咲くんだもん

結城慎二

第1話

 はるです。

 とってもあたたかくて、とってもちのいいはるでした。

 てっぺいおじいさんはおじいさんのうちのおにわで、とってもきれいにいているいっぽんさくらうれしそうにながめていました。

 「今年ことしいてくれたね。ありがとう」

 てっぺいおじいさんはさくらをなでながら、さくらはなしかけます。

 まるでおともだちのようにはなしかけるのです。

 「おじいちゃん!」

 てっぺいおじいさんがうしろをくと、そこには今年ことしがつしょうがくせいになるゆうくんがおとうさんとおかあさんといっしょっていました。

 「よくたねぇ」

 てっぺいおじいさんはゆうくんのところにやってます。

 ゆうくんはじぃーっとてっぺいおじいさんをています。

 「どうしたんだい?」

 てっぺいおじいさんがたずねると、ゆうくんはそうにてっぺいおじいさんにこうきました。

 「おじいちゃん、さくらとおはなししてたの?」

 てっぺいおじいさんはこうこたえました。

 「そうだよ。それがどうかしたのかい?」

 「さくらはおはなしししてくれる?」

 「してくれるよ。だっておじいちゃんとこのさくらは、おともだちなんだから」

 「おともだち?」

 ゆうくんはくびをかしげてしまいました。

 てっぺいおじいさんはおおきなこえしてわらいます。

 「あはははは、ところで今日きょうはおじいちゃんまってくのかい?」

 そのしつもんには、ゆうくんのおとうさんがこたえてくれました。

 「はい、今日きょうまってきます」

 ゆうくんもおとうさんのあとについてこういました。

 「うん、まってく」

 ゆうくんがそうったら、おかあさんがおこってこういました。

 「『うん』じゃなくて、『はい』でしょ」

 「はい」

 ゆうくんはなおあやまります。

 「あはは、そうか。じゃあ今日きょうよるゆうまえにおじいちゃんとこのさくらはなしをしてあげよう」

 「やったぁ!」

 ゆうくんはおおよろこびでてっぺいおじいさんのまわりを、んだりねたりしました。

 てっぺいおじいさんもうれしそうにわらいながら、ゆうくんのまわるのをながめていました。


 よるになりました。

 ゆうくんはワクワクドキドキしながら、てっぺいおじいさんのとんとなりかれたとんなかで、てっぺいおじいさんがるのをっていました。

 やがて、てっぺいおじいさんがふすまけておに入ってきました。

 「さぁ、はじめようか」

 てっぺいおじいさんはいました。

 「うん!」

 ゆうくんはそうったあと、「あっ」といてしばらくうつむいてしまいました。

 でも、やがて、

 「はい」

 ゆうくんはなおしたのです。

 「ははは、よし。あれは、おじいちゃんがまだ、ゆうちゃんくらいのときだった。そのころかいじゅうせんそうしててね、おおきなまちあぶないからって、おじいちゃんのおじいちゃんのいえあずけられていたんだ」

 と、てっぺいおじいさんははなはじめました。

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