Episode.1 可愛くない女
別れの理由なんて、ありきたりでつまらないものだ。
私の場合、好きな人が浮気をしていた、それだけだ。
まぁ、1度どころではなく、気付いた時には私を含め3人の彼女がいた訳だけれど…
「男なんて、そんなものなのかなー…」
カラン、とグラスの中の氷が肯定してくれたような気がして、少し嬉しくなった。
ちょっと、飲みすぎてるな。
気付いたら、私が飲んだチューハイの空缶が10本を超えているや。
「もう、恋愛なんてしたくないなー。でもしちゃうんだろうなー」
これで通算2回目の失恋。
しかも、2回とも彼氏の浮気が原因。
1回目は付き合って2ヶ月くらい経ったころに当時の彼氏から『好きな人が出来ました』って新しい彼女とのツーショット写真付きのメールが送られてきた。
問い詰めようとしたら電話もメールも通じなくて、友人づてに連絡取ろうと思ったら私とつながりのある友人の多くと縁を切っていたので連絡がとれなかった。
2回目、つまり今回だけど付き合って約半年での失恋だ。
浮気に気付いたのはSNSで同じハンドルネームで新しいアカウントを作ったと思ったら堂々と別の女の子とデートの写真を投稿していたからだ。
本人かわからなかったので他の友人にも確認を取ったら
「え?あいつ、あんたと別れたって聞いたけど?」
とか
「あいつの彼女? 職場の後輩って聞いたぜ?」
とか
「マサキ君? 私の彼氏だけど?」
とか、他の女の子と付き合っていることが判明し、問い詰めたのだ。
そしたら、
「あんまり好きじゃなくなっちゃったんだよね。嫌いなところ出来ちゃってさ」
って言うもんだから、別れることを決めた。
ちなみ先まで復縁を求めるメールが何度か来ていたのが妙に笑えるが、SNSへの書き込みによると今彼女とデートの最中(写真付き)らしいので「彼女の横にいる人と復縁するつもりはない」と送った後に着信拒否した。
で、今日、別れてそのままコンビニにダッシュ。
お酒を大量に買い込んでやけ酒と洒落こんでいるわけだ。
ただし、元々酒に強い方だった所為でチューハイを10缶空けてようやく酔いを自覚しているあたり、女の子として可愛げがないかもしれないとちょっぴり傷心。
そもそも、自分はそろそろ女の『子』という歳でもないか、とさらに傷心。
社会人になって酒の席で揉まれた経験は伊達じゃないと無い胸を後輩に張っていたらいつの間にか社内での恋愛は出来そうになくなっていたし。
酒の強い女はそんなに可愛くないか
「あー、やだやだ。飲んで忘れよ」
ただし、一度空き缶を片付けて、グラスの氷を足してから。
「んー…今日、ちょっと寒いな…」
台所に行くと、夜の冷気が薄着気味の身体に刺さった。
それもそうか
季節は秋。もうすぐ冬が来る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます