器を取りに来た、俺が此方に転位して直ぐの時に戦場だった場所だ、今は場所が移動している為死体と武器があちらこちらに散乱している。

正直気持ち悪い、少しでも気を抜くと込み上げてくる。

だが、何故か死体はあいつと同じ幼い女の子ばかり

『どうなってんだ、狂ってやがるぜこの世界は』

だが今俺達が助かる方法は……一つしか無い‼





「なぁ先輩よー……食うの俺達じゃなくてさーここいらの死体じゃダメ~?」




此方こちらをガン見している、やはり新鮮な方が好みらしい……


「テメーは贅沢なんだよ‼」



言葉が解るのか?怒っていらっしゃる……

俺は適当な武器を幾つか拾い、草木の中に駆け出した。

女の子は少し離れた場所に見えない様に隠して来た……があまり時間はかけられない、あの子の出血量から考えると意識があるだけでも奇跡だ。


「さて、俺のチート能力ってやつに期待してるぜ‼」



剣を振りかぶり、思い切り魔物の足を切りつけ……

(ゴキャ‼)


「イッテェェェ!」

自分の腕の方が痛かった

「チートはどうしたァァァァ‼ しかもこの剣、刃がねぇ、ナマクラじゃねぇか!」


魔物がめちゃくちゃお怒りモードだ!

少し痛かったらしい……


「兄貴~冗談すよ~何ムキになってるんす、かー、、、ウォォォォォやべー!」


兄貴はめちゃくちゃ怒って突進してきてしまっ……



「って……おい!そっちに行くな‼俺はこっちだ‼」


魔物は女の子のいる方へ駆け出して行く


「まさか、血の匂いか‼」

其なりに頭も良いらしい、新鮮な血の匂いの区別がつくと言う事か、、

やはり俺の知っている恐竜とは少し違うみたいだ、、


女の子から遠ざけなければならない、だがどうやって、、、兄貴はすぐに女の子の位置を嗅ぎわけた。

隠し場所が見つかった‼


「テメーはそっちに行くんじゃねぇぇぇ!」

ナマクラを思い切り奴の足に叩き込んだ、勿論切れはしない、だが此方に注意を惹き付ける事には……

だが奴はそれでも女の子の方に顔を向け……


「テメー、わざとやってんのか……俺の言葉を理解してるってのか?……ざけんじゃねぇぞ‼その子は俺が死なせねぇ」

俺は完全に頭に血が登り…………

とにかくあの子を助けたかった。



刹那、目の前に何か文字の羅列が浮かんできた、

象形文字の様な、いや、此は間違いなく象形文字だ、だが俺はそんな文字読めない……はずが、、

読めた、理由は解らないが読めた、俺は訳も解らずその言葉を口に出した。



「バジュラ、マハ、メルト‼」


一瞬で轟火の炎が舞い上がる

それはまるで炎の柱  「これってもしかして魔法?俺魔法使える様になったの?」

怒涛の様な轟火の柱が兄貴を取り巻く、俺は我ながら足が震えた、勢いのある火災現場では時に震えが来るが、丁度あんな感じだ。

完全に焼き兄貴、いや、焼き鳥?が出来上がった



「フォルム……まさ、か、、あな、た、は、、」


「えっ?おい、お前大丈夫か?しっかりしろ!」


彼女はそのまま意識を手放してしまった。


「医者!医者はどっかねぇのか?このままじゃまずい、応急処置だけでも直ぐにしないと」


俺は着ている服を破き彼女の傷口を縛り、水場を探した、確か女の子を抱き上げ逃げている時に遠くに川が見えた。

そう、崖下に小川が有った筈だ。

俺は小川の方へ駆け出して行った。



女の子を川原へ卸す


「待ってろ、今傷口を……」


川の水で傷口付近をまず洗って少しでも清潔に……


『え?ちょ‼』


その川に写った俺の顔は俺ではなかった、

いや、俺なんだが俺ではない……そこに写った俺の顔は15.6歳の頃の俺の顔だった。



「何だかよくわかんねぇが……戻って来てくれたのか、我が友よ‼」



感無量だ、俺の友、髪の毛が……そう、髪は長い友達…………

しかも栄養失調の人の様に腫れ上がった俺の腹はスリムに……



「んな事は後だ後!」


今はこの子だ、呼吸も荒く熱も凄い、救命救急の知識は無いが素人目に見てもヤバい状態なのは解る……


「何とかしなきゃ」


辺りは暗くなって来ている、また魔物が徘徊してきてもおかしくない。

そんな時、遠くに家の灯りが目に入る

俺は何故か目だけは良い、天体観測が趣味で夜空ばかり見上げてたせいだろうか



「あそこだ!」

全速力で彼女を抱き上げ灯りの方まで走る、そしてまた象形文字がその家の看板に書いてあった。


【セルマの宿】

宿屋、、、なぜ読める?……

チートだな、、うん、、今はそれでよし!って良く考えたら俺普通にこの子と会話してた様な…チートだな…


その宿はどういう訳か和風建築で、入り口扉は神社の鳥居みたいな感じで周りが赤く塗られていた。扉を開け

「すみませーん、此処にお医者さん居ませんかー?それか近くにお医者さんは」


出て来たのは宿屋の主人らしいおっさんだった



「どうかしましたか?此処は宿ですが、丁度戦がある件でお医者さんのお客様がいらっしゃいますよ?」



「マジですか!そりゃ助かった、丁度大怪我しているやつが居るんですよ!」



「それは大変だ直ぐにお声をかけてきますね!」



「助かります」


俺は玄関の様な場所にある長椅子に女の子を寝かせ、医者が診察しやすい様に出来の悪い鎧よろいの様な物を脱がせる、その際どさくさに紛れて胸を数回揉んだのは言うまでもない。

年の割りにはかなりデカい……



そうこうしている間に宿主が医者を連れて来た

だが……来た医者は……


「悪いがその子は診れないな……」



「なっ‼何で?」



「見れば解るだろ!私は人間の医者だ!家畜は見れん‼」



「はぁぁぁ?何言ってんだこの野郎、ふざけんなよジジイ‼どっからどう見たって人間じゃねぇか‼

この子の何処が家畜なんだよ、目ぇ腐ってんのかテメーは‼」



「ジジイ…………君はこの子が人間に見えるのか?……いや、君はまさか天空人か?着ている服も少しおかしい様だ……」



「へっ?てんくうじんて……俺の事?」

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