第3話絶望の過去と、可能性を掴んだこれからの夢
強くなるのに近道なんて無い。
前の人生でもそうだった。才能が無い俺はひたすら反復して、覚えたら新たな動きを練習しながら、コレまでの反復を繰り返した。努力は実らなかった。
部活の剣道には文字通り全力を注いだ、素振りを繰り返し、すり足の練習、間合い取りの練習をする。
連撃のコンビネーションを観察しては盗み、鏡を見ながら真似る。
打ち込みを繰り返し、打ち込みを頼んで防御の練習を繰り返す。
筋トレを限界まで行い、超回復を待つ間にイメージトレーニングを行う。
戦いの駆け引きは、開始の合図以前に始まっているのだ。
視線の置き方、足の置き場所、呼吸の読み合い。
剣術道場まで探し出して教えを請い、戦いの基礎を学んだ。
そこまでしても、結局は敗北の山、山、山、山!山!!山だった!!!!
スペックにおいて、完全に劣る俺が出来た事といえば、ほんの一瞬、たった一太刀に全てを込めてヒヤっとさせる程度の事。
「身の程を知れよ!お前なんかが努力した所でその程度なんだよ!」
「才能無い奴が努力して強くなった気になってんじゃねぇぞ!ウラ!これが現実だ!」
努力すれば願いは叶うなんて嘘だ、可能性は有るなんて言えるのは、ほんの僅かでも才能を持った人間だけだ、願いを掴んだ時に零した....戯言だ!
待たざる者は、いつまで経っても、どれだけ努力しても!無理無茶無謀無価値なのだ。
分からないだろう?分かるわけないさ?分かろうと思うなよ!持っているお前にはいつまで経っても、どれだけ考えても分からないさ!分かるわけが無い!分からないんだよ!
有限な時間を湯水の如く使い込み、心が磨り減るほど努力を積み上げて、僅かな可能性という幻影に縋って、足掻いて、もがいて、全て差し出した先にあったのは....敗北という名の絶望だった。
スポーツも勉強も私生活も全部全部全部駄目だった。見る価値も無い。振り返っても何も残ってない。思い出って何?楽しいって何が?どこにそんな時代があったんだよって話だ。
全部諦めたらスッキリした。俺は道化...そう持ってる奴らが描く夢の前に、細々と笑いを取るだけの脇役なんだ。メインなんか張れるはずも無い。
やっと分かったのか?やっと分かったのさ!やっと分かったよ!やっと分かって何が悪いって言うんだよ!...疲れたんだ。
適当に生きてればいいか、毎日好きなようにやって、それなりの結果に満足して、同じような境遇の仲間で集まってさ。
アレが良かっただの、次はこっちがいいんじゃ?だの、アイツ凄いよな、あの子可愛いくね?俺達にもあんな彼女が居たら、あんな才能があったらなんて愚痴りながら、時間を浪費していくのが似合ってる。そうやって諦めるしか無かった。
だけど、これからは違うのかもしれない。
きっと、きっと違う。変えてみせるさ!
新しい人生は、きっと掴んでみせる。夢、希望、愛、欲望....全部握り締めて笑ってやる。
持たざる者も、持っている者も、全部全部踏み台にして俺が笑う....その光景が見える。
知ってるか?優しさとか愛情とかさ、美談がゴロゴロしてる世の中だけど、本当にそれを持てる様な人間は極々僅かでさ。
経済的な余裕とか、心の余裕を作れるだけの環境があってこそ、成立するんだぜ?
聖人君子なんて居ない!ネジがぶっ飛んで感情の箍でも外れなきゃさ!我が身可愛さに人間は楽を!欲を選ぶんだ!
俺が犠牲になるから!お前は逃げろ!!な~んて甘っちょろい英雄はさ....居ないんだぜ?
時代が、世界が作り上げた幻想や空想が、語り手の、読み手の、聞き手の願望が降り積もってさ、積み重なってさ、誰か...誰か一人でいいから、嘘でもいいから叶えてくれないかな?ってさそうやって出来たのが物語なんだ。
明るい話ばかりが表に出るけどさ、暗い話も、残酷な話も世界には溢れてるんだぜ?
目を向けないからさ、掘り起こさないからさ、埋めてしまうからさ、目の前にないからさ、それは確かに存在するのに...無かった事にする、されるのさ
でもさ、そんな立場にあった者が、今度こそ掴めるなら、今度こそ願いに正直に生きる事が出来るようになるなら....希望も絶望もさ、好きな色に塗り替えてよ!過去も現在も未来も全部全部全部...自分の欲望のままに変えられるならよ!
新しい物語が生まれるかも知れない、いや生んで見せるね!
ありふれた、溢れている、見渡せばそこら中にある絶望や希望を思うがままに捻じ曲げて、新しい道を作れるんじゃないか?
ゲームみたいな現実が俺を待っている。
準備に使える時間は....∞....∞なんだ。
チートはなかったけど、努力さえすれば何とかなるはず。
理不尽を跳ねのけるだけの積み重ねをしてやる。
あそこでもっとやっておけば、あと少しだけ頑張っておけばなんて言わなくて済むようにしてやる。
努力する事だけなら誰にも負けない。
努力する事が出来るのが才能だという言葉があるが、そんなのは出来て当たり前なのだ。
才能だなんて言わせない、積み重ねを必死に続ける事は、多大なエネルギーを使う行為だ。
文字通り、魂を削るような気持ちで努力しよう。
思った事を全部実現できるだけの備えをしよう。
今度は間違えない、羨ましいとか、俺にもあんな力があれば...何て言わないで済む様に、徹底的に準備して、蹂躙して、暴虐して、圧倒して、制覇して、征服してやる。
質でも量でも及ばない、戦術も戦略も、スキルも魔法も邪魔できない積み重ねをして、どんな困難も、強大な敵も退けて、運命だろうとなんだろうと、俺が全てを無理やり抉じ開ける....捻じ伏せる。
山のように積み上げて、海のように広げて、空のように果てしなく、有象無象には理解出来ないスケールで!俺の為に、俺が行う、俺の為の異世界生活が始まる。
いかん、感情の暗黒面に落ちてしまっていた。
俺の人生はここから始まるのだ。過去は過去だ!
まずは手始めに....林檎を食べたいな!!!
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